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【消えた旦那様と侍女見習い】

 これらは全て自称、捜査官コロンビア様の夢女で妻である私、メルリンダ・グレイスが見た隣人の姿と「トイレにはそれはそれは美しい神様が居て」という言葉が嘘であった事実でございます。


 隣の屋敷から行儀見習いを兼ねて侍女として雇われた令嬢と当家の旦那様が消えた件をお話する前に、1つだけ記憶して欲しいのでございます。


「トイレには、それはそれは美しい神様が居る」という話をお耳に入れた事はおありでしょうが、そんなことは一切ございません。

 それがこの事案に対するネタバレであり、出落ちでございます。



 私、メルリンダ・グレイスが勤めるグレート・バリー・ヤリーフ邸は、迷子になるほど立派なトイレが設置されております。


 ええ、もっとも肥沃な土地でもあるヤリーフ邸前の閑散とした寂しげな小路が拡張に拡張を積み重ね。

 娯楽と殿堂のお店が建ち並び魅力的な女性を大量に雇い入れた街と小さな港を繋げた為でしょうか、徒歩で渡ることが困難な大通りとなりました。


 ついでに収入になり得る土地も失いましてございます。


 今のヤリーフ奥様の大激怒案件でしかございません。


 広がった広大な通路分の土地を無償で提供させられ、道路を挟んで建っているご実家へ行くことも困難となった上に、奥様のデビュタント前日に完成した新築の屋敷は、土地の提供をもって取り壊し。

 港と妖しげな繁華街へと向かう紳士にトイレと休憩場所を無償で提供せよとのご命令を受けたのでございます。


 デビュタントをもって、成人したばかりの美しい令嬢であられました奥様でございます。


 そのふざけた王命を後悔させてやんよと、ご立派な高級旅館風な公衆トイレを建設いたしましたのでございます。


 ヤリーフ邸と繋がっていそうな外観ながら、そのような通路は一切ない独立した作り。

 奥に行くほど立派な個室となるシステムでございまして、お気に入りの侍女を伴った紳士が大きな寝台と浴場と娯楽用品を求めて奥へ奥へと一本道に見えてささくれた分岐路を進んで行きますとね、帰り道は遭難いたします。


 結婚式前日に最後のよろしくない御遊戯を致します、新郎候補の紳士はですね。

 多数破滅した方が何故かいらっしゃるのでございます。

 個室に入って休憩致しますと、後日払いでお食事を提供致しますので、元気に妊婦様と共にご帰還致しますので何も問題ないかと。


 貴族嫡男が貴族令嬢を娶る事になりますので、なんの問題もないと私は思います。なにせ私は平民でございますので、貴族様の爵位の知識は全くございませんもの。


 侍女というのは、爵位をもつ令嬢しか成れぬ職種でございます。


 その侍女である貴族令嬢と、家同士の誓約を取り交わして婚約していた貴族令嬢がとりかわっただけでございますもの。


 なんの問題もございませんわね。



 輝く蜂蜜色の髪に、大きなたれ目がちな紫の瞳が印象的な、唇の右下端に色っぽいホクロがあるヤリーフ奥様に縁談が持ち上がりました。


 結婚式前日にとある大貴族の愛妾である侍女を妊娠させた上に、1ヶ月間帰宅しなかったちょっと豚を不細工にしたような貴族令息でございます。


 彼には双子の弟やその他の弟がおりましたので、結婚相手や婚約相手を繰り下げたり交換したりとした結果、一番下の弟の婚約候補であった奥様が結婚相手にと選ばれたのでございます。


 浮気する殿方を高笑いで呪いながら蝋人形に五寸釘を刺していた奥様が、その伝令書を読む私の声に凍りついた姿は実に印象的でございました。


 もっと奥様を苦しめて差し上げたいほど、愛らしいご様子でございました。


 私が砕けた旦那様蝋人形をアロマキャンドルに作り替える作業をしている最中に、奥様と旦那様の入籍を保留にした挙式パーティーが終わり。私が作りました恋が叶うアロマキャンドルが繁華街に別宅【も】構える事になる入り婿となった旦那様の生活費へと変貌している間に、隣の屋敷の令嬢が侍女見習い兼行儀見習いとしてやって参りました。


 奥様はめんどくさいから断りたいけど、また王命かよ。王家滅びろ! などと叫んでは藁人形に針を刺しておりましたが、全く旦那様の剣帯の刺繍が進みません。

 刺繍糸が抜けた刺繍針が、秒速で藁人形の中で行方不明になるのでございます。


 うちの奥様可愛らしいでしょう?


 私が、奥様が寝落ちしている間に刺繍をほどいている事に気づかずに刺繍を進めるのでございます。


 いじめではございません。これは愛のある可愛がりでございます。お間違え無きよう。


 刺繍疲れでお眠りになられました奥様が、目覚める前に藁人形から刺繍針を回収して、奥様をお守りする身代わり魔法を藁人形に掛けるなど、メイドの朝はそれなりに忙しいのでございます。


 まず、奥様が寝過ごすように睡眠魔法を掛け、身支度準備や奥様の予定の調整。旦那様と遭遇しないための暗躍指示。大旦那様からの奥様の寝顔肖像画の制作と提出。旦那様が破滅するための祈祷を依頼などなど。


 お前なにやっとんねん?

 奥様が健やかな人生を過ごされますように、暗躍したり、ドアや壁の隙間から奥様の着替えや、桃色ピンクな独り行為を熱く見守り致しますのが、メイドの本分でございます。


 私は変態でも有害でもございません。

 おはようからお休みまで奥様の隅から隅までお見守りする、単なる特徴のない黒ベタ目だけ白抜きモブの無表情メイドでございます。


 お前が真犯人じゃねーか!?

 いいえ違います。

 作者が外見思い付かねーから、行動範囲内で出現する死霊まんまな外見に目を付けたヤツでいーべ。どうせ恐いことにはなり得ないんだしさー。という理由で1分以内で決定してしまいました。


 昔話のアテレコしそうな女優さんをパクられたらどうしようか心配でしたが、もっとアウトになりましたね。

 まあ、できるだけ作画コストを抑える方向になりますし、黒ベタメイド画像作って、てけとーなコマにそのメイド画像をいーかげんに添付したら、コミック版の絵の大半が完成する仕様となっております。


 10ポイントも行かない作品がコミカライズするはずがないですか……そんな事もございませんよ。

 トイレという単語がタイトルに入っておりますので、0ポイント確定です!


 プロットもコンテも設定すらなく画像縮小とか、拡大とか、顔の半分欠けさせたアップとか指示なしできると、なんも考えずに言い切る作品のどこが作画コストが低いのかわからないと申されましても。このようなメタ発言を楽しんでいるのは、笑いながらスマフォポチポチしていらっしゃる何も考えていない作者のみでございます。


 さて、事件がおこる前から事件の真相が読者様には明らかになってるぽいのですが、怪事件が起りました。


 奥様の下着紛失の真犯人はメルリンダ・グレイスですか?


 まあ、そのような事もありましたね。


 因みにメルリンダ・グレイスが誰かと申しますと、私でございます。


 知ってたから犯人だと申したのですか?

 まあ、ちょっと致死量の食塩が入った紅茶でも召し上がりますか?

 食塩10キログラム入った樽に1杯の紅茶を混入したモノを飲ませようとするなですか?

 私が本気で貴方を殺すなら、隠し持っている細身の剣で出血がほとんどないような手段で脳ミソをかき混ぜましてよ。


 シャレにならないからやめろと?

 シャレではございませんわ。本音8割ですの。

 これは嘘です。もっと高い割合でございます。


 さて、隣の屋敷から行儀見習いとしてやって来た、侍女見習いは養殖ドジ娘でございました。


 よろけて旦那の股間に触れる。旦那様専用浴室に全裸で迷い込む。旦那様が平民の愛人と抱き合って寝ている間に無理やり挟まるなど。

 王子が王城から追放したのが納得の養殖ドジっ娘でございました。


 納得できるのですか?


 王子がなんで王子の寝台に入って来なかったのかとヒスって泣きわめいて、追放したのですよ。


 王子はまだ三歳ですから、周りの男達全員と違って仲間外れにされたのが寂しかったのだろうですか……正解ですわね。


 そんな感じで、旦那様が夜な夜なトイレで叫ぶようになりました。


 奥様は大変可愛らしい方ですので、たまに王子が奥様に求婚しに参ります。

 奥様は、断りたくても3歳児を泣かせたら可哀想という事で、旦那様と離婚したら考えますと背中に不穏なオーラを背負ってハッキリと恐い顔で断りましたが、王子には通じませんでした。


 そしてよく、そのままお昼寝して夕飯を食べた王子がお泊まりしていくのですが、夜に何度かおねしょ防止にトイレに参ります。


 王子付きの侍従も奥様と歳が変わらぬ堅物眼鏡な若い青少年でございますから、そのねぇ。

 ヤリーフ邸内トイレよりも公衆トイレの方へ行くのですよ。


 王子がお漏らしをしない程度に奥の方の個室へと行き、王子を付属の寝台で寝かせてから、愛し合っている個室を鍵穴から覗いたり、元気な下半身の処理したりと。


 王子は独り寝しても泣かない幼児ではありますが、耳が不自由な方ではないので、周りの声が聞こえます。そしてその疑問を、王子のお世話をしている様々な女性に聞くのですよ。


 まさか、情事の声だと答える訳には参りませんので、揃いも揃って「トイレにはそれはそれは美しい神様がいらっしゃいますので、その神様へお祈りしているのですよ」などと誤魔化したのでございます。


 その頃にはヤリーフ邸に王子がお泊まりする時の就寝時のお付きは乳母に戻りましたので、深夜のヤリーフ邸内のトイレを王子は使います。


 その王子のお泊まり日と、入籍日までに仕上げないとならない剣帯の刺繍が進まないので、お向かいの50キロメートル離れたお城に住む大旦那様と大奥様に奥様は刺繍の手助けをお願いし、泊まっていただいたのでございます。


 旦那様の浮気を掴んでいる大旦那様は、深夜のトイレへと向かう王子を追うように後ろを歩き、そして美しい女神に会って恋愛成就のお願いをしたい王子が、旦那様と隣人宅の令嬢である見習い侍女が入っているトイレの個室入口を大きく開けたのでした。


 そして、それが旦那様と見習い侍女をヤリーフ邸で見かける最後の瞬間となったのでございます。


 元旦那様ですか?


 今でも2キロメートル離れた屋敷の隣人として生活しておりますよ。


 実家爵位継承権を双子の弟に渡した上に、爵位継承権を持つヤリーフ奥様と離婚し、爵位継承権を持たない上に、誰の子かわからない子を孕んだ乙女であるはずの貴族令嬢と子作り行為を目撃されてしまったのですから。

 元旦那様は、その令嬢と入籍し、貴族籍をもたぬ準貴族のまま、子供の父親とならなければならなかったのです。


 その元旦那様ですが、王弟である大旦那様とそっくりなご子息ご息女を背負いながら、今日も王子の侍従とお見合いして意気投合している奥様と会ってプロポーズしようとヤリーフ邸に侵入して参りましたね。


 あと5分くらいで元旦那様はつまみ出されるはずですので、奥様を毒殺したい国王様から贈られた菓子でも食べながら見学でも致しませんか?


 殺意?


 いいえ殺意はありませんよ。

 国王様はヤリーフ奥様と大旦那様の、加齢で美貌が衰える前の美しいままの姿を、剥製にして生涯愛でたいだけでございます。


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