3話
窓の外を見ると、ひらりひらりと桜の花びらが舞っている。
そんな風景を尻目に、今目の前にいる人物にため息をついた。
「もう一度言ってもらってもいいですか?」
由宇も呆れたようにマスターに確認を取っているのだが、2回聞いたところで何かが変わるわけでもない。
それは由宇もわかっているのだろうけど、心と頭は少し違うんだよな。
理解はしても納得はしてないってのがいい例だ。
そんなことを考えていると、マスターから返事が返ってきたので意識をそちらに向ける。
「今回の任務は、天界の王と魔界の王、そして人間界の王。3人の討伐よ」
「んで?その任務の裏は?」
はっきり言って、こんな任務があるはずない。
3つの世界に君臨する王達を殺すなんて、不可能だし不合理だ。
世界の秩序がなくなって、世界が混同したら、大パニックに陥る。
しかも、また新たな王を決めるために、様々な抗争が起こるだろうからな。
「流石、空ね。この任務は王と言っても、偽者の王を討伐することなのよ。今、それぞれの世界の王達は、何者かによって拉致監禁されてて、偽者が世界を統べてる状況なのよ。そんな状況が続けば、私達人間にとっても、天界、魔界の人々にとっても辛いことが起きるようになるわ・・・・・・」
マスターが最後の方になると、段々と元気がなくなってきたのは恐らく人種差別のことだろう。
約数年前までは人種差別があったからな。辛い思いをしたことがあったのだろう。
人種差別=いじめ
って印象を俺は受けた。俺はいじめだけは許せない。
上の立場から言うようだけど、弱い者を寄って集って暴力や暴言をあてつけるなんて言語道断だ。
まぁともかく偽者をぶっ倒せばいいだけの話だ。
「その任務、受けよう。皇帝、爆撃の魔神。全力を以て遂行いたします」
「同じく、聖帝、聖なる守護者。お受けいたします」
「ええ、よろしくお願いします。私の方でも出来る限り協力させてもらうわ」
それじゃ、まず初めに緊急招集掛けて、会議を開いてからだな。
「頼む。・・・・・由宇」
「ん?」
マスターに背を向けて扉に向かうのだが、一つ気がかりなことを由宇に告げておかなければならない。
「部屋に戻ったら話しがある」
「はい・・」
俺の真面目な雰囲気と声色が、由宇を少し怖がらせたみたいだ。
若干俯いて俺の後ろをついてきている。
「マスター。また何かあれば言ってくれ」
「ええ」
返事を聞いて、扉のノブに手を掛けて廊下に出た。
歩いてギルドの外まで出てみたものの、由宇は一向に俺の方を向こうとしない。
仕方ないので、振り返り、由宇の肩を抱いて強制的に部屋に転移した。
シュン
静まりかえった部屋に2つの影が再び現われた。
「由宇?なんでそんなに落ち込んでんだよ」
由宇の頭を撫でながら、ソファに座る。由宇は俺の隣に腰を掛けた。
「別に落ち込んでないよ。ただ、ね・・・・・・・」
なんだか歯切れの悪い。
俯いていて、由宇の髪がさらりと揺れて顔を隠しているので、表情を伺うことができない。
「ただ?・・・・・・・妊娠してるかもしれない、ってか?」
バっと俯かせていた顔を上げて、俺を見て目を見開いている由宇。
「・・・どう、して?」
「やっぱりか・・・・。最近、トイレに行く回数が増えたし、夜の相手もしてくれない。食欲もないってなると・・・・・それぐらいしか思いつかなかった」
「そっか・・・・・」
「改めて聞くけど、妊娠してるのか?」
「うん」
「ならよかった。産もう」
「うん・・・・って、ええ!?」
うん、体に悪いからそんなに驚かないでくれ。
「俺が反対するとでも?」
「・・・・・・少し思ってた。でも・・・よかったぁ」
と、俺に抱きついて泣きはじめてしまった。
まぁ、うれし涙だろう。さて、俺達が結婚するってことを、子供が産まれるってことをみんなに言わないといけないな。
由宇の頭を慈しむように優しく優しくなで続けた。
空くんやっちゃいましたね〜。
妊娠とか私からしても他人事ではないので、書きたくなって書きました。
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