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36-22 叔父様と一緒! 耽美なるイケメンダークエルフとの誰得ひとっ風呂! 2/2

「どこだ?」

「あそこあそこ、ほらあの鷹みたいな……。あれ……?」

「キュェェーッッ♪」


 夜空を指さしたらほんとに飛んでました。

 レウラが急降下で文字通り降ってきます。

 バシャーンッッッと水しぶきを高々と立てて、かけ湯もせず外でやんちゃしてきたであろうきったない体を湯船に沈められました。


「よく気づいたな。これも君と竜の宿命のなせる技か。レウラよよく来たな、歓迎しよう」

「ただの飼い主と主人です。つかお前、なにしに来たし……」


 空気読まない、迷惑考えないこの勝手っぷり、そういうやつですコイツ。

 これ口に出すとペットは飼い主に似るんだからしょうがない、レウラは悪い子じゃないです、とか言われるんだけど。


「どうしだ、俺のことが気に入ったのか? フッ……白き美しき子竜よ、それは光栄の極みだ」

「キュゥ~、プキュッ~♪」


 ヤツの入浴は一瞬、目を向ければもうアストラコンさんの腕に止まっています。

 スリスリと竜頭をアストラコンさんの青白い肌にすり付けていました。


「まさかお前、わざわざ挨拶しにきたのか……? ん……なんだありゃ、なんか変なの浮いて……」


 ところで湯船になんか浮いてました。

 レウラが持ってきたんでしょうか、白くてでかいマシュマロみたいなのが……。


「ってドロポンだれこれっ! おいっ平気かお前っ?! 溶けたりしないよなおい?!」

「おお、白いドロヌノフもいるのか! 美しい……かつてこんな神々しい泥の塊が存在しただろうか、それは否だ……」


 慌てて俺は白ドロポンを両手で囲いました。

 ところが全然余裕そう。

 ぽけーーーーーっと、気持ちよさそうにリラックスされております。


「心配させんなよ……。でもなんか平気そうだな、つかなんで浮くんだお前? どういう構造?」

「これを使え……」


「あ、こりゃども。ほーらドロポーン、アストラコンさんが器の代わりを下さったぞー。ツンツン……」


 さすが叔父様気が利きます。

 桶は適度な水かさだけ湯が入っており、その中に白ドロポンを移しました。

 温泉ドロポンの出来上がりです。つっつくといつもよりプニプニしてて気持ちいい。


「レウラの背に何かが見えたが、フッ……まさか白きドロヌノフだったとはな……やはり高い知能を有している」

「お前なにレウラとか乗りこなしてるんだよ……。やるな……やるようになったなドロポン……ただのゆるキャラではないということか」


 俺たちとレウラにのぞき込まれているというのに、ドロポンさんは動じません。

 やっぱ温泉がかなり気に入ったらしく、ずーーっとご満悦のリラックス顔でした。


「クルルッ、クルルルルッ、キュェキュェプキュルッ♪」

「わぶっ?!」


 するとレウラが至近距離で水浴びを再開しました……。

 バッシャンバッシャン湯船を翼ではたき、高速の毛づくろいならぬ鱗づくろいをされます。


「そっちで何してるのよ、レウラーッ!」

「キュェッ!」


 かと思ったらリィンベル嬢の声につられて女湯の方にぴゅーんと消えましたとさ。


「ふふふっ、いらっしゃいレウラ」

「レウラ様、本日も当湯をご利用下さりありがとうございます。おかげさまで観光客の評判も上々です」


 なにそれ初耳、どこで毎日悪さしてるのかと思ったら、なに温泉街のマスコットになろうとしてるしお前。


「あ、レウラ」

「いらっしゃい」

「いい子いい子、レウラはいい子」


 ゼルヴx3の大運動会もそれで落ち着いたっぽい。

 バシャバシャ湯船を乱す音もそれっきり聞こえなくなりました。


「キュッキュッ、プキュルルッ、キュルルッ、プキューッ♪」

「かわいい……」

「ほしい……」

「作らせよう、ほしい……」


 なんか男湯にいたときより愛想が良いし、あんまり暴れてるようにも聞こえません。

 あとすっごい今さらだけど……アイツって雄? 雌? どっちでもいいか。


「あっちょっ?! ど、どこに顔突っ込んでるのよレウラッ、ひぁっ、ひぇぁぁぁーっ?!」


 ん~~、やっぱ暫定は雄ってことにしよう。

 女の子が好きだよねレウラは。


「レウラだめ」

「レウラエッチ」

「でもリィンベルの声かわいい、大人になった」


「身体は残念だけど」


 そこは言ってやるなゼルヴちゃんたちよ……。

 育ったらお嬢はお嬢じゃないし、このままでもいいじゃない。

 8等身化した長身巨乳お嬢なんて想像しただけでコレジャナイ。そんなの完全に別ジャンルの生物です。


「向こうが気になるか?」

「え、ええまあ……うちのバカが迷惑かけてますしね。あの竜確かに優秀だけど自分勝手なんですよ」


「フッ……そうか」

「いやいやいやいや待った、今こう思ったでしょアストラコンさん。ペットは飼い主に似るものだな……フッ、とか。違いますからね、アイツは元が邪悪な竜だったのと、まだ子供だからしょうがないのと、アトリエのみんなが甘やかすからそのせい!」


 はい残念。

 言い訳長いぞ、って顔でまた冷笑されましたとさ。

 そんなに似てますかね俺ら……。


「もし……」


 ところがまたイケメンダークエルフ様が距離を詰めてきました。

 ああはい大事な話ね、彼の視線を少しの間だけ受け止めます。


「もし運良くヤツら――古なる者の居場所を突き止めたそのときは……。お前は、どうする? 我らの希望、あるいは災禍と化すやもしれぬ稀人よ……」


 何だそんな話か。

 そんなの決まりきっているので俺は笑い返しました。

 それが俺の想定以上に邪悪だったのかもしれない、アストラコンさんが片方のまゆをしかめました。


「それは最初から決まっている。……俺のオリジナル・オールオールムに代わって、部品単位と化すまでバラバラにぶっ壊す。そうして復讐代行っていうボランティアを済ましたら、その後は……俺の錬金術の材料にしてやるんだよ」


 ヤツらは1体残らず破壊する。

 オールムが俺というホムンクルスを生み出したもう1つの理由、それは、やつらに対抗するための兵器が必要だったに違いない。

 種族としての名すら忘れられた、エルフの創造主の肉体を、後継者の俺に使ったのはきっとそのためだ。


「いいだろう、返答はともかくその顔が気に入った。君がなぜそんな顔をするようになったのかがわからないが、一皮むけて美しくなったと思おう。……友よ、我が姪をめとった者よ、俺にはリィンベルには伝えていない秘密がある」


 アストラコンはドロポン入りの桶を手慰みにしていた。

 それを手放し、長い寿命の生み出す凄みを俺にまた近づけた。同時に理解した、この人はきっと、オールムの同類なのだと。


「我が妹は異父兄妹でな……俺とは役割が違った。俺は聖域の暗部を受け持ち、いくつもの汚れ仕事に手を染め……妹は商会を束ねてフレスベルに富をもたらした」


 そうか。それがキエ・アズライールの暗黒面なのだろう。

 絶対不動の為政者となったとき、そいつの価値観は王者の領域さえも飛び越える。

 エルフを守るためならばと、残酷な決断をいくらでも下せるようになってしまう。それがあの女の恐ろしさだ。


「妹は狙われたのだ。フレスベルの富を操る商会主を、己が陣営に引き入れようとやつらは考えた、そして実行した。だからな、妹は……リィンベルの母は……。呪いが己を眷属へと変えるその前に、あの子だけを残して自害したのだ……」


 救えない話だと思った。

 巨人の溶けた泉、その水を飲めば呪いに対する耐性を持てるとは聞いていた。だが無効化には遠かったのだろうか。


「俺はそれに立ち会った。俺は妹を見捨てた罪人なのだ、友よ、我が同類よ……君の瞳には俺と同じものが見える。復讐の炎が」


 俺はただの代理人、やつの妄執が生み出したもう1つのヤツ。

 ……俺たちは復讐を誓いあった。

 やはりやつらは脅威、俺もまたやつらの脅威。次は俺の大切な者に手を出してくるのも見えている。やられる前に滅ぼすしかない。

 オールムのバカの二の舞はごめんだ。絶対に。


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