プロローグ
どうも、おやさいおいしいと申します。
私はパ○プロクンポケットというゲームが大好きで、前々から野球をしない野球ストーリーというものに興味を持っていました。
野球描写も一応盛り込むつもりですが、あんまり野球しないと思います。
こういうのが不快な方はブラウザバック推奨です。
あ、文章はかなり稚拙です。ごめんなさい。
真夏の雨が降りしきる。
全国中学生野球大会、決勝。
最終回のマウンドに上がった天野 翔太は、やるせない疲労感に身を委ねていた。
あー、だるい。 なんで雨の中野球なんかやってんだよ。
チッ、と舌打ちをしてみる。
マウンドはいつも孤独だ。
仲間からは俺らがついてる、楽にいこうぜなんて声をかけられたけど。
うるせえんだよ。お前らに俺の何が分かるってんだ。
ま、この大会が終わったらお前らとも野球ともおさらばだ。何も思い残すことは無い。
背筋を冷たい雨が、汗が、流れ落ちる。
あーあー、風邪ひきそうだなぁ。夏風邪って長引くからイヤなんだよね。帰ってソッコー風呂はいろ。
あ、審判のおっちゃんがプレイとか言ってる。
今日も雨の中ご苦労様です。
―――あれ、俺何やってんの?
気付いた時にはもう遅い。投球動作に入る己の身体を、天野は抑えることができなかった。
あ、これやばいやつじゃない?
ま、いっか。
天野の投じた一球は力なくど真ん中へ吸い込まれる。
次の瞬間、鋭い快音が響いた。それとほぼ同時に、頭に鈍い衝撃が走る。
声を出す暇もなく天野はその場に崩れ落ちた。
なるほどこうきたか、と笑みがこぼれる。
なるほど、なるほど。
ホームラン打たれて泣き崩れるとかじゃないんだ。
なんか俺らしいや。
「天野!!おい、しっかりしろ!!」
「早く担架を!急げ!!」
おいおい、必死かよ(笑)
あ、だんだんきもちくなってきた。
じゃーな、お前ら。
大して楽しくもなかったけど、まぁ今までありがとよ。
駆け寄るチームメイトの声を感じながら、天野の意識は闇の中へと堕ちていった。
ーーー
目を覚ますと、天野は不思議な空間にいた。
夢心地のようで、それでいて意識ははっきりしていて。
周りはぐにゃぐにゃ、ふわふわとしている。
あれ、ここはどこ?私はだれ?私の故郷はブラジルでしたっけ、日本でしたっけ?
「……お目覚めか?聞いていた通り、ふてぶてしい顔をしている」
ぎょっとして振り向くと、20歳半ばほどの、厳格そうな女性が立っていた。というより、浮いていた。
えぇ……よく見たら俺も浮いてるし。
ここはどこなんですか。あなたは誰ですか。
パニックに陥る頭とは裏腹に、天野が放った言葉は存外に冷静かつ達観したものだった。
「俺は……死んじゃったんですよね」
そうだ。俺はあの時、全く無防備のままピッチャーライナーを頭に受けた。野球というスポーツをする上で、ボールに対して無警戒になるという状態は最も危険な状態だと言ってもいい。
「死んだ……そうだな、おそらくそう言うのが一番分かりやすいはずだ。君は打球を頭部に受けて死んだ。」
まぁそりゃそうか。
てかなんで俺こんなに冷静なの?怖いんだけど。
あっ、この流れってもしかして…
「さてはあんた、俺に異世界に転生しろとか言い出すんでしょ?勘弁してくださいよ〜…」
「…驚いたな。かつてここまで呑気に死んだ者がいただろうか」
おいおい失礼な奴だな。俺だって死にたくて死んだわけじゃないっての。
だいたい展開がお粗末すぎるんだよ。
死んだからって都合よく異世界でやり直してね〜とか、そういうの好きじゃない。
分かったらさっさと成仏でもなんでも―――
「まぁ、そうだ。君には別の世界で生きてもらうことになる」
……これだもんなぁ。
ほんっと、ロクなもんじゃねえな。
天野は苦笑するしかなかった。
「はあ、そんなことだろーとは思ってましたけど。何が目的なんですか?」
「目的というほどのことはない。君があまりに人生を舐めていることに神様が少々腹を立てていてな。もう少し苦労してもらおうということらしい」
なんだそれ。そんな理由で異世界転生なんかに巻き込まれなくちゃいけないのか。
死んだ後くらいゆっくりさせてくれ。
「じゃあその高尚な神様とやらにちょっと会わせてくださいよ。本人と話をしないのっておかしくありません?」
ふーむ、と少し考えたあと、彼女は頭に手を当ててぶつぶつと話し始めた。
「こうのたまってますが…どうされますか、神様?」
「むむむ、お呼びとあらば行くしかあるまいな」
次の瞬間、ぼんっ!といささか間抜けな破裂音がしたかと思えば、そこには白髪の幼い少女が立っていた。
「あー、初めまして、わしが神じゃ」
……なんなんだ、コイツは。
露骨な嫌悪感を顔に出す。
「そんな嫌そうな顔しなくても…わし泣いちゃうよ?泣いちゃうよ?」
「あのな…人の人生に文句つけるくらいだから、どんなじいさんが現れるかと思ったら、こんなちっこいお子様が出てきたんだ。嫌な顔もするだろ」
天野がそう毒づくと、神と呼ばれた少女はむっと頬を膨らませた。
「神を前にしてその物言い。だいたいわし年齢とか数えきれんくらい生きてるからいいじゃろ。神を見た目で判断しちゃいかんよ?」
「あ、ロリババアさんでしたか。失礼いたしました。…じゃなくて。もう俺死んじゃったみたいだし、異世界転生とかいらないんで普通に死なせてもらっていいですか?」
「そうは言うてもなあ…正直、わしはお主キライ!傲慢オブザイヤー。ちょっとくらい痛い目にあってもらわんと気がすまんし。それに、生きるって案外楽しいもんじゃぞ」
「はぁ…結局、俺に何を望んでんの?生きる楽しさ(笑)を感じてほしいのか、ただ痛い目を見てほしいだけなのか。どっちなんだよ」
口調が荒くなる。苛立ちを隠せない。あぁ、くそ。
こんな胡散臭さを擬人化させたみたいなロリババアの裁量で飛ばされる世界なんて、どうせろくなもんじゃない。
勇者にでもなれってか?
くだらない。絶対にごめんだ。
「うーんわし的には後者メインじゃけど、その中で色々学んでくれればいいとも思っとるぞ。お主まだ15じゃろ?先は長いしの」
「…仮に、仮にだぞ。異世界に転生するとして、そこはどんな世界で、俺は何をすればいいんだ?」
「そんなもの、行ってからのお楽しみに決まっておろう。…じゃが、これだけは言っておこう。『本気で生きろ』とな。これからお主が生きる世界は、元いた世界のように甘くはない。あ、そろそろ時間じゃ。ほれ、転生を始めるぞー」
「なんだよ、それ!次の世界でもさっさと死にゃいいだけの話だろ!…おい、待てよ!」
天野の身体が白い光に包まれる。
存在というものが、だんだんと希薄になっていくのがわかった。
「あー!!言い忘れてたけどなー、老衰以外の理由で死んだら無限地獄じゃからー!!めっちゃしんどいからなー!!絶対死ぬなよー!!!」
はぁ?なんなんだそれ。わけがわからない。
ふざけるなよと叫んだはずなのに、声が出ない。
天野を包む光は輝きを増し、やがて天野ごと消えた。