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41-1 こんな情勢になんだけど、皇帝陛下に会いに行こう


前章のあらすじ


 アトリエにハーフにしてダークエルフの女エイルベルが現れる。

 彼女はリィンベルのケンカ別れした親友、友を思って魔王を継ごうとするアレクサントにリィンベルの代わりになるから別れろと要求してきた。


 当然そんな要求を彼が飲むはずがない、エイルベルは散々にアレクサントの性根の悪さを味わうはめになる。

 そこでエイルベルは己の正体を明かした。彼女はルルド教の秘密結社アトラスの構成員、アレクサントを出頭させに来た。


 アレクは彼女の要求に条件付きで従い、秘密結社の公国支部を訪れることになる。

 その地下施設の奥地にあったのは3つのオベリスク、3賢者と称されるルルド教を操るAI、地球側の人類が残した宗教管理システムだった。


 3賢者はアレクサントを危険視していた。

 システムによる未来予測によると2通りの未来があると警告する。

 1つは彼が破れ、ポロン公国がその巻き添えとなって独立を保てなくなり、迷宮の主・眠れる者を目覚めさせてしまう世界衰退の未来。

 もう1つは魔王アレクサントが古なるものを滅ぼし尽くし、全てが彼の奴隷となり果てる未来。

 アレクサントは3賢者の未来予測を否定し、別の未来を約束した。

 

 その後、アレクサントの強引な誘い込みによりエイルベルとリィンベルが再会する。

 しかしそこで彼は発作的な熱病に倒れ、その10日後に不十分ながらも魔力を取り戻すことになった。


 だが完全復活を待たずして手遅れの事態が起きた。

 前触れもなく東の隣国ヒルデガルドが公国に攻めてきたのだ。戦争が始まる。


――――――――――――――――――――――――

 41章 侵略される公国と、魔王のいるアトリエ

――――――――――――――――――――――――


 彼らは遠き先祖たちが残した負の遺産。

 人の社会に根付き、寄生して、人を完全なる群れへと変える恐ろしい怪物。それが古なる者にございます。


 社会に浸食したその眷族を見分けることはほぼ不可能、張り巡らされた秘密の情報網が常に社会を見張り、隣人として、国とは異なる異質の群れとして、素知らぬ顔で私たちを監視しているのでございました。


 このたびは東、ヒルデガルド連邦での物語。

 圧倒的な大軍勢に対して、魔力の衰えた主人は考えました。

 事件の背後に仇敵あり、これはヒルデガルドの暴走ではなく、古なる者の暴走であると。


 それでは皆様、東を駆ける物語のはじまり、はじまりでございます。



 ・



41-1 こんな情勢になんだけど、皇帝陛下に会いに行こう


 戦争は軍人の仕事です。

 魔力の衰えた俺が出たところで最悪殺されちゃいます。ていうかガチで狙われてるのは俺とアインスさんなので、戦場になんか出たら火に油でしかありませんでした。


 よって俺は大公様の出頭命令には応じましたが、力が回復してないことや腹案、連邦国の意図ではない疑いがあるとうそぶいて前線参加や錬金術での支援要請を拒みました。


「大公閣下、俺はヒルデガルドに飛ぼうと思います。いえ鞍替えするとかじゃなくてですね、これ、向こうの皇帝陛下もきっと意図してない展開だったと思うんですよね」

「この状況でか……。おおなるほど、飛竜レウラを使うのだなっ!」


「ご名答です。レウラの足を使えば誰よりも早くあちらに行ける。皇帝も黒だったらそんときは自慢の爆弾で城ごと吹き飛ばして帰ってきますよ」

「頼もしい、あいわかっただが急げよ。貴殿の力がなければあの大軍はさすがにきつい! 待っているからなアレクサント殿!」


 そのとき大公様にガッチリと肩を抱かれ、手を握られたのを覚えています。


「もちろんですとも。この国はみんなが美味しいはちみつ入りのパイなんです、大公家による統治を絶対に維持してみせますよ」


 ……とまあそんな感じに大公閣下とは話が付きました。

 アインスという名のもう1つの台風の目を、援軍という名目でアトリエメンバー&アルブネアマッチョ精鋭軍と共に公城に派遣させたのです。

 これでやつらは一見大公閣下の首を狙うような動きをするに違いありません。



 ・



 旅の同行者はアルフレッドとウルカを選びました。

 アルフレッドは連邦国侯爵のせがれ、皇帝と話を付ける上で必要なコネ枠です。

 ウルカはついて来たがったのでお願いしました。

 いまだどこに所属しているのかわからん彼女ですが、腕は折り紙付き、こういった特殊任務も何となく得意そうな気がします。


「ありがとねレウラ、お前のおかげでまんまと敵の裏かけそうじゃん、おーよしよし♪」

「全くだな。バカ騒ぎばかり起こす主人より、差し引きで見ればよっぽど優秀だ」

「クルッ、クルゥゥ~ッ♪ プッキュゥ~~ッ!」


 俺たちはすぐにヒルデガルド連邦に飛びました。

 行きがけの駄賃にニーベル要塞前に布陣する敵軍へ、魔法の援護射撃とサンダー、アイス、フレアジェムによる爆撃をしつつです。

 それが昼過ぎのこと。そこから3時間ほどが経って今現在はというと、針葉樹林の目立つ広大でダイナミックなお国、東国ヒルデガルドの領土に深く入ってきていました。


「あれっ、珍しく反論しないじゃん?」

「フッ、さすがの貴様も罪悪感を覚えたか。やつらはお前たちを狙って攻めてきたのだからな」

「まあそうだろうね。いや別に少し考えごとしてただけだし、反論がめんどくさいだけだよ」


 公国にあるヒルデガルド大使館によると、本国との連絡がここ2日途絶えて困っていたそうです。

 そうなるとやっぱり何か怪しい、こっち側でも妙なことが起きてるとしか思えません。


「はいはい、事実にもとづいて言い合えば絶対勝てないってわかってるだけじゃん」

「うん、口論するのは勝てるときに限りたいよね」

「同意できんな。……しかしヒルデガルドが暴走したのは事実だ。このままでは、俺は大公閣下に顔向けできん。挽回のチャンスを与えてくれただけでもありがたいと思っている」


 アルフレッドが1人でシリアス入りかけてるので、ここで少し解説します。

 東の超大国ヒルデガルド連邦がポロン公国の国境ニーベル要塞に攻めてきました。

 だけどまだ大丈夫、ニーベル要塞は超絶堅固、かつ天然の要害、大軍勢が通るには細い渓谷を経由してやっとこさたどり着ける場所です。

 その渓谷そのものを丸ごと要塞で塞いだ場所、それがオールオールムとマハカーラの伝説残るニーベル要塞なのです。


 そこへとさらに安心要素を追加します。

 エルフ諸々のフレスベル自治国と、西の連合国からの援軍が来ます。

 両国からしても、ポロン公国が侵略される事態は避けたい。そこには当然ながら古い盟約や、連合国が元々ヒルデガルドから独立した歴史背景があったりします。


 ま、とにかくしばらくもつんです。

 でも長引くと超まずい。戦いの主戦場となる公国の荒廃は避けられません。アルブネア新領も台無しのグッチャグチャになります。

 そうです、そうなると金儲けとはいかなくなるのです。むしろボランティアをいっぱいしなくてはならなくなる……。

 ああ考えるだけでもう、つらい……。


 まあ国が陥落すれば、俺とアインスさんは地の果てまでもやつらに追われることになるんですけど。

 だから実は、これちょっと商売どころか尻に火が付いてる状況だったり……。


 でもね、大軍を正面からバカ正直に撃退するとか俺のやり方じゃないんですよ。

 そもとも今は力衰えてそれどころじゃないし。よってこうなったんです。帝都に行って、皇帝陛下と話を付けよう。


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