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39-7-1 問題不出の口伝 魔王キアの真実と生命の輪

「……結構でございます、やはり貴方こそ彼の望んだ継承者に間違いございません。さ、ならばこちらへどうぞお同伴下さいませ。ヒ、ヒ、ヒ……今日は良き日でございます」


 食堂を離れて遺跡内部を案内してもらうことになった。

 そうだ、ここは遺跡なんだそうだ。機能の生きている遺跡、素晴らしい、SFですSF! 今俺はSFワールドにいます! やったー!


「兄様、おかしなところがあったら突っぱねて下さいね? アトゥも学園長の人柄は存じておりますが、今回ばかりは世界を敵にしかねないかと……」

「はいはい、でももう着いたっぽいよ」

「はい、どうぞこちらへ……ヒヒッ……」


 学園長が1枚の金属片をかざしました。

 すると目の前の大きな扉が左右に開かれて、さらなる未来世界とのご対面です。

 そこは広いとは言えないものの装置という装置に囲まれた、端末室とでも呼べる場所でした。ちなみに中央なんかには操作端末らしきものがあります。


「データベースルームでございます。ここに、貴方に見せなければならないものがございます。……アレクサントくん、わたくしはここに来て、多くのことを知り得ました。これまでの研究、憶測に、裏付けとなる答えを得ると同時に、一族に残された口伝が真実であったと、それを守り続けた誇りを取り戻すことにもなりました」

「何ですかここは……兄様、アトゥから離れないで下さいね……」


 学園長が興奮するほどアクアトゥスが怯えます。

 そりゃそうでしょうとも。俺だって情景が未来過ぎてビビってるんだもん。なにここー、スマホとか出したら骨董品扱いされそー。


「まずは最も大切な話から始めるといたましょう。わたくしたちはこの日の為に伝説を語り継いで来たのでございます。ええ、きっとそうに違いありません」

「わかった、よくわかんない重荷なんてさらさら背負う気なんてないけど、話だけは聞いておくよ学園長」


 むしろ聞きたい。ここは何なんだ。魔王キアってなんだ? まさか俺と同じ日本人なのか?


「むか~しむかし、ここではない別の世界……地球と呼ばれる世界に……キルケゴール・アダムという男がおりました」


 こいつぁーたまげた、地球ですってよ奥さん。


「キルケゴールの世界は、我々の世界ではとても考えられない、極めて、高度な文明を築いておりました。しかしその代償として、世界は滅びかけ、人々は生き延びるために、堅い協調を結ぶために……とあるシステムを作り出したのでございます」


 そりゃ悲惨です、いかにもSFです。

 まあ未来世界なんて滅びるのが相場ってもんです、お話の世界では。


「それが、人類意思統合システム・生命の輪(リヴィエラ)と呼ばれるものでございました。人は、群れに属しながらも群れを裏切る不完全な半群体生物です。それを、1つの形に統合して、矛盾や不条理を正すと同時に、団結した群れによる大きな力を得るためのものでございました」


 未来世界のシステムを解説しながら学園長がコンソールに手を伸ばしました。

 慣れた操作でそれを動かしてゆくと、部屋中央にある立体映像が浮かび上がります。

 で、悪いんですけどね、その映像ってやつが……さすがの俺も軽くは受け止められないものだったんですよ。


 そこに衛星写真が映ったんです。見間違えてしまうほど茶色く、砂漠化が進行した星、地球の姿が……。


「ところがでございます。やはり、人は1つになどなれませんでした。リヴィエラのもたらす奇跡の団結力は、やがてそれを用いない国々を追いつめていったのでございます。……そこで現れてしまったのが、リヴィエラのカスタマイズ・コピー・システム……複製品でございました」


 こりゃじきに滅ぶな。

 その衛星写真を見ればすぐにわかりました。

 どうもこうもないほとんど詰んだにも等しい緑無き世界、しかしそこに俺のよく知るユーラシア大陸が映ってしまっている。


「バカな話だね、最初からそうなるとわかってたでしょ」

「そうでございますな……だが、実際に起こしてしまうのが、人間の群れとしての愚かしさでございましょう……。人類意思統合システムリヴィエラと、その無数のコピーシステム亜種たちは争いを始めました」


 学園長がコンソールを操作しました。

 するとモニターの映像が、よく見れば地表の一部がえぐれ消し飛んだものに切り替わっていきました。それと北と南が白く染まっている。


「向こう側の時間でたった5年のことだったそうです。日照率が3割下がり、それが深刻な寒冷化、向こうの言葉で呼ぶ氷河期を招きました。ええ、こうなっては向こうの人類もおしまいでございましょう……」

「人の力で、こんなことが起こり得るのですか……何て恐ろしい……。兄様……」


 アクアトゥスさんが小さく震えました。

 しょうがないからその背を心持ちやさしく抱いて、俺は立体映像に目を向け続けました。


「しかし人類の中から、人類意思統合システム・リヴィエラの支配から運良く逃れる者たちが現れました。己を支配するシステムが戦争により物理的に破壊され、結果的に自由を得ることになったそうです。……魔王キア、いいえ、我らが始祖キルケゴール・アダムもその1人でございました」


 日本人かと思ってたらキアさん外人さんでした。

 しかも哲学者みたいなカッコイイ名前してんの。まあ日本人よか魔王として映えるお名前ね。


「あの、学園長……少しいいですか? さっきから聞いておりましたが、わからないことだらですが、何となく1つだけ、この私にもわかることがあります……」

「はい。それではあの頃のように、アクアトゥスくん、貴方の質問をどうぞ、この学園長イアン・シュパルツァに投げかけて下さいませ」


 アクアトゥスさんは何かに気づいたようです。

 でもごめん、マイペースで勝手な俺だけどさすがに頭いっぱい、あーはい滅んでましたか人類……。ちょっとショックかもしれん……。


「人類意思統合システム・リヴィエラ……。それはまるで――あのアインスを理不尽に呪った、あの――」

「……フ、フフッ、ヒヒッ、ご名答にございます。あのエルフの天敵、古なる者の正体こそ、生命の輪(リヴィエラ)。キアは、この星、地球生まれの古代人なのでございますよ。ヒ、ヒ、ヒ……貴方も好奇心が抑えられませんでしょうアレクサントくん。キアは、貴方と同じ世界から来た人間なのでございますよ!」


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