46-2 魔剣と俺、釜に溶けた2つのものは1つになる 2/2
「うーん、それはどうだろうね。俺とコイツは同じ俺がスタート地点だし。ま、始めるね」
片手で魔力を釜に込めます。
俺の左手首と、魔剣を溶かす簡単な作業です。
「それじゃ、アイルビーバック……なんちゃってな、しっかり頼むからうつけ」
「任せろ俺。あ、せっかくだからアインスさんも手伝ってよ、左手溶けて何か調子狂ってきちゃった」
するとアインスさんが小走りで自分の杖に駆け寄り、釜にそれを落としました。
「っ……?!」
「大丈夫大丈夫、ドロポンみたいなものだから」
溶けてなくなっている左手に、ショックを受けて視線をそらしました。
うん、グロいかも。断面とかどうなってるんだろ。
アインスさんはそれでも俺の頭おかしな融合を手伝ってくれました。
魔剣は釜の中に姿を消し、今や跡形もありません。
「私も、ホムンクルスに、なればいいんでしょうか……。ご主人様のオリジナルが、そうしたように、私も、釜に溶けていなくなれば、誰にももう、迷惑を、かけることも……」
ごめん、そういう解決方法はお断りです。
古なる者につけ狙われる宿命に、負けたことになるし。
「それはアインスさんがお婆ちゃんになってから考えよう。ぶっちゃけ老いさせる気はないんだけどね、俺も」
お嬢も。
俺たちがこういう肉体である以上、親しい者の不老を望んで何が悪い。
アインスさんが健やかにいつまでもいつまでも笑っていられるよう願い、それを実現させようとしているだけです。
「ご主人様、釜が……」
「うん仕上げといこう。助かるよ、こういうところはアトゥには見せにくいから」
釜が黄金色に輝いて部屋を照らしました。
強い西日のような光です、まぶしそうにアインスさんが目を細め、それからすぐに蒸気を上げて俺と魔剣の目的が果たされることになりました。
釜の中には今まで通りの魔剣アレクサントと、溶けたはずの左腕が元通りに俺に繋がっていました。成功だ……成功、だが……。
「うっ……こ、これは……ッッ?!」
俺は堪えがたいそれに釜の前へと崩れ落ちていました。
こんな、こんなものは俺の予定にない、バカな……。
「だ、大丈夫、ですか、ご主人様?!」
「うん大丈夫安心してアインスさん、別にこいつの身体に異常が出たわけじゃないから。かわいそうにな……」
魔剣が同情を込めて言いました。
ど、どの口がそんなことを言う……お前、お前こんな、こんな……っ。
「でも、苦しそう、とても……」
「コイツは好奇心に負けて知っちゃったんだよ。知らなければ良かったはずの、あの晩のことを……。しっかしろくでもねぇなお前さ?! デニーロをゾンビパウダーで操り人形にして、婦人の自白を引き出すとか、クズ以下だろこれっ、人として最低だわ!」
アインスさんはツヴァイを床に寝かせ、俺の背中をやさしくさすってくれました。
ああ、アインスさんは天使です、ありがとう、ありがとう……。
「大丈夫……心配しないで、はぁぁぁ、大丈夫だからアインスさん……」
俺は頭を抱えながら息をつきました。
ようやく落ち着きが少しだけ、戻ってきました……。
「だから言っただろ、知らない方がいい思い出もあるんだって。いや、お前にも生で体験させたかったわ。剣に興奮するマハ公子との無自覚そのまんまな一晩をな……」
女の子としか思えないやわらかい温もり……。
そしてグリグリと鞘越しに刀身に……刀身に……うわあああああああああーっっ?!!
「何されるがままにされちゃってんだよお前さぁっ?!」
「しょうがないだろっ、恨むなら大公様に俺を売ったアシュリーを恨めよなっ!」
アシュリーはマハくんへの魔剣の貸し出しに応じました。
そしたらどうなるかとか、そういう想像力をちょっとは働かせて欲しかったです……。
ああ、マハくんの変に甘ったるい匂いが脳髄に染み着いて離れない……。
「アインス、さん……」
「だいじょうぶですか、ご主人様、お水を、持ってきましょうか……?」
「誰かと融合、するのは……あまりオススメしない……。同じ俺ですらこの通り……ううっ、他の誰かと溶けて1つになるだなんて、そいつの頭が堪えられるとは思えない……お、オェェェェ……ッッ!」
「ご主人様、気を確かに、何が、あったのですか……っ」
救いがあるとすればそれはアシュリーの弟たちかもしれない。
ランドールとレイリーか。
あの気まぐれなアシュリーが超過保護になるくらいには、俺からしたってかわいい後輩になりそうです。
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その後、ショックから立ち直った俺は魔剣俺に新しい機能を付与しました。
その名も魔法剣スリープ&サイレス。
「やれば出来るじゃないっスか先輩っ、これっスよ、遠くの遠距離タイプに投げつけて寝かせて黙らせる、こういうのを待ってたんスよ自分!」
これはわりと汎用性があってアシュリーに好評でした。
俺としては地味ですっげーつまんないんだけど……。
あ、でも強盗するときとか便利そうだわ。
「その前にこんなの投げられたら一般人は永遠にスリープっス、それ意味ないっス死ぬっス」
「じゃあ次はバニッシュ&ドレインでいこう。敵の生命力を吸って回復するやつ」
「だからバニッシュ要素はいらないっス! ていうかモンスターの生命力なんて吸って大丈夫なんスか!?」
「どうだろ」
「わからない機能を持たせるのはいい加減やめて欲しいっスよぉっ!!」
こうして俺と魔剣は思い出を交換しました。
それから思い返してみると確かに、バニッシュ&ブレイクはイマイチだったかもわからんです。
けれどそこには、歩むことのなかったアシュリーとの冒険者生活の夢が確かにそこにあって、魔剣と共にこれからもずっと続いていくのです。
次の思い出交換を楽しみに、俺はまたアシュリーを魔剣アレクサントに任せることにしました。




