0-03 1/2 職人科のダリルと輝かしき夢
予定外こそありましたがアカシャの家は天国でした。
特にこの寮生活部分がもうホント最高です。
入学当初はもう嬉ションしかけの連続でした。
すごいよ、寮生活って良いよすごいよ。
なにせ本当に1zもお金がかからないんだ!
最初から家具は全部そろってて、しかも定期的に生活雑貨が支給されるんだよ!
寮のご飯は朝晩と寮母さんたちが作ってくれて、そりゃもうバランス取れてて若者に嬉しい高タンパク!
新鮮な野菜と肉。塩だけじゃないちゃんとした味付け! すごい……凄過ぎる……ご飯美味し過ぎてグルメマンガみたいに口から光が出せそう……!
あ……いかんいかん、これまでの貧しさと成長期の食欲あまり理性が吹き飛んでました。話を進めます。
あの試験って商業科の試験だったんですよね。
でもあのハゲピカ教頭のせいで職人科に回されちゃって、だから当初はもう上手くやってけるかなって不安だったんですよ。
あでも割と余裕でした職人科。
というのも職人カテゴリーで大まかに学生公募しているもんで、生徒一人一人が何かしらの特化型なのです。
彫金、鍛冶、薬品、皮、布、宝飾などなど何かしらに長じた生徒らが、選択式で裾野を広げつつ優れた師範の下に技術を磨く。そんな面白遠回りシステムでした。
だからそうなるとですね、どこでも未経験者OKみたいな空気だったんですよ。
基礎から教えちゃる、おおアレクサントくん才能あるんじゃなーい、いっそうちに転向してみたら? なんて勧誘されちゃうような世界でした。
転向も何も職人家業は初心者ですとは言えなかったですけど、悪い気分じゃないです。
あ、それで。
最初に3科目選ぶんですけど、鍛冶と薬品、宝飾を選んだんです。
で、その鍛冶の授業で知り合った子がすごく面白い人で、その日も肩をそろえて一緒に打ち込んでたんですよ。
確かそれが入学してちょうど半年くらいの頃でした。
その子のおかげで職人として生きるのも悪くないなーとか、思いかけてたんですけどね……。
ま、うん、人生そう上手くいかなかったんです。