34-19 突貫工事の湯船には男どもがいっぱい! ポロリもあるよ! 1/2
その後、夕方遅く暗くなりかけた頃に突貫工事の露天風呂が完成しました。
やれば出来るもんなんですね。
土台を整えて、領館よりお風呂用の石材を運び、それを組み合わせて柵で周囲を塞げば風呂場の出来上がりです。
後は源泉を土管で運んで湯船に流し込み、湯温を調整すれば風呂場が露天風呂温泉に進化するという奇跡です。
その夢のような極楽の光景は、やり遂げた者たちに少なからぬ感動を呼び起こしました。
後はこの露天風呂温泉という基礎に、あれこれ付与していけばどんどん楽しくおいしいことになってゆくことでしょう。
と、いうことで。これより俺たち功労者たちによるお風呂パーティとあいなりました。
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「はぁぁぁ~~、良い湯っスぅぅ……先輩のせいで死ぬほど大変だったっスけど、なんかもう許せる気分っスぅ……」
「なんかすごいよね! たった1日で今本物の温泉入れちゃってるんだもん! アレックス偉いっ、温泉最高ーっ、くぁぁぁ~たまらんっっ!」
アシュリーとダリルの声が聞こえました。
若干おっさんくさいセリフが混じった気もしますけど、満足ならそれは良いことです。
「それよかみんなにも見せてあげたかったよー。せんせーってばさ、カッコ付けて魔法だけで温泉掘り当てたのは良いけどさ、その後逃げ損なってお湯かぶってんの~♪ うひゃぁぁぁ熱いよぉぉぉとか言っちゃってさぁーっ♪」
「えっ、だ、大丈夫だったのそれ……? もうアレクったら……また1人で無茶するんだから……。心配する身にもなりなさいよ……っ」
お嬢はおやさしいです。
男湯から聞かれているとも知らずに、思いの外響くその声をやさしい不安で曇らせるのでした。
つーか、熱いよぉぉぉなんて言ってねーよウルカ、勝手に誇張すんなよなっ。
「兄様は……昔から秘密と勝手がお好きですから……。でも、逃げ損なううかつさがいかにも兄様らしいです……。はぁ……気持ちいい……」
「あの、ダリル。どうして、私のそんなところを、触るのですか」
アクアトゥスさんもご満悦みたいです。
柵の向こう側で無防備に肌をさらして、ウルカの熱い眼差しを受けていること間違い無しでしょう。
アインスさんはダリルにセクハラされてるみたいですね、うん、いかにもお風呂っぽくて良いんじゃないですか、俺には全然関係ないし。
「へっへっへっ~、どれだけ成長したかダリルちゃんが確認してあげるっ!」
「あ、あう……止めて下さい、ダリル、はう……!」
「っ……ま、まだ追い越せない差じゃないわ……。アインスにまで負けるわけには……薬、やっぱり作らせないとかしらっ……」
何やってんだろうなアイツら……。
お嬢に豊胸剤作るのは個人的に気乗りしないんですけど。存在価値が損なわれるというか……別に小さくても……って言ったら怒るに違いない。
さて、向こう側の楽園はともかく、こちら側の現状に目を向けました。
なかなかこっちもそうそうたるメンツがそろってます。
「何だ?」
「ああメガネかい? フレームが悪くなるといけないから置いてきたんだよ」
アルフレッドとロドニーさんという超美男が2名。
あんまりヤツの方の裸は見たくありません。
俺より鍛え上がっててムカつくし、エーミルでの件をどうしても思い出すから。おえっ……。
「いや、その裸を記録する装置を作れば、マナ先生あたりに売れるかな~って」
「邪悪なことを考えるな……いいか、絶対に止めろよっ!」
「治安の維持者としてそれは見過ごせないんだけどな、アレックスくん……」
まあそんなもの作れば、次の標的が俺になるだけなんですけどね。うん止めとこう自爆展開です。
マナ先生の理性は常に限界崖っぷちなのです。
さて残るはマハ公子、と執事チャップ。
チャップさんが常に公子と俺との対角線上に待機してくれているため、俺は殿下の裸を見ることができません。
絶対に見せないという信念を感じます。
「あの……爺や、そこに立たれると先生がよく見えない……あっ違いますよっ、別にアレクサント先生の裸っ、裸をっ、裸を見たいわけじゃないですからっ!!」
「殿下、あやつめは危険でございます。見ましたかあの女ったらしっぷりを……。ああいうやからは、古いものに飽きると新しいものに手を付け始めます。殿下もその例外ではございませんでしょう……」
何を言ってるんだコイツらは……。
いやマハくんの裸なんて見たくないし。
あーでも、ちょっとだけマハくんってどうなってんのかなー……って気になる気もしないでもないけど。いざ見たら何か取り返しの付かないことになる気がする……止めとこう。
「そ、それって……アレクサント先生にボクッ、狙われてるってことですかっ?!」
「御意にございます。あれは女性を見る目で殿下を見ている……汚らわしい……ッ、ああ汚らわしいッッ!」
反論したい……。
しかし反論してしまうとあのノリに付き合うことになります。
やっぱり聞かなかったこと、見なかったことにしました……。
ああ、この湯の何とぬくいことか。
凝り固まった筋肉がほぐされ、よくわかんない効能が疲れを溶かしてくれていきます。
苦労して石材を運んだかいがありました。……いえ、実は人任せで肉体労働は全くしてないんですけど。
「宿の建設を急がせよう。それでいいなアレクサント」
「うん、それが終わったらお嬢のつてで全力の宣伝を頼もう。ブランド価値を高めて、別荘を貴族諸侯や金持ちに売るんだよ。そうしたら現金とコネの出来上がりさ」
最後の部分にはあまり同意出来ないと、彼は目をそらしてしまいました。
それがアルフレッドの良いところです。ちゃんと領主してくれてます。なら俺は引き続き、好き勝手に欲望を追求するということで。
「爺や……少しだけどいて、アレクサント先生のお背中をお流ししたいんですっっ」
「ダメです殿下! そんなことをしてみなさいっ、こやつめ、ついに辛抱たまらずっ、殿下をこの場で押し倒すに決まっておりますぞ! あれは欲望に忠実な変態にございます変態ッ!」
「まあまあチャップさん、アレックスくんはそんな男ではありませんよ。……まあ、とんでもない女ったらしなのは、僕も認めるところですが……」
ロドニーさん……それあんまりフォローになってません。
欲望に忠実なのは認めますけど、変態じゃないってば!
あああ文句言いたい、でもこの爺さんと口論するのちょっと怖い、めんどくさい、和解も困難、ああやっぱ止めとこう……。
挿絵回は投降が少しだけ遅くなります。
もう少し簡素化してくれないかな、ひなプロ……。