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36-7 土産物を作ろう――とはしたんですよ…… 2/2

「ああああー……超疲れたわー……。はい出来たよー、もうリテイクとか踊り食いとかは拒否するからねー……」

「ああ、凄いです……。かわいい、ドロポンが、かわいい上に美味しく、すごいですご主人様、ありがとうございます!」


 すったもんだの果てに動かないドロポングミが完成しました。

 造形も満足の域だったみたいでみんなが納得してくれていました。

 はぁぁ……もうお腹いっぱい……。


「じゃあ次ね。ドロポン・キーホルダーだっけ。キャラクター部分は錬金術で作ってみるから、チェーンやらの金属パーツはダリルにお願いしよう。組み立ては領民に仕事として振れば経済も回るし」

「先輩、一応釘さしておくっス。タコとか動くやつの2度目は許さないっスよ、アインスの気持ち的に」


 そう言われても困ります。

 なんで動いちゃったのか自分でもわかんないんですから。


「信じてます、ご主人様なら大丈夫。ドロポンの愛する、ご主人様ですから……ね、ドロポン」

「クスクス……これで絶対失敗出来ない流れになったね~♪」


 アインスさんが合体ドロポンを撫で撫でして同意を求めました。

 するとドロポンもぷるぷると身を震わせて、アインスに向けてジェリーボディを擦り付けていました。


「じゃ、いくよ。材料は……あって良かったスライム汁」

「そんな変なの使って平気なんっスか……」


 大丈夫大丈夫、あとはイメージを固めてグルグル~のポンッです。

 塩化ビニール的なドロポン人形、半透明でかわいいやつ。ドロポン見つめながら調合を完成させました。

 ちょいゴム臭い蒸気と共に、錬金釜の中にはドロポンキーホルダーの人形部分がギッシリです。


「どう? わりと良作だと思うんだけど」

「わぁ……ドロポンが、たくさん、はぁぁぁ……すごい、すごい、ですっ……」


 釜から人形を3つくらい拾い上げてアインスさんに手渡しました。

 そしたら彼女はそれを夢中で抱え込んで、焦点合うんだろうかってくらい至近距離で人形を愛で始めます。

 他の連中もそれに釣られて釜からドロポン人形っていうオモチャを我が手に運んでいきました。


「さすがアトゥ自慢の兄様です! 良いですねっ、このやわらかくて半透明な不思議な素材……。少し臭いがしますがマニアよだれものの造形ですっ!」

「うはっ、ボクもガラにもなく顔ニヤケちゃうんだけど。良い出来じゃん、当然貰ってもいいよねこれっ」

「先輩はやれば出来る子っス、これは子供とか喜ぶっスよ! 自分も貰っとくっス、これとこれとこれをっス」


 みんなご満悦でした。

 どいつもこいつもドロポン塩ビ風人形を抱えて愛で込んでいます。

 半透明のジェリーカラーやチョコレート色は魅惑的で、やわらかい質感も女性受けするらしいです。


「何かぷるぷるしてんな、ドロポンご本人の方が。もしかして恥ずかしいのか?」


 それと自分そっくりの人形をみんなに愛されて、ドロポンさんってばそりゃ恥ずかしそうに、変な話だけど頬染めていました。

 どういう原理で赤くなるのかなんて知るわけありません。

 とにかく俺の方は連続で慣れないことさせられて疲れました。ソファーに腰を下ろしてだらしなく休憩することにします。


「はぁ……疲れた……。腹の中がまだ踊ってる気がするような……。げぷっ……」

 

 ところがそれを不機嫌に見つめる者がいたのです。

 ええ、お察しの通りレウラです。

 そのレウラが何の気まぐれか、どこからか飛来して俺の膝の上に乗っかりました。


「お帰りレウラ。ってか、何度も言うけどさ、重いってばお前……」

「クルルッ、クルルルルッ、キュルルルルルルゥゥーッ!」


 で、そのレウラがしきりに鳴きだして自己主張するのです。何言ってるのかわかんねー。


「ああ、もしかしてドロポングミが食べたいのか? しょうがないやつだな、よく考えたら動くアレもお前に食わせれば良かったんじゃん……ほれっ」


 重たぁぃ……レウラを抱き上げて、俺はテーブルから動かない方のドロポングミを取りました。

 それで胸の中のレウラにグミを差し出してやったのです。


「……へ」


 ところが口先でグミを受け止めて、珍しく上品に食べるのかと思ったらぽいっと床に投げ捨てるんですよ。

 あの食い意地はったレウラがです。


「クルルッ!」

「お、お前がグミを捨てただと……。あ、もしかしてお前、あー、嫉妬してんのか?」


 試しにまたグミをもう1つ取ってレウラに食べさせようとしてみました。


「ほーらドロポンだぞー。お前より働き者でかわいい子だぞー、ほら食え食え~」

「ギェッッ!」


「おわっ?!」


 今度は違いました、がぶりとドロポングミに食らいつきます。

 自分で落としたやつにも飛びついて腹におさめ、それからテーブルの上に舞い上がります。っておい、まさかアイツ……!


「レウラお前待てこらっ! ああああーっっ?!」

「げぷ~……キェーッ!」


 慌ててテーブルに飛びついた頃にはもう遅かったです。

 皿いっぱいに盛られていたグミが、綺麗さっぱり消えるマジックショー。

 食ってやったぜと言わんばかりに、レウラが胸と高い鳴き声を俺に向けていました……。


「きゃははっこれ嫉妬だね~」

「レウラ、ごめんなさい、レウラのことも、みんな大好きですから」

「兄様が酷いこと言うからですよ」


 ホムンクルスとしちゃプライド高過ぎですコイツ。

 慰めるようにアインスがテーブルの上のレウラを撫でると、あいつ酷いんだよぉ~とキュルキュル彼女に泣きついていました。


「ならレウラ人形と、お菓子も作ってあげたらどうっスか?」

「あっ! なら人形はこのもちもちの材質ではなくっ、ちゃんとした綿の入った布人形が良いと思います兄様! 前々から欲しいと思ってたんですよ私!」

「良いっスね~。自分もそれ欲しくなってきたっス」

「名案です、すごく、私も良いと思います。作りましょう、ぜひ、お願いしますご主人様!」


 レウラもみんなも一気にご機嫌です。

 レウラの布人形良いじゃないと、満場一致でこちらを見つめてきました。


「えーー、コイツなにもしてなくない? むしろ邪魔ばかりされた記憶あるんだけど。基本食い意地に素直に行動してただけじゃん?」

「せんせーついにボケたの? フレスベルまでせんせーたち連れてってくれたの、ついこの前じゃん。1泊2日の高速海外遠征だよ? どう考えたって貢献してるよね、ね~レウラ♪」


 そう言われると……。

 まあ徒歩で往復したら超大変だったのは認めます。

 けどさ、レウラの食費分で帳消しどころか赤字なんですけどそこ……。


「兄様ッ」

「先輩っ、頼むっス!」

「アインスとアトゥがお願いしてるのに断るのー? よ~く考えてからもう1度答えなよ」

「キェッ……!」


 レウラが合体ドロポンの上に飛び乗って、自己主張するように天に向けて鳴きました。

 ……本人がここまで言うならしょうがない。


「脅すなよなお前……。しょうがないから作ってやるよレウラ。お前へそ曲げると何しでかすかわからないからなー……」

「クスクスッ、じゃあ飼い主と同じじゃん」

「キェーッ、キェーキェーーッ♪」


 その飼い主の元にレウラが飛び込んできました。

 重たい体当たりを受け止めて、俺が痛い尻餅をついたのは言うまでもない。

 でかいなりに変身出来るけど、中身はきっとまだまだ子供なんでしょう。そう考えるとかわいい気もしないでもない。


「良かったですねレウラ。ふふ、こんなに嬉しそうなレウラ、久しぶりに見ます」

「見ていて羨ましいっス」

「はいっ、アトゥも二重の意味で羨ましいです! 兄様、アトゥもレウラに嫉妬ですよ嫉妬」

「代わりにボクが抱きしめてあげるよ~ボクのアトゥ!」


 うん、ツッコミ入れるの疲れたし全部ノータッチでいきましょう。

 こうしてグッズ展開にレウラまでもが加わることになりました。

 まあグミとして見ればレウラの細かい造形がいい感じになるはずです。ドロポン様ほどじゃないけどこれはこれで売れそう。


 ってことで、めでたしめでたし。


「ウルカは甘えん坊ですね……よしよし……。ところ兄様、さきほどの動くドロポングミなのですが」

「え、ああ、そんなのもあったね」


「兄様の食いつきっぷりがあまりに悪いので、そこの別の皿に移しておいたのです」

「おお、それレウラに食わせちゃお――って、あれ、ねぇな?」


 皿の上は空でした。

 1つ残らず消えています。


「レウラ、お前食っただろ?」

「クルル……」


 ところがそうじゃないらしいです。

 わがままで自尊心が高いものの、人間並みに賢い飛竜様が首を横に振りました。


「じゃあどこに消えたっていうんだよ」

「あ、わかった、歩いて出てったとか。あはっ冗談だけど」


 ウルカの言葉にエントランスのみんなが黙り込みます。

 いやそれはあり得るな……と。


「まあいいか、どうせただのグミだし。害無し、気にしない気にしない」

「そんな先輩、知らない人が見たらあんなの腰抜かすっスよ……」


「大丈夫大丈夫、小さいから誰も気づかないって。……ってあれ、あのタコ型ドロポングミはどこやったー?」

「ありません、消えました、不思議です」


 実はそいつらも歩きだして逃げたとか。って言葉にしかけて止めました。

 世の中、気づかなくても良いことってあると思います。


「兄様……まずいのでは……?」

「何のことやらわからないなー。レウラが食ったんだよ、しらばっくれてるだけ、そーいうことにしとこう。それよりレウラの人形作りとグミの方進めないとほら」

「それは、やぶさかでも、ありません……そうしましょうご主人様」


 そういうわけで。

 その日からアルブネア邸周辺で、しばしば動く半透明生物が目撃されることになったというそうです。

 ああ、なんと不思議な話もあったものですね、森の妖精さんでしょうか。


「無責任っス……」

「クルル……」


 アシュリーとレウラどころか、ドロポンまで身を震わせて同意したように見えました。

 だって勝手に動くとか想定外ですしー。

 何がどうなってるのか俺の方が聞きたいくらいです。


ちょっと重要連絡

 365日連続更新達成したら更新ペースを隔日に変更いたします。

 並行連載の都合と、話数が伸び過ぎた影響で最新話に追いついている読者が減ってきている現状を考慮した判断です。

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