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36-1 女将を決めて北に飛ぶ、お嬢と一緒の2人旅 2/2

 しかしノウハウ無しで温泉経営なんて上手くいくわけありません。

 そこでヘッドハンティングをすることに決めました。

 国内にはごく小さな温泉宿しかなく、名所といえばフレスベルの観光地ミルヒーヒルが上がります。


 じゃあそこまで飛んでいきましょう。

 レウラにまたがり、お嬢と一緒にフレスベルまでのお仕事旅行です。

 具体的な狙いは……狙いは実は決まっていません。


 なぜならうちはミルヒーヒル含む、あらゆる温泉地のライバルになるのです。

 正面から教えて下さいとか言っても色良い返事なんて望めないのでした。


「ってことで。1.現地でエージェントを雇って人任せ、連れてきてくれた人をそのままアドバイザーとして雇う」


 レウラの背中、お空の上でお嬢に1つ目のプランを示しました。

 わりと手堅いと思います。俺たちは現地に詳しくないんですから。


「却下よ。モショポーさんには女将の経験がまるで無いもの。それ相応に有能で、うさんくさいあの女も監視出来る、信頼に値する人材じゃないとダメ! っていうかなんであんなの選んだのよっ?!」

「やりたいって言うんだもん。それに他の条件も飲んでくれたし……」


 ちなみに今回もお嬢が前、俺が後ろです。

 オールムの研究所行きのときと異なる点と言えば、俺の身体が子供から大人に戻っている部分でしょうか。

 実のところ出発してすぐは大変でした。

 お嬢ってば変に赤くなったまま、ずーーーっとまともに口聞いてくれなかったんですよ……。


「他の条件って……聞いてないわよあたし!」

「聞かれなかったし。モショポーさんには人体改造の実験台になってもらうんだ、すごいでしょ」


 するとお嬢が冷たいジト目で見つめてきます。

 さらには姿勢を戻して正面側を向いてしまいました。


「よく応じたものだわ……。それだけ本気ってことかしら……。アレクに身体任せるなんて正気じゃないわ、すごい覚悟よ……」

「じゃあ話、元のレールに戻すね。2.現地のカーネリアン商会を頼る。つまり商会に紹介してもらうってわけでしょうかい」


「ッ……そんなのもっと却下よっ!! 叔父様にだけは手を出させないわ、絶対!!」

「ですよねぇ~、それが1番早い気がすんだけどー」


 却下されるのはわかってました。

 でも言わないのも何というか、つまらない気がしたんですよ。次いってみよー!


「3.現地ミルヒーヒルにて自分たちで狙いを絞り、交換条件で相手を釣る。まあこれしかないんだけどね、さあじゃあどう探そうか?」


 1と2は長ったらしい前置きみたいなもんです。

 ところがあれ、お嬢から返事が戻って来ませんでした。考え中? それとも2で怒らせちゃったんです?


「ねえねえお嬢、ターゲットをどう探そうか?」

「…………」


 返事無しです。

 なにせ急いで出て来たのでここから先はノープラン、そこは移動しながら考えれば良いよね、

 ってつもりだったんですが……おーい?


「お嬢~。おーじょー? おーい?」

「ひぁぁっ?!」


「え、なに、どうしたの?」

「く……くっつき過ぎ……もうちょっと考えなさいよっ、こ、これ……密着し過ぎよ……」


 だってそうしなきゃ落ちるし。

 反応くれないからさらにくっついて、顔をのぞき込むことになっただけです。

 はぁぁぁ……エルフ耳がぺちぺち顔に当たります。

 至福ですよこれ、長いエルフ耳がエルフ臭を漂わせて風を切っているのです……素晴らしい。


「ぅぅぅぅ……無自覚なんだからもう……。あ、そうだったわ、書状をいただいてきたのよあたし」

「書状? え、誰からの?」


 しかしお嬢ってばしっかりしています。

 我に返ったのか思いもしない単語を出してきました。得意げに後ろの俺に振り向き、でも親密過ぎる距離間にまた前向いちゃいました。


「ふふん、もちろんそれは大公様よ」

「大公様? あっ、あそっか、その手があったか。それがあればスカウトしやすいじゃん」


 ありがとう大公様、ちゃっかりしてるなお嬢。

 ならあとは俺たちで最高の人材を見繕うだけです。


「渡す相手ももう決まってるわ」

「え、うそ、なにそれこれまでの会話全否定じゃん。つーか、なら誰に渡すの?」


「キエ様よ」

「ひぇっ?! き、キエ様怖いキエ様イヤーっ、生命力とか言葉に出来ないエキスを搾り取られるぅぅーっ!!」

「クルルル……キェーッキェーッ!」


 するとレウラが迷惑そうに抗議の鳴き声を上げました。

 背の上で暴れられたらたまらないそうです。

 でもなんてことでしょう、よりにもよってキエ様にお会いするとか俺ヤダーッ!


「落ち着きなさいよ……ほらレウラも心配してるじゃない。キエお婆さまからはあたしが守ってあげるわ」

「おお……お嬢ありがとう……。ていうか帰国してたんだねキエ様……」


「うん、公都で会ったから。もう3日前には戻ってるはずだわ。それにねアレク、あたし考えたんだけど……あたしはフレスベルの人間なの。だから故郷を裏切るなんて後ろめたいわ。言い出しっぺのあたしが言うのも変だけど……」


 そういえばそうでした。

 完全に俺の身内感覚でいましたが、お嬢って一応外国人でお嬢様で聖域の人間なのでした。


「とにかくみんなで共存する道を選びたいの! じゃないとイヤよ!」

「共存って言ったってそれ……こっちが向こうの客食うことになるんだしあんまり簡単じゃぁ……」


「それをアレクとあたしがどうにかするのよ! 代わりに向こうの願いを叶えましょ、そうして合意の上で、温泉宿経営のノウハウもった人材を借りればいいのよ!」


 ま、お嬢を母国の裏切り者にするのは俺だって気乗りしません。

 ただ相手が……相手が……キエ様か……これハードル天まで積み上がってね……?


「向こうがどう出るかもわからないのに……? 俺とお嬢に、今すぐこの場で子供を作れ、とか言い出すかもしんないじゃん……」


 相手はキエ様、常識が通用するとは思えない……。

 彼女にとって俺は面白い種馬で、孫のお嬢は……うん、止めとうこれは……。


「そ、その時はあたしも覚悟するわ……だって、あたしが言い出しっぺだものっ!! 才能を横取りするなんてダメ、フレスベルにもちゃんとした利益がないとあたしやっぱりイヤだわ!!」


 そうは言うけどさ……。

 相手がまずいんだってば相手が……。

 あーー、どうなっても知らないからね俺……。


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