2.少年・彼は起き上がった
流星は目覚めた。
もやが掛かっていた視界がはっきりしてきたので、周りを見渡したが見慣れない部屋だ。
きょろきょろしていると、あくびをしながら男が一人近づいてきた。
「大丈夫か?」
心配してくれているらしい。
「はい、何とか。課長、吸いません。すこしパニックになっただけです。」
課長と呼ばれた彼、滝川大将だ。
蒼葉警察署捜査課課長である。
彼の過去を知っている理解者の一人だ。
「辛いんだったら、捜査降りてもいいんだぞ。」
そう行ってくるが流星は首を横に振った。
「いいんです。このまま頑張ります。じゃないと過去から一生逃げることになるので。」
真剣なまなざしで彼は答える。
「ならいいんだ。あまり無理すんなよ。」
と、いいながら流星の頭をガシガシなでた。
「そういやぁ、倒れたって聞いて署長が心配してたぞ。大丈夫ですって行ってこいよ。
あの人も心配してると思うから。」
「わかりました。今日にでも行ってみます。」
すると非番の課長が送ってくと言ったのでお言葉に甘えて署まで送ってもらった。
課長の黒い510ブルーバードSSSクーペはいい音を響かせ署に滑り込んだ。
課長にお礼を言い、警察署に入ると署長室に向かった。
扉をノックすると、
「はい、どうぞ。」
と、声が掛かったので部屋に入る。
そこに居たのは蒼葉警察署署長である、小野国弘だ。
「署長、心配掛けてすみません。」
深く頭を下げる流星。
「いやいや、キミのせいじゃないからしょうがないことだよ。どうだい、気が紛れるように友人の刑事の話でもしようか?」
小野もなぜこの様になったか、彼の過去も知っている。だからせめて力になれたらと思っているのだ。
「お気持ちだけもらっておきます。今じゃ本部ではたらいているエリートさんの話ですよね。
自分は捜査に戻りたいと思います。」
流星は聞き飽きたと言う顔をしながら答えると、礼をして部屋を出て行こうとした。すると、
「無理すんなよ。」
優しい声で小野が言った。
「はい!...失礼します。」
深々と再び礼をして部屋を諸星は出て行った。