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現在進行 鳥の国 2  作者: 蓮尾純子
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バン・ツバメ・ツルシギ   2001年6月

鳥の国から   すずがも通信128号 2001年6月

   バン・ツバメ・ツルシギ

 

 丸浜川では、なんと8羽ものバンのヒナが育っています。管理人棟のわが家のまん前に巣があったのですが、4月14日に「ヒナがかえっていますよ」と言われるまで、全く気づきませんでした。バンは両親とも子育てをするので、ヒナを別々に連れ歩くこともあり、ぜんぶでヒナが何羽いるかわかったのは、ゴールデンウィークにかかってから。8羽ものヒナ連れのバンを見たのは初めてです。卵は7個以上生むことがあるのに、たいていは4,5羽しかヒナがいません。子育て中のバンは、ヒナに餌をやったり、他の鳥を警戒したり、おとなりさんと縄張り争いをしたり、見ていて気の毒になるほど忙しそうなのに、このつがいは放任主義で、ヒナがとんでもなく離れた場所にいても心配そうなそぶりも見せず、さっさと他のヒナを連れて泳いで行ってしまいます。

 ふ化後4週間、まっ黒な綿毛から茶色の若鳥の姿に変わってきたヒナは、8羽とも無事です。3月上~中旬と、通常より早い時期に産卵をはじめ、天敵の蛇が冬眠からさめる前にヒナをかえしたのが成功の鍵ではないかと思います。ヒナたちはあまり人をこわがらず、餌場にもよく上がっているので、道行く人のアイドルになっています。


 5月8日の午前中、観察舎の中でツバメの声がするのに気づきました。2階の男子トイレの前で、つがいのツバメが盛んにあたりを物色したり、鳴き交わしたりしています。どうやら玄関から入って、巣作りの場所を探している様子。大半がガラス窓の観察室の中で、すいすい飛び回ったり、手すりにとまったりするので、見ている側は気が気ではありません。窓に激突したらその場で死んでしまうでしょう。降り出した小雨を気にしながら窓をぜんぶ開けましたが、ツバメたちは落ちつきはらって窓をよけて飛び、人間をおそれる様子もありません。1羽は15分ほどで出て行き、もう1羽も30分ほどで出たようですが、その後も玄関から入ってきたりしていました。ツバメの家さがしもずいぶん変わったものだなあ、と感心しました。


 わが観察舎の数え方では「昔」にあたる1カ月前のこと、ついに、行徳の春告げ鳥こと「春の渡り時のツルシギ」が記録されました。昨秋1羽が何日か滞在して、大喜びしたのですが、とうとう春にも姿を見せてくれました。たった1羽、それも4月7日~9日の3日間でしたが、感動しました。シギが入れるように、大黒柱さんたちがこまかく水位調整をしている最中のこと。まさに「合格」のサインをもらった心地。

 鳥の国の生息地管理はまだまだ手探りの段階ですが、方向そのものは大きく誤ってはいないのだと思います。来年は夏羽のまっ黒なツルシギを見たいなあ。

 生きものたちからもらう「合格点」を糧に、さて、ゆっくりのんびりぼちぼち急ごうかな、という鳥の国でした。


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