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9-03 1/2 急報、黒き飛竜の襲来

 ところがどっこいそう上手くはいきません。

 翌朝ベッドから身を起こすと、アトリエ一階に冒険者ギルドからの使者が来ていました。


 ま、使者といってもそれアシュリーだったんだけど。しかもでかい寝癖付きだったりしちゃったり。

 で、その彼女が言うには緊急事態らしいです。


 しかも勝手にこのアトリエを集合場所にしやがっちゃいまして、なんかその後もぞろぞろと人が押し掛けてくるではありませんか。

 完全に俺たちを巻き込むこと前提で話が完成しています。


 まずは近場から鍛冶師ダリル。

 少し遅れてアカシャの家からアクアトゥスさんとつれのウルカさんが現れて、そこに俺とお嬢が加わる形でアシュリーご予定の召集が完成したようでした。


 とにかくこうしましょう。

 話だけ聞いて、断って、寝ましょう。


「皆さん、こんな朝方にお呼びたてして申し訳ないっス。ギルドを代表して、まず自分が謝っておくっス、ごめん」


 アシュリーは昔から人の扱い方が上手いです。

 そう言われたら大抵の人間は矛を収めてしまうでしょう。


 もちろんいちいちゴネられても長引くので、さっさと全部話させて寝る流れにしたいです。

 ……他の連中はずいぶん真面目に彼女の話を聞いてるみたいですけど、緊急事態とか言われても知ったこっちゃないですよ。


「先輩、話進めちゃっていいっすか?」

「うん聞いてる聞いてる、どんどん進めてー」


 机に突っ伏して聞き耳だけ立ててだらけます。

 こっちはお国のために徹夜して爆弾作ったんですから、これ以上何か求められても困ります。


「すみませんアシュリーさん……ここにいる者の大半は……わけあって寝不足なのです……」

「わかってるっス。でもその事情を越えるレアケースってやつが起きてしまったんスよ。申し訳ないっスけど……ギルドを代表して、先輩およびその仲間たちに協力要請させてもらいたいっス」


 顔を少し上げてアシュリーを横目でのぞきました。

 言葉尻もそうですけど柄にもなく真面目です。


 しょうがないから眠気まなこをこすって、かの天晴れな寝癖に視線を集中させました。

 直そうとしてますけど無駄無駄です、元気なアホ毛に育っておられますよ。


「実はCクラス相当の危険なボスが、とある踏破済み迷宮に入り込んでしまったっス」


 え、なにそれ。

 協力する気0でしたけどちょっと興味を覚えました。


「目撃情報によるとそれは飛竜ワイバーン。情けないっスけど、軍とか冒険者が外に出払ってる隙に、空から一気に抜け駆けされちゃったらしいっス」


 飛竜……強襲からの……踏破済み迷宮への進入……。

 おお……なにそれなにそれ、すごいことになってるじゃん。

 空から一気にとか、なんかカッコイイし非常事態なスリルがあるじゃないですか。


「あーストップ、ダリルちゃんから質問! Cクラスとか言われてもよくわかんないから説明!」


 あのヒッポグリフがB-クラスだったはずです。

 ほら、13名の多人数パーティでやっとこさ倒したアイツです。その後、街で軽く話題になるくらいの大物でした。


 あれより一回り弱いと聞けばかわいいですけど、あの迷宮は多人数仕様でしたし、つまりCクラスって普通に強敵ってことです。


「そっスね、先輩と自分のペアで戦った場合、勝てる確率は5割を切ると思うっス」

「うわ、ヤバそう……解説ありがとうアシュリーちゃん」

「いえいえっス。……ん、てかそうっスね、冒険科にいなかったり、座学忘れてる人もいるはずっスから、まずは踏破済み迷宮について説明しておくっス」


 え、俺そういう説明臭いのいらないんだけど。

 ただでさえこっちは眠いんだし、よしならもう寝ようか熟睡目指そう。


 これはスキップモードがいいですね。机にまた突っ伏して重いまぶたを閉じました。


「待った! ならそれ、せ~んせっ、にやってもらおうよ。だってほら、先生は先生だし一応入試主席なんでしょー? いちおーね~?」


 ちょっと待ってウルカくん、なんですかその振り……。


「なにを言い出しますかウルカさん……先生はね、冒険者じゃなくて錬金術師なのですよ。ってことでこういうのは本職にお任せしましょう」

「いいじゃない、やってみなさいよアレク」


 えっちょ、お嬢まで……。


「賛成です……兄様の口からならアトゥは忘れません……一生覚えておきます……一子相伝で子から孫へと語り伝える伝説です……」


 はい、満場一致となりましたー。

 いやぁぁ……そんな抜き打ち問題みたいな話困りますよ~?


 ああでも、踏破済み迷宮については面白い話だったし忘れてないです。いけるかどうかでいえばいけます。


「ほらほら早く早く、怠けてるから指されるんだよアレックス、そういや職人科でもそうだったよね~」


 ダリルに背中を押されて立ち上がりました。

 皆さんの注目が一気に集まり、よくわからないこの流れになおさら俺の心はおっくうにしらけていきます。

 しょうがないです、この遊びに付き合いましょう……。


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