起動
プログラマーには怠慢という美徳があり、それを良しとする文化がある。
それは労力を減らすために手間を惜しまない気質である。
そのままの存在が主人公「アキヒコ」である。
アキヒコは仕事ではプログラマーをしており、プログラミングがそれなりにできるが、パッとしないものだった。
「仕事、だるいな。。」
仕事では連日残業となっており、昨日も夜遅く帰宅した。
一人暮らしのアパートで準備をすませて仕事に出ようとしていた。
彼は25歳の男である。お願いされると断れない性格なため、その分仕事を詰め込まれてしまっていた。
「異世界で楽に暮らしたい」
そういいながら玄関を開いた。
「わっ」
普段どおりならマンションの廊下に出ているであろうところだったが、そこには床がなかった。
が、落ちているというのではない。そこは上も下もなかった。
真っ黒な空間だ。
「えっ、、なんだ、、?冷静になれ。。夢。。?」
「起動」
無機質な声が響く。機械音声のようで人が話しているとは思えなかった。そしていきなり視界が真っ白になった。
「うん??」アキヒコは混乱した。
真っ白になったのではなく、急に明るくなったので、目がくらんだようだ。
そこは森の中だった。
来た道を!ということで振り返るがそこには扉はなかった。
森の中に一人という状況だった。
「嘘だろ。。」
とりあえずポケットからスマホを取り出し、地図アプリを確認する。。が電波がない。海外がどこかだろうか?それとも異世界。。?
アキヒコはじっとしていても仕方がないのでとりあえず歩くことにした。
連日残業して疲れているはずなのになんだか今日はすごく体が軽い気がした。
ガンガン行ける!!と思って歩いていく。
すると、水の塊のようなものが動いているのを発見した。
「す、スライム。。?」
スライムはこちらを気にせず草を食べているようだ。
スライム▼
と文字が浮かんでいたので、"▼"のところ指で触れると。。
- - -
スライム
レベル 3
HP 9
物理戦闘力 3
特殊能力 分裂
- - -
と出てきた。
スライムはこちらを気にせず草を食べているようだ。
とりあえずその場を離れ、状況を整理することにした。
あんな生き物はゲームでしか見たことがない。間違いなく異世界だろう。
そしてスライムという名前や能力が見えた。
異世界といえばチート能力である。アキヒコは自分の能力が気になって仕方がなかった。
「もう少し歩いてみるか」
歩いていると川に到達した。
川を覗き込む。
アキヒコ▼
「これだ!」
▼を押す。
- - -
アキヒコ
レベル 1
HP 15
MP 20
物理戦闘力 3
魔法戦闘力 10
特殊能力 観察眼
技: ファイアボール、ウォーター
- - -
「う、うーん。。」
アキヒコは落胆した。ファイアボールとウォーターが使えるらしいが、ゲームの感じから言って、あんまりこの2つは強そうに見えない。観察眼はこのステータスを見ることができる能力だろうか?便利だ。
だがもしかしたら、ファイアボールでも大爆発レベルの凄いのが使えるのかもしれない。
「使ってみるか。。」
てきとうにファイアボールと言ってみた。
「ファイアボール!」
小さな炎の玉が飛んでいったが、あまり強そうに見えない。。。
「グルルル・・・」
「おいおいマジかよ。。」
しげみから紫の模様が入った狼っぽい魔物が出てきた。すぐに狼のステータスを確認する。
- - -
パープルウルフ
レベル 5
HP 15 / 20
物理戦闘力 7
- - -
ファイヤボールがあたった分HPが減っているようだ。
あと3回、当てれば倒せそうだ。
こういうときゲームならどうするかというと逃げながら攻撃する"ヒットアンドアウェイ"だろう。
背を向けて逃げながら唱えまくった「ファイアボール!」「ファイアボール!」「ファイアボール!」「ファイアボール!」「ファイアボール!」
全くかっこよくない戦法だったが、急に力がみなぎってくる感覚があった。
もしかすると倒したのかもしれない。
もう一度、川に戻りたくないので、「ステータス!」と唱えてみた。
- - -
アキヒコ
レベル 3
HP 20
MP 25
物理戦闘力 4
魔法戦闘力 15
特殊能力 観察眼
技: ファイアボール、ウォーター、パラライズ、ループ
- - -
「よし!表示された!」
そして内容でも喜んだ。
さらに"パラライズ"と"ループ"という技が増えていたのだ。
パラライズ、英語で麻痺させるなので、麻痺させる技か。これはもしかすると強いかもしれない。
ループ。。?繰り返し。。?
ガサガサ・・・
茂みの中で先程見たあのスライムが動いているのが見えた。