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36-18 魔性の教頭、寝言のようなホントの話

「なに寝言言ってんの……それいつものアレですよ、勘違い、自意識過剰、ないないない絶対無しで、はいお話タイム終わりです」


 鏡を見るべきです。

 これがモテるわけがないでしょ。

 そんな悪趣味おじ様が何人もいるわけがないし。A.妄想 でファイナルアンサーです。


「信じてくれぇ! お、おおおおかしいのだ絶対っ! この身体は何かがおかしいっ!!」

「はいはい、そうかもしれないですね」


 何かっていうより全部なんじゃないですかねー……。

 ははは、モテ過ぎて困るって言うなら証拠を見せてほしいですよ。


「えっ、あっ?!」


 すると何か知らないおじさんがうちの裏庭にやってきました。

 教頭も芝生ごしの足音を察知したのか、ブルンッとおっぱいを180度回転させて相手の姿に驚きます。

 あーそうそう、それです、この前芝生をしきました。

 管理めんどうだけどこれで多少の見栄が張れます。商談時に舐められないためにもこれ必要です。


「ろ、ロバート様ッ!? ど、どどどどどうしてこの場所にぃぃっ?!!」


 そのおじさんに教頭は超狼狽されていました。

 ロバート・デニなんとかおじ様は、50代前後の白髪交じりの黒髪、広い広いおでこと濃い青ヒゲをお持ちでした。


「急に宿を出たと聞いて探してしまったぞっ、愛しき人よっ! おおっ、そちらの彼が例の……そう、アレクサントちゃんだね」


 彼は顔面蒼白の教頭にスキップで駆け寄って、そのごっつーい肩を抱き寄せます。

 好感度MAX、大好きピカール・ハイデルースちゃ~ん、俺の目がなかったらもっと大胆なことしてるのかもしれんスキンシップぷりです。


 てかさ、いや……いやおかしいでしょ……。

 なに……これ……冗談でしょ……冗談だって言ってよ……!


「ええまあ……そうですけどー……。誰かにちゃん付けされるのはちょっと新鮮な感覚ですよ」

「ハハハッ、俺から見れば君も子供みたいなものだ。ああそうだった、君はアルフレッドくんの家老をしているそうだね。実は君たちを公城でお見かけしたことがあるのだよ。……対・古なる者包囲網、我が国の利益に繋がる見事な策略だったぞ」


 さて……一方の教頭の状態ですが、こっちは解説したくありません……。

 恥じらいのあまり俺たちから目線を外している。とかそのへんでご容赦を……おぇっ……。


「それはどうも。せっかくのご縁です、今後ともよろしくお願いいたします。デニ……デニーロ侯爵様」

「はははっ、私はデニロウスだよ。まあ……ピカールちゃんとは下の名前で呼び合っている仲だがね。……ねぇ~、ピカールちゃぁーん♪」


 デニなんとかロバート様は教頭の肩を離しませんでした。

 イチャイチャと教頭の顔をのぞき込み、あれそれ言う相手間違ってませんか? ってくらい甘ったるい言葉をさえずるのでした……。


「ろ、ロバート様……生徒の前です、止めて下さい……」

「恥ずかしがることないじゃないかピカールちゃん、若い者にもっと見せつけてやったらどうだ……?」


 いえ! それだけは絶対お断りします!

 つーか教頭のセリフとは思えない妙なしおらしさでした。

 まあでもよく考えてみたら納得でもあります。だって教頭ってわっかりやすいくらいの権威主義なんですもん。

 相手が侯爵様ともなれば、いつもの強気に出れないのも必然です。


 ああでも、なるほど、見えてきました。

 確かにモテてます。いや……こうして見せつけられてもいまだに信じがたいですけど……。なぜか本当にモテている……。


「ぁ……アレクサント様……少し、よろしいですか……?」

「いやなにその呼び方、なにさ教頭?」


 ロバート様に失礼がないように抱擁を引きはがしてから、教頭が俺の耳元にやって来ました。

 そんで青ざめた顔で言うのです。


「助けろ……いいから私を助けろ……わかっただろうこういうことだ……っ。私は、断じてホモではないっ……そりゃぁ、生徒たちの熱い視線が正直気持ち良過ぎてアホになっていたのは認めるが……っ! 私はデニロウス殿の好意に困り果てているのだ……! 助けろ……助けろっ、助けろォォォォアレクサントォォォォ……」


 助けろとか言われてもね。

 俺にそんな権力無いしごめん無理~。

 ついでにフッとか冷笑を教頭に向けてやりました。


「あの薬まだ持ってるんでしょ、あれをこの場で飲めばいいんですよ。そしたら教頭先生は元通りのおじさんに戻る」

「ぬぐっ……そ、それはそうだが……ッッ!」


 アホなことに付き合わされました……。

 もう触れずにそっとしておきましょう、俺には関係ない話です。


「……ところでアレクサントちゃん」

「はい、何ですかデニ……デニーロ侯爵様」


「デニロウスだよ。……ところで、俺から愛しきピカールちゃんを奪おうとしたやからがどうなったのか、聞きたくはないかね?」

「はい、聞きたくないです。……じゃなくてどうなったんでしょうね」


 聞きたくないけど聞いてやることにしました。

 一応お偉いさんですし、当たりさわりなくいきましょう。


「俺は愛しき者を守るためなら手段を選ばない……。まあ、詳しくは言えないのだが、今頃は……ははは、豚の餌になっている頃だろうな」


 そこでビクッと教頭先生が震えました。

 これまた濃い愛をお持ちで、デニーロ様。


「ああ何があったか知りたいだろう? ある汚い悪漢にピカールちゃんが襲われそうになっていてね! そこに颯爽と俺が現れた! 俺たちが運命の出会いを果たしたのだよ……ねぇ、ピカールちゃーん♪」

「は、はい……ロバート様……」


 あれ、てかもしかしてだけどさ俺、今デニーロに牽制されてたりする?

 あーー、だとしたらとばっちりコースじゃんこれ……あーー、もうしょうがないな……。


「デニーロ侯爵様、あの~、夢を壊すようでなんですけどね、ピカール教頭は、男です。アカシャの家の者に聞けば誰もがそう答えるでしょう、教頭は、男、です」

「あ、アレクサントォォッッ?!! 貴様ッ貴様それは……ッ」

「はははははははーっ、こんな美しい男がどこにいるというのだね! ああこれほどまでに女性的な人はピカールちゃん以外にありえない……冗談はよしてくれたまえ」


 アホらしい……説明するのもアホらしいです……。

 おっぱいしか見えてないんじゃねこの人……どこが美しいのかこっちが説明してほしいくらいです!


「いえ、俺の作った薬のせいなんですよ。この人ね、勝手に人の作った薬を飲みやがりましてね……で、それのせいでこのとおり女になっちゃったんです。……まさか年輩男性にモテまくるだなんて効果予想してませんでしたけど」

「ふむ……。仮にその話を信じるなら、アレクサントちゃんは俺の恩人ではないかね? この奇跡の女性を生み出してくれたその人というわけではないか」


 わからん……何がいいのかまるでわからん……。

 歳とると俺もこうなるの? いいやだけど教頭だけはないわ。


「そうですねー。でも正直、俺はこういうのはあんまり……あんまりってうか、スイーツで言うところの毒柿ポジション? そういうのは無理無理、うちには人外含めてもっともっとかわいい子たちいっぱいだし、まー要するに……、こんなのー、ご安心下さい、俺の守備範囲外ですッッ」


 野球で言えばストレート投げたらバッター手前で投球が急速反転してホームランみたいなー……。

 もうストライクでもボールでもアウトでもなく、場外ホームランです。打球がもう2度と帰ってこなくてもいいやつ。


「本当かねぇ~? ならばアレクサントちゃん……よく見ていたまえ」

「あ、あんっ♪ そんなロバート様っ、生徒の前ですっ、は、はわぁっ……触っちゃダメぇ……」


 悪趣味でエッチで独占欲の強いおじ様が、またアレを抱き寄せて以下自主規制しました。

 こんなの説明したくないよ! 誰も聞きたくないに決まってるよ!


「はぁはぁ……あっああーんっ、ダメってばぁぁロバート様ぁぁぁぁ……ッ」


 それは俺への挑発です。俺の反応を確かめているのです。

 ああもう止めてくれ、こんなの見たくない、見たくないのについ……つい見ちゃ……ああああああああああああああ……!!

 めっちゃ……めっちゃバインバインに揉みしだかれてるぅぅぅぅ……。


「う、うぶっ……おげっ……。すみませんデニロウス侯爵様……俺、何か気分悪くなってきたんで……このへんで失礼しますね……。ぜぇぜぇ……おかしい、酸素薄いなぁここぉ……」


 もう無理、ダメ、すごくつらい……。

 俺は芝生に膝を突き、視覚情報に汚染された我が脳を抱え込みました。

 初めてグロ画像をみたその瞬間よりキツいんですけどー……。


「ふむ……若い者にはわからんかね。ピカールちゃんの魅力がわからないとは……フフフ、若さとは罪だね。疑ってすまなかったアレクサントちゃん。さ、宿に帰ろうかピカールちゃん」

「で、デニーロ様待って……。お、おいっアレクサントォォーッ! 貴様ッ、貴様私を見捨てる気じゃないだろうなッ?! おいっ返事しろっどうにしろっ、おい貴様ァァァァァーッッ!!」


 そういや教頭は助けを求めてここに来たんだっけ。

 デニーロ様の前で素をさらけだし、上から目線で助けを懇願されました。

 はぁ……変なもの見せられたわ……。

 仕事戻ろう……みんなも待ってるだろうし……。


 ……ていうかあいつらさ、俺を見捨てたくさくない?

 遠くからこの騒ぎ見守ってくれててもいいのに、陰も形もないよ?


「アレクサント貴様ァァァーッッ!! この恩知らずめっ、覚えていろォォーッッ!!」

「いやさ、だから男に戻るあの薬飲めばいいじゃん……それで全部解決だってば……知らんよそんなの……」


 しかし教頭は断固として、あの性転換薬をその後も飲もうとはしてくれないのでした。

 あーはいそうですか、じゃあもうデニーロの愛人として仲良くしっぽりやってけば良いんじゃないの……。


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