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38-5 急浮上! 崇めよドロポーン、生めよドロポーン! 1/2

 先日はもう大変でした……。

 あのあと領館に戻るなり、マナ先生は伝説を創作して元気に帰っていきました。

 どうしても今日中に仕上げなきゃいけないとか、なんとか、聞いちゃいけないインスピレーションの輝きと共に……。


 俺、迷宮探索は慣れてるけど山は専門外です。疲れました。予定を変えて今日はベッドでゴロゴロして過ごすことに決まっていました。

 気づいたら夕方、気づいたらもう深夜、休みと決めたのにそれっぽいこと何もしてないことに気づきました。


「うへぇぇ……いてて……何度も悪いねアクアトゥスさん、でも薬はやさしくね、やさしく……あたたっ?!」

「痛かったら言って下さいね、兄様……」


「今! 今痛い! 言うの遅いよ!」

「我慢されて下さい……」


 擦り傷にヒルやダニの刺し噛み傷で手足がひどいありさまです。

 そこへアクアトゥスさんがお手製お薬とやらを塗ってくれていました。

 しみるし、なんかヒリヒリするんだけどこの薬……?


「お疲れさま、さすがはマナ先生ね。今朝遅れて確認したけど、いかにもそれらしい伝説にまとまってるわ」

「意外とあのひと新興宗教の教祖とか向いてたりしてね、思い込み激しいし、独自解釈も物凄いし、実際なんか降りてる気がし……あいたっ?!」


 迷宮余裕しゃくしゃくの俺がなんでこんな傷、こんなことで負っちゃってるんでしょう。

 答え。山を舐めちゃならねぇってことです。管理されてない山は、それそのものがバットステータスを呼ぶ特殊地形、その塊なのですよ!! 俺痛感した!!


「特にこの慈母神ドゥルコーンというのがとても良いわ! あっちの飾り付けはもっともっと気合いを入れなきゃいけないわね!」

「同意いたします……。あの光の粒子を生むキューブを、私が見よう見まねで追加生産しておきます……。黄色のものがいいでしょうかリィンベル」


「そうね! それとみんなで作った花輪で、あの巨大クリスタルドロポンを飾りましょ!」

「はいいいですね……なら他のみんなにも呼びかけないといけません……!」


 アトゥとお嬢の間で話が盛り上がっています。

 手と手を取り合って、お嬢なんてピョンピョン跳ねて喜んでいました。


「ところで兄様、他に痛いところはございませんか……?」

「うん、腰痛ぁい……いやマジ大変だった、山舐めてたよ俺……道がない、一歩先が崖、正体不明の変な虫とか出てくるし……ってはい?」


 するとアトゥがあり得ない場所に手をかけました。

 え、腰ってそこだっけ? いや微妙に位置違くなーい?


「前の腰ですね……はい、わかりました……。アトゥはもう覚悟が決まりました、兄様がそう言われるなら……とても、とても恥ずかしいですが……お役目です……」

「違うって! いやなんでローブまくり上げようとしてるしっ?! 落ち着け、アクアトゥスさん落ち着けっ、お嬢が見てるよーっ?!」

「ひゃぁぁーっ?! あ、あああたしの前に、へ、変なもの出そうとしないでよーっ!!」


 とか言いながらお嬢は顔を隠すんですが、指と指の隙間からこっちをめっちゃガン見しているという。なんとお約束に忠実な娘さんなのでしょうか。

 いや冷静に状況を解説してる場合じゃないんでした。


「あーあーあーー、そう、そういえば話強引に、不自然に戻すけど! ほら、ドロポンってさ! 最初どうやっても上手く作れなかったんだよね! クレイゴーレム作ろうとしたんだけど、どの土やってもダメでさー!」

「はい、存じております兄様。それで確か……アトリエ裏庭の土を使われたそうですね……」


 やりました、アクアトゥスさんの手が止まりました。

 そうなのです。どんな良さげな土を見繕っても失敗、その結果がアトリエの土で今のドロポンなのです。


「そうよ! あ、そう考えたらあの子って……本当に地母神ドゥルコーンなのかもしれないわ!」

「きっとそうです、素敵です……さすが私たちのドロポンですねリィンベル」


「いや飛躍し過ぎ」

「でもそうだったらロマンチックですよ兄様……。兄様に……神様が力を貸して下さってるということに……なるのですから……」


 ダメだ、理屈が通じない。

 ドロポンがクレイゴーレムとかそんな枠組みを吹っ飛ばした大活躍をしているのは確かだけど、持ち上げ過ぎ。


「神様とかうさんくさいし苦手なんだけどな……。古なる者といい、ろくなことしない連中ばっかじゃん。ま、逆に言えば無害だったら神様としてあつかってもらえないのかもね」

「兄様……アトゥにとって……兄様は神同然の存在ですよ……? 覚えておいでですか……? 兄様が……ベッドから立ち上がることもできない私を……奇跡を起こして治して下さったことを……」


 そんなこともあったっけ。

 あの弱々しく、俺という部外者に怯えていた少女がこんなにも元気いっぱいに成長してくれたことに感激です。でも。


「ごめん覚えてないよ」

「嘘です……」


「嘘じゃないって。ホント覚えてない、な~~んにも覚えてないよごめん」

「でも……。でも知っておいでですか兄様……兄様は嘘を吐くとき、唇を急に引っ込める癖があるんですよ……」


 いやそんなわけないじゃん。

 手で口を確認してみたけど引っ込んでません。つまり嘘はバレちゃいな……あ、あれ?


「あーあ、バカね……」

「はい……こうもあっさり引っかかるとは……ごめんなさい兄様……」


 あ、これ古典的な誘導尋問じゃないですか……。

 嘘を吐いてる自覚があるからこそ触れたのだ!! とか追求されるテンプレ。く、くぬ……。


「ですが少なくとも……嘘のご自覚があるようですね……」

「そうなるわね。ん……つまり、アレクはもう昔アクアトゥスと一緒にいた頃のことを、完全に思い出してるってことかしら。ふーん、それなのに忘れてるふりをしてるのね……」


 止めろぉ……止めろ鋭いぞ名探偵リィンベル……。

 そうだけど今この状況でアトゥに完全に悟られるのは超まずいんですってば!


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