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8-01 金策に行こう!

前章のあらすじ


 リィンベル嬢が居候としてアトリエに居着く。

 優秀な商人である彼女は店の営業に貢献してくれるが、ある日彼女の叔父アストラコンが来訪する。

 叔父はアレクサントが短命な人間であることを危ぶみ、リィンベルを連れ帰ろうとした。


 そこへアレクサントは宣言、自分はいずれ不老の薬を作り出す。

 手始めにクレイゴーレムを作ってみせるので、もし出来たら考え直してほしい。


 その後、試行錯誤の末にクレイゴーレムが完成。

 手のひらサイズのそれをドロポンと名付け、叔父アストラコンへとお披露目する。


 アストラコンは彼の実力をついに認め、正式にリィンベルがアトリエの仲間となるのだった。

―――――――――――――――――――――――

 連鎖劇 お気の毒ですが金策が必要なようです

―――――――――――――――――――――――


 さほど珍しいことではございません。

 アトリエでは、晩ご飯のおかずが増えたり減ったり無くなったりなど日常茶飯事でした。


 その気になれば大富豪にだってなれたでしょうに、富豪と呼べるだけのお金が貯まることはまずありませんでした。

 ですから今回の困窮も、錬金術のアトリエに関わる者からすれば困った日常の一部分に過ぎませんでした。


 このたび彼は戻る(・・)ことになります。

 ひょんなことから受けたその仕事が、この先もちょっとしたコネとなり副業として根付くのでした。



 ・



8-01 金策に行こう!


 夜が空けて朝が来ました。

 硬いパンとハム一枚、あと残っていた菜っぱだけの味気ない朝食を終えて、それから開店を手伝いました。


 朝はわりとにぎわいます。

 主要な客層は冒険者でして、出発前にポーションや傷薬を求めて開店を待つ方も珍しくありませんでした。


 うん、それじゃざっと現状をご報告しましょう。

 まず店の状況ですが、先ほどポーションが全て売り切れまして、軒先に品切れの看板を下げることになりました。


 じゃあ補充しなきゃいけませんね。

 でも無理です。

 昨日のゴーレム作りで錬金MPが枯渇しました。


 ドロポンの方は木バケツからお洒落なプランターに移されて、レジの前でマスコットよろしくもぞもぞうごめいておられます。


 噂を呼び職人街の子供たちがワイワイキャキャー来店したりと、人招きにはなっているのですが……。

 ここは見せ物小屋でも託児所でもないですから、メリットの方はとなるとわかりません。


 まあ幸いドロポンは見た目愛嬌ある珍生物なので、誰もが驚くもののやたらに怖がられるようなことは皆無と言えました。


 ちなみに一番のマスコットはリィンベル嬢なんですが、今は居ません。

 かばんに在庫の一部をしまって、あの小さい体で営業に出かけてくれています。

 お嬢がきっと取引を獲得してくれるので三人分の食い扶持はしばらく問題ないです。


 でも甘えるわけにもいきませんし、その在庫だっていつかは切れます。


 早急な建て直しが必要なのです。

 だから今は生活費を最低限まで切り詰めて、残りの稼ぎはポーション素材の仕入れに回すことにしました。


 これも申し訳ないのですが、頼もしいお嬢にお願いすることになっています。

 なにリィンベル嬢は本当に根っからの商売人ですから。

 見かけは麗しきロリエルフですのに、これが商取引となるとやったらに強いのです。


「アインスさん、悪いけど店任せちゃっていいかな」

「はい、かまいません、よ。お仕事、楽しいです。……どちらへお出かけ、ですか?」


 魔導師のローブを羽織って、新生ダリルの杖を握りました。

 そういえば名前付けてません。


 妖魔の瞳を使ってますしここは便宜上、妖魔の杖……いや、厨二っぽく[スタッフ・オブ・ガイスト]とでも呼ぶことにしましょう。


「ギルドにいってクエストしてくるよ。ま、ダメ元ってやつ? なにせ今の俺って役立たずだからね」

「…………。いってらっしゃい、ませ」


 アインスさんはしばらくぼんやり俺を眺めました。

 言い回しが複雑だったり皮肉が利き過ぎていると、たまにアインスさんってば受け止めかねてバグります。


「じゃ、二人に頼り切るのも情けないし、ちょっと俺なりにいってきます」


 だから首を軽くかしげた後、丁重なお辞儀で外出を見守ってくれました。

 さあギルドに行こう。目的地目指して職人街の往来を進んでいきます。




 ところで話を少し戻します。

 ポーションの材料ならば迷宮で現地調達するのが一番です。

 しかしここにも問題がありまして、実は魔法のMPもあまり残っていないのです。


 どこでそんなに消費したのかと思い返せば、ほらアレです。

 マナ先生とあの封印区画を潜った際に、ゴソっと使い切ってしまっていました。


 つまり、売り物がない、金がない、MPがない、素材もない。 

 いっそついでに白状しますけど、最近ちょこちょこレア素材も買い込んでました。


 だってあの杖作りのときに実感したんです。

 材料の選択肢って大事。

 当然ながら多いにこしたことはなく、そのラインナップが高難易度錬金の成功率に繋がるのだと。


 で、結果はご覧の通りの惨状でございます。

 おかしいなぁ……お金ってこんな簡単に飛んでくんですねー、不思議~。


「マジシャンのアレクサントです。選り好みしないのですぐ出来る仕事下さい」


 ギルド本部についたので受付に並びました。

 順番が来たのでこちらの要求を簡潔に伝えます。

 消耗したマジシャンでも仕事貰えるかなぁ……貰えるといいなぁ……。


「アレクサントさん、申し訳ありませんがMP不足です。さすがにこの残量ではご紹介出来ません、ご自愛下さい」

「あーやっぱり? 残念っ」


 案の定ダメでした。

 低級ステータス解析呪文をかけられて、HPとMPを参照されると容赦なく門前払いです。

 おのれ鑑定魔法、なんて迷惑な存在なんでしょう。


 ……そりゃあもちろん、MP不足のマジシャンなんて他の冒険者から見たら超迷惑ですけど。

 でもこのスタッフ・オブ・ガイストがあれば、物理でなんとかいけそうな気がしたんですけど……無念、受付には勝てない。


 どうしよ、うん、どうしよ……。

 おめおめアトリエに戻ってもカッコ悪いし、店の運営はアインスさん一人で事足ります。

 なのですっかり途方にくれてしまい、それでついついロビーの長イスでボケーっとひなたぼっこしちゃっていました。


 うーん……ハロワってどこにあるんでしょう。つか存在しますか?

 このままプチ無職気分を味わうくらいなら、肉体労働でもなんでもしちゃいたいところですけど……困った。


 でもそこに懐かしい顔が現れました。


「おおっ、こんなところでどうしたアレックス! いや我が息子よ久しぶりだなぁっ!!」

「……あ、先生」


 あの筋肉魔法使いのダンプ先生です。


「お腹痛いのアレッきゅん? お姉ちゃんがナデナデしてあげようか、ハァハァ♪」


 あとご自重下さいなマナ先生。

 どん欲にうごめく指先が伸びて来たので、やんわり握手で受け止めやり過ごしました。


 ……それはそうと、なんか先生方はメチャ強そうな人たちを引き連れています。

 マッチョとか全身鎧とか宝石沢山身に付けた上位魔法使い(ウィザード)とか。


「どうしたどうしたアレックス、先生そんなお前を久しぶりに見たぞ」

「そうね~、お姉ちゃん心配になっちゃう……スリスリ……」


 二人ともバカみたいに強いので、その他大勢も高ランク冒険者ってやつなんでしょう。

 ちなみに俺がEクラス、アシュリーがDらしいですから、上の方は自動的に化け物って解釈でいいと思います。


「実はMP不足で仕事を貰えなかったんです。おまけにちょっと趣味と実益に予算を使い過ぎて……アトリエの資金繰りが怪しくなってしまいまして……いやうっかり」


 冒険者として見れば情けない話なんでしょう、自己管理がなってないみたいな。

 でも二人ともそんな顔一瞬だってしませんでした。


「そうか、なら良い仕事があるぞ」

「え……?」

「ちょっと待て。ペンと紙切れを貰ってくる。そういうことなら俺も助かる」


 で、何を言うかと思ったら仕事をくれるって言うんです。

 受付まで行って先生はなにか一筆したためて、それを俺の胸にグイッと押し付けるのでした。


「アカシャの家に行け」

「ああそっかそういうことねダンプちゃん。確かにこの子なら向いてるかも~」


 勝手に彼らは納得しました。

 閉じられた紙切れの手紙を受け取って、どうしたものかと宙ぶらりんに握ったまま筋肉先生に目を向けます。


「これって何の仕事ですか」

「なに、我が息子なら簡単な仕事だ。お前も知ってると思うが俺は今現場に復帰して、学校の方は非常勤扱いで続けている」


 ごめんダンプ先生、それ実は知らなかったり……。


「でだ、今日の放課後から明後日までの授業を受け持っていたのだが……都合が悪くなってな」

「ん、んん……? あの……それってまさか……」


 なんか話が変な方向に進んでません?

 まさかこの仕事って、まさか。


「どうも手のかかる連中を掃討しなくてはならなくなった」

「あのねアレッきゅん♪ このシーズンはボスクラスが公都に近付いてきて大変なの。万一入り込まれて被害が広がったら大変だから~、お姉ちゃんたちかり出されちゃった~♪」


 おおなるほどファンタジー。

 定期的に襲来する魔物の群れってやつですね。

 ここからは推測だけど、先生方が予定を変えなきゃならないほどってことは、いつもの年よりものすごいのが来てるってことなんでしょう。


 ……うん、別世界だ。

 ダンプ先生とマナ先生、その他もろもろが総動員態勢で迎撃しなきゃいけない相手ってどんなだろそれ。


「というわけで助かったぞ息子よ、俺の代わりに生徒たちの面倒を見てやってくれ」

「キミなら出来るよアレッきゅんっ! うふふっ、お姉ちゃんも期待しちゃう、がんばってね♪」


 手紙をローブの裏ポケットにしまいました。

 出来るかどうかはわからないですけど渡りに船です。やるしかありません。


 学級崩壊だろうと何だろうとさあ来いです。


「ありがとうございますダンプ先生、じゃあやるだけやってみます。……息子じゃないですけどね」

「息子だって女装すれば娘よね、ハァハァ♪」

「そうですね。お二人も掃討任務がんばって下さいそれじゃ」


 時間は大切です。

 恥をかかないように、今からアトリエに戻って復習することにしましょう。

 俺は二人に手を振ってギルド本部を立ち去ったのでした。


 マナ先生にスルーは通用しません。


 自己完結したトリップが腰をくねらせ胸を揺らし、シスターにあるまじきそのしぐさが、さらに居たたまれない空気を濃厚にたち込ませるので可及的速やかに逃げました。


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[一言] >どん欲にうごめく指先が伸びて来たので、やんわり握手で受け止めやり過ごしました。 マナ 「……アレッきゅんのお手々…ハァハァ」(//́Д/̀/)にぎにぎ アレク「……(握力UP)」ギリギリ…
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