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40-06 じゃあ再会といこうかお姉さん

「は、離せッ、このっこのっ……イヤだって言ってるだろバカッ!!」

「まあまあまあまあまあ、そんなこと言わないではいこっちだよ~」


 ダークにしてハーフで黒髪超美人を引っ張って歩きました。

 なんかメッチャ文句とか飛んで来てるけど約束はちゃんと履行してもらいます。


「約束が違うッ、保留にさせてくれって言っただろッ! それに職人街までお前を護衛する約束で俺は……ッ」

「うん、保留にするのを待ったよ。よしじゃあ今から3秒待とう、3、2、1、0。さあ約束を果たしてもらおうかエイルベルさん」


 ちなみに天下の公道です。

 ここまで上手く騙し込みましたので、あそこの角を曲がった先がうちのアトリエなのです。

 あ、ちなみにルルド教の正体こと三賢者さんとは話を付けました。


「俺の意思が入ってないぞ……ッ?! ど、どれだけお前ッ、強引なやつなんだ……ッ!」

「俺そんなに強引かな? あんまり自覚ないんだけど。むしろ俺がたまのボランティアをする気になっただけでもありがたいことだよ、これかなりレアな行動だから」


 どっちにしろ古なる者は破壊しなければ、結局2度目の絶滅の引き金になっちゃいます。

 それに俺が勝った場合の最悪の未来も、錬金術の力で回避してみせる。だからしばらく見守ってね、と。


「なら今すぐそんな気まぐれは止めてっ……や、やだ、怖いッ……」

「あーそれ無理、気まぐれは気まぐれゆえに変更不可能なんですよ」


 彼らはAI、人を導くのが役割です。

 だから俺の決断に文句を言うことはありませんでした。そういった意味では、極めて無責任なシステムです。

 しかしそれにひとたび強制力を持たせてしまうと、生命の輪と大差ない悪夢の遺産となり果てる。……三賢者を残した古代人はきっとそう考えたんでしょう。


「つーか往生際が悪いな、三賢者さんからもお告げが下っただろ、リィンベルと仲直りしろってさ。それも未来を変える結果になるかもしれないって」

「だ、だからって……い、今すぐだなんて聞いてないッ、早すぎるッ……心の準備が……待って、待って、お願いまってダメ……ッッ」


「そんなの待ってたらいつまで経っても仲直りなんて出来るわけないじゃん。ほら俺が取り持ってあげるって言ってんだから、暴れんなよ……」

「余計なお世話だッ……! 離せ離せ離せっ、や、やめてくれっ、お願いだから止めてくれよぉーッッ!!」


 しっかしこれ重労働です……。

 俺さ、今弱ってるんだからさ、ああでもお嬢の前に引き出さないとなコレ。お嬢の友達なら俺の友達です。なかなかキャラが立ってて良いしね。


「大丈夫、お嬢は聖人的にやさしいから許してくれるよ。喧嘩別れしたのも、すっげぇ後悔してたみたいだし?」

「でも、でもあれは俺が悪いんだ……なのに、今さらどのつら下げて会えば……ッ」


「はい到着」

「う、うわぁぁぁーッッ?!」


 あー疲れた……。

 錬金術師のアトリエ前に戻った頃にはもう夕方、お嬢は帰ってるかなー。


「お、俺は入らないぞ……!!」

「まあまあ」


 まるで予防接種を察知したワンコみたいです。

 いくら綺麗な手を引っ張っても、エイルベルさんは意地でもそこを動きませんでした。

 いやちょっと、こっちは腕輪のせいで弱体化してんだから大人しく諦めてよ。重労働だよ重労働。


「ほら入るよー、つらいのは最初だけだから我慢しようねー」

「い、イヤだッッ、怖いッッ、会いたくないッッ!! 俺が悪いんだっ俺が悪いんだっ、あの頃みたいにまた、また拒絶された俺は……ッッ!!」


「も~~うるさいな、いいから会っていきなよっ、いつまでも周りをチョロチョロされたらこっちだって隠れて悪事働きにくいじゃんっ!! さっさと仲直りしてから帰りなよっ、こっちだって譲んないからね!」


 エイルベルお姉さんは公道にしがみついてでも動こうとしませんでした。

 だからこうなる、引っ張って、抵抗されて、引っ張って、抵抗されて、果て無き大騒ぎが続くの。

 ま、それ、ようやく終わってくれるみたいですけど。


「アレクッッ、店の軒先でなにやってんのよーっっ!! 見損なったわっ、女性を家に連れ込もうとするなんてそれじゃ、路地裏のチンピラと変わらな――え」

「ぁ、ぁぁ……リィン……」


 こうしてリィンベルとエイルベルが再会しました。

 いやぁ良いことしたなぁ俺、明日は筋肉痛かな……。

 エイルベルさんの手を離し、俺は邪魔にならない隅っこに引っ込みました。

 ここまで運んだ功労者ですし? ちゃんと見物は続けますけど。


「エイル……?」

「ぅ……ぅぁ……。こんなに変わったのに、俺のことがわかるの……? リィン……」


 引かれ合うお嬢とエイルベル。手と手を取り見つめ合い、お互いの今の姿を交互に確認していました。

 目元に涙とか2人して浮かべてんの。


「当たり前よっ、あなたのこと忘れるわけないじゃない! もう……もう心配したんだからっ! 里から突然いなくなって……きっとあたしのせいで……。ごめんっ、ごめんねエイルッ! 信じてあげられなくてごめん……ごめんねッ!」


 細かい事情の方はよくわからんです。

 とにかくハッピーエンドっぽい。やっぱりお互いに気負い合って会えないだけで、本当は仲直りしたかったみたいです。


「違う……それは違うんだ……。俺が悪いんだ……俺が……父さんの、人間の言葉になんか耳を傾けたから……。あれがリィンのお母さんの形見だなんて……ごめんリィン……」

「そんなのもういいのよっ、ああよかったエイル! ああ、本当に……また会えて嬉しい、エイル、エイル……ッ」


 手だけでは飽きたらず、大胆にもお嬢の方からエイルベルお姉さんを抱き寄せ――じゃなくて体格差の都合から子供みたいに抱きつきました。

 おーうガールズラヴ、はー疲れた疲れた夕飯まで寝よう。

 もう飽きたので2人を捨てて俺はアトリエに入りました。


「おわっ、わっわっ、グギャッッ?!」


 入ろうとしました……。

 ところがどっこい、急に下半身の感覚がふわっとしたかと思ったら前のめりに玄関にダイビングキッスしてました。

 しかし、痛みすらないときます。


「あっ、アレクッ!?」


 申し訳ないエイルベルさん、お嬢が驚いて倒れた俺に飛びついてきました。

 あれ、おかしいな、舌が動かない……。


「お、俺のせいだ……。腕輪を付けてるのに……無茶させたから……ごめんリィン……ごめんっ」

「腕輪……? 最近のアレクの不調って、やっぱりこの腕輪が原因なの……? ちょっとアレクッ、どういうことよっ! ねえエイルッ、親友なら教えて! これはなによ?!」


 待て、それ極秘、身内にだってバレるとめんどくせーやつだからダメだってエイルベルっ。

 ああクソ、舌どころから全身動かねーや、ところどころポンコツだね俺、っておちゃらけてる場合じゃないや!


「そ、それは……それはでも……」

「もう1度言うわ、教えてエイル。仲直りの証として、お願い、教えて……っ!」


 あ、こりゃダメですね。

 仲直りの証にエイルベルさんが逆らえるはずがありませんでした。

 それを手にすれば彼女に刻まれた後悔が1つ安らぐのですから。


「それは……それは魔王の腕輪……。キア以降の魔王発生のトリガーともなった……禁断の古代遺物……。そいつは……もう魔王になりかけてる……もう誰にも止められないんだ……」


 あーあ。力だけ示して、後で博士キャラ的にネタ明かしするつもりだったのにな……。

 下手こいた、ってやつだこれ……。


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