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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺らがモテて何が悪い

作者: 赤城美津子

モテない男たちの挽歌です。ま、笑って許してください。

俺らがモテて何が悪い


「俺ら、もてないなあ」

「そうだよな。なんでイケメンじゃないとモテないんだ?」

 男たちが集まって愚痴っている。

「そうだよ、俺ら、かなり頭いいんだぜ」

「そうそう、いい大学出て、ポスドクやってるんだ」

「収入は低いけどな」

 ため息。

「でも、俺ら、知能指数、高いだろう」

「背は低い」

「体格はしょぼい。太っているか、ガリガリか」

「マッチョでもないし、細マッチョでもない」

「血圧高いけどな」

 ため息。

「女たちは普通の就職して、定収入があって、家事育児をしてくれる軟弱男が好きなんだよ」

「家事育児なんて女の仕事じゃないか」

「俺、帰ってきたら、奥さんが三つ指ついて出迎えてくれて、食事ができてて、風呂が沸いてるって生活したいな」

「俺だって、料理がうまくて、掃除洗濯ができてて、文句言わずに俺の言うこと聞いてくれるって女がいい」

「それで美人だったらこの上ないな」

「俺たち、ブ男だぞ」

「でも頭がいい」

「俺たちが絶対にもてる方法があるぞ」

「なんだ、それ」

「ほかの男がみんないなくなるんだ」

「俺たち以外か」

「そう、男性だけに感染する致死性の病原体を作るんだ」

「俺たちも死ぬぜ」

「俺たちはコールドスリープしておく。そしてその病原体は数年で消滅するようなアポトーシスのDNA を埋め込んでおく」

「俺たちが寝ている間に、すべての男が死んで俺たちだけが生き残る」

「ハーレムだ、絶対のハーレムだ」

 男たちは猛烈に研究し、実験し、艱難辛苦を乗り越えて、一つの病原体を生み出した。それを世界中の大都市に時限装置付きで設置した。偏西風やジェット気流を使って世界中に広めるようにもした。そこまで仕掛けをしてみんなはコールドスリープに入った。本来なら二年で病原体は死滅するのだが、余裕をもって五年とした。


「あー。よく寝た」

「これで世界には俺たちしか男がいない。女たちが俺らを取り合うんだな。もう、今から胸がバクバクだ」

 男たちは地上に出た。そこは五年前とあまり変わらない世界だった。人類の半分が消えたとはいえ、戦争とか震災ではないので、建物が倒壊したとか、インフラがなくなったとかいう被害はない。ビルは当たり前に建っているし、商店街には商品があふれている。人々が普通に行きかっている。もちろん女性ばかりだが。

「モテるぞ、こりゃ」

 が、女性たちは男たちの前をただ素通りした。

「あれ、」

「おかしいぞ」

「なんで、俺らに騒がないんだ」

 男たちの前を、乳母車を押した女性たちの一団が通り過ぎた。かわいい赤ちゃんが乗っている。

「なんで、赤ん坊がいるんだ」

 よく見るとそこらへんに乳幼児がいる。どう転んでも5歳以下の子供たちがいる。


 男たちは知らない。男が一斉に死滅した後、女性たちは新しい子供を産む方法を編み出した。卵子の中に、別の女性の卵子の核を取り出して挿入する。卵子の核と核が融合して、受精卵のような状態になる。そこから発生して胚ができそれを母体に戻すと人工授精と同じように妊娠できる。もちろん卵子の中にはy染色体がないのですべて女の子が生まれる。こうして女性だけの社会ができた。たまに密林の奥とかにいた男性というのが発見されるが、もはや懐妊の手段を得た女性たちは男に見向きもしなくなった。

 科学技術の発展で、男性がいなくても社会を運営できる。力仕事はパワーアシスト機能が発達したので女性の力でも十分だ。理系の女性も多いので、科学技術に何ら問題はない。リーダーシップをとる女性も多いから、政治や会社の経営にも何ら不都合はない。男たちが絶滅して五年もすれば混乱もなく、社会は平和裏に運営されていく。男たちは好奇の目で見られはするが、もはや興味の対象でもなく、しかもブ男、もっさり、ぶよぶよの体型か、ガリガリ、まったくもって魅力のない男たちは存在価値すらないとみなされた。

「俺たちが男たちを死滅させたって言わないほうがいいみたいだな」

「そうだな、まともに考えれば大量殺人だから死刑どころの話じゃないし」

 男たちは街外れでひっそりと暮らした。

「でも、あんまり生活は変わらないね」

「相変わらずモテないけどね」



へへ、転生ものではありません。でも転生ものってハレーム願望なんでしょ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 理想を押し付けて,結果的に理想が崩れると言うテーマがとても面白いと思いました。 [一言] 努力もしない,女性に家庭的であるべきと言う偏見を押し付けて,魅力的な男性がいなくなったら,ほんとに…
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