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53-11 夏島の開拓を始めよう 三日目・女神G

「いいじゃん。大事なのはノリと雰囲気って、アクアトゥスさんに教えたんでしょ」

「そうだ。だから雰囲気くらい作れと言っている」


 無理だね。緊張と集中は長続きしない。

 真面目にやったら調合前半で集中力が切れるのが見えている。


「いやそれよりさ。オールオルームとグリムニールさんに錬金術を教えた、黒の書だっけ。なんかそんなやつ? アレってなんだったの? 今どこにある? グリムニールさん持ってる?」

「ああ、アレか。なくした」


「なくしたって、ちょっと……!?」

「300年も前のことだぞ。むしろ紛失してない物など無いと断言しよう。いいか、生まれて20年も経っていない坊や。物というのはな、持ち主を選ぶのだ。永久に己の手元に残すことなどできん」


 なくした言い訳がそれだそうです。

 物っていつの間にか消えたり現れたりするし、わからないでもないか。誰かに盗まれたって線もありそう。


「ふーん……。いや、この錬金術の力ってさ、どこからきたのかな……って、ちょっと思っちゃって」

「ならば答えられるぞ。錬金術に理屈は通じない、考えるだけムダだな」


 鼻で生返事をしながら白金を投入した。

 反応が落ち着いたらアクアマリンと、蒼海の真珠を投入して、グリムニールさんの前で釜をかき回す。


「あ、離れた方がいいかも」

「失敗か?」


「いや、違う。これは――とにかく離れて!」

「キャッ……?!」


 なんかロリババァらしくないかわいい声が聞こえたけど、緊急事態からしょうがないです。

 俺はダリルの杖を釜から投げ捨ててすぐに、グリムニールさんを胸で抱っこして逃げました。


 その後、すぐにポータブル錬金釜が大きな金切り声を上げることになりました。

 こういう反応は初めてです。


 釜の中に収まらなくなった完成品が、無理矢理釜の外に飛び出した。

 白い蒸気が潮風に流されると、錬金釜に積み重なるように巨大な女神像が完成していました。


 その女神の手や周囲には噴出口があります。


「噴水か。面白い……。だがこれは、でかいな……」

「うん、錬金釜よりでかいやつを作ると、釜の外側に出来上がるんだね」


「バカを言え、普通は釜と一緒に中身も壊れる。貴様の錬金術はやはりおかしい。……ふむ、これを湖に入れればいいのだな?」

「たぶんそういうやつじゃない。作った俺もよくわかんないけど」


 白金でメッキされた像が曇りのない金属光沢に輝いていました。

 大きさは俺の身長の倍くらいもある。でかい。こんなの島の中央まで運ぶのか……。


「なんでわからぬのだ……。いや問題は運搬方法だな、これだけ大きいと、人をかき集めるしかないか……?」

「グリムニールさん、レウラのこと忘れてるでしょ」


「おおっ、そうだったそれじゃ!」


 レウラは軽量化したガレオン船すら運ぶおったまげ飛行能力を持っています。

 ロープで固定して、それをレウラ3匹に引かせれば、島中央の湖などあっという間でした。


「あれ? というか、肝心のあいつら、今どこにいるの……?」

「知らんな。探させるしかあるまい」


「なんか不安になってきた……。どこかで悪さしてないよな、あいつら……。あんなのが集団で飛んできたら、孤島の人喰い部族ですら槍捨てて逃げるぞ……」

「ッッ?! そ、それより、おい……っ。い、いつまで人を抱き上げているつもりだっ!」


 気づいてなかったわけではない。

 だけどグリムニールさんを抱っこできる機会なんて、この先そうそうないでしょう。


 俺は渋々と、暴れるグリムニールさんを地に戻すことになりました。

 ああ軽かった。これが成人女性というのは無理がある。


「わっっ?! お、脅かすな貴様!」

「うん、これはわざとかも」


 ポータブル錬金釜を解除すると、釜の上に乗っていた巨大女神像が砂浜に落下してドスンと大地を揺らしました。

 グリムニールさんがそれにびっくりして、俺はまんまともう一度、銀髪の愛らしいロリババァ様を抱っこするのに成功したのでした。


「おーろーせーーーっっ!!」

「ごめん、今ちょっと無理」


 アレクサントはロリババァを手に入れた。

 だがグリムニールさん曰く、物というのは持ち主を選ぶ。永久に己の手元に残すことなどできなかった……。



 ・



 その後、うちのホムンクルス界隈に詳しいアインスさんと、人を指揮するのに慣れっこのアルフレッドを捕まえて、白金の女神像(噴水)を運搬をお願いしました。


「レウラなら、蒼い子がアトリエで、お昼寝していた、はずです。私から夏島に、集まるよう、伝えておきます」

「今回の計画、ドロポンとレウラがいなければ成り立たなかったな。……ところでアレクサント、なぜこの女神像はエルフベースの長耳なのだ……?」


 それは俺の潜在意識レベルで、エルフの耳が好きだから。

 あるいは目の前にいたグリムニールさんが像のモチーフだから。


 どっちがいい? とヤツに聞いたら、どっちでもいいと言い捨てられましたとさ。

 さて、女神グリムニール様の運搬はアルフレッドたちに任せて、俺たちの方はもう一つの調合に意識を集中させよう。


書籍版・超天才錬金術師の発売日が決まりました!

11月30日となります。

書店での予約や、ネット通販も始まっていますので、よろしければぜひ予約して下さい。

双葉社Mノベルス、税抜1200円です。本のコードは、SBN-13: 978-4575242324となります。

表紙絵と口絵を見せていただきましたが、素晴らしい出来栄えです。買うだけの価値があります。

もう少ししたら、表紙絵のサンプルを割烹等に載せますので、ぜひ楽しみにされて下さい。宣伝でした。

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