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34-16 夢の開拓地に温泉を作ろう 技術面編

 残ってくれたダリルと打ち合わせを続けました。


「じゃあ技術面の話ね。どうすればいいと思う?」

「主語付けなよ主語……。ん~~、源泉の方はアレックスが掘り出してよ、爆発とか得意じゃん」


 何か語弊のある言い方です。

 元のフレンドリーなダリルに戻って、彼女がテーブルに頬杖をついてこちらに目を向けました。


「そりゃ否定はしないけど。でも地面だけを掘るとなると簡単じゃないよ」

「そうかなぁ~。ほら例えば、岩盤に爆発物を埋め込んで、じょじょに下へ下へと破壊してけばいいんじゃない? ドーンッドーンッッ、って景気が良さそうだし♪」


 無自覚に大きな胸を揺すって、褐色肌の鍛冶師がお祭り好きな笑顔を浮かべます。

 何となく言いたいことは伝わってきました、ダイナマイトで鉱山開発みたいな感じでしょうか。


「いやそれはめんどくさい」

「めんどくさいってアレックスくん、君ね~……」


「だって浅い場所に源泉があるならいいけど、もし深いところだったら意味ないしお金かかるし疲れるしで良いことないよ」

「やってもいないのに文句言わないでよ。んーー、それに他の案って言ったって……うーん、ぜんぜん思い付かないよ」


 そう言って彼女は机にへばりました。

 つくづく無防備というか何というか、こっちだってダリルがときどき心配になります。まさかよそでこんな姿さらしてないよね?

 ていうかこんなこと考えてないで代案の方を出さないとです。


「どう、アレックス何か思い付いた? 文句言ったんだから何か出してよ」

「そうだね。うん、そもそも今回は源泉の場所がわかってるんだから、バカ正直に上から掘る必要とかないかなって」


 こちらが回答するとダリルがイスを近付けて来ます。まーた無自覚に。


「ほうほう、つまりどういうこと?」

「ポインタは山の傾斜に突き刺さってたわけだから、真横からそこをぶち抜けばいいんじゃないかな」


「でも高さがわかってないんでしょ、それじゃ当たるかどうかわかんないじゃん。あとどっちにしろそれって爆破することにならない?」

「横向きに穴を開けた方が都合が良いんだよ。源泉の圧力にもよるけど、水は低いところから高いところには流れないでしょ。縦穴を作っても、そこから地上まで持ってくることができなきゃ意味ない」


 ジェスチャーで水の作用を例えながら解説しました。

 って、あ。

 けどダリルが距離を詰めるものだから、うっかり触っちゃいけない部分にぶつかってしまいました。


「……だからまあ、1度やってみるしかないね」

「じゃあアレックスが成功した場合。って前提で考えるけど、ぶち開けた穴から宿予定地までお湯を引く方法を考えよ。今おっぱい触ったことみんなに黙っててあげるから」


 そりゃ気づくよね……さすがの俺も顔がひきつりました。

 それは色々とまずい、あっちこっちに飛び火して謎の爆発を起こす危険性が秘められています……。


「事故だし! ていうか脅迫すんなよっ、触りたくて触ったんじゃないし!」

「ぷっ……あははははっ! なにうろたえてるのアレックス、もしかしてずっと触りたかったとか? それで事故をよそおってわざと……あ、っていうかね、実は私に腹案があるんだー」


 話一気に飛んだな。

 楽しそうにダリルが自慢げに胸を張って、似合わない色香をまき散らしながらまた詰め寄ってきました。

 その腹案とやらによっぽど自信があるらしい。


「だから事故だって。ていうかいきなり腹案とか妙な言葉出してきたもんだね、どうするつもりなの?」

「うん! あのね、アレックスのくれたあの、何でも精錬装置! あれで石を溶かして整形するの」


 石を溶かして整形……おお、そんな使い道があったのか。何て便利な装置なんでしょう、その手があったとは作った俺天才。


「そうか、要するに土管を作るんだね」

「え、なに、ドッカン?」


「土管、中を空洞にした筒だよ。一定の長さのものをいくつも繋げて、密封された水道に出来るんだ。あとドッカンじゃなくて土管ね」

「へーー、アレックスそれ作れる? 形とか全部任せちゃっていい?」


 いけるかもしれません。

 普通なら粘土をこねて焼いて陶器にしなければならないものを、あの装置で溶かして形にしちゃえば即完成じゃないですか。

 ダリルのこの名案、これは今すぐ試すしかありません。


「もちろん。じゃ、早速実験してみよっか」

「あっ待った。その前にさ、穴掘りの方は結局どうするの? やっぱ爆破する?」


 ああそっちが片付いていなかったんでした。

 でもやっぱり爆破は乗り気がしません。破壊範囲が広すぎます。


「……アースグレイブって、地面を隆起させて敵を貫く魔法なんだよね」

「え、魔法……?」


 爆発物を使わないとなれば、第3の選択肢が浮上します。

 ただ常識的な使い方ではないので、ダリルがかわいらしく首をかしげてしまいました。


「うん、つまり源泉採掘の方は錬金術抜きで、魔法による力技でやってみよう。……こっちの方が微調整しやすいしね」

「魔法って……アレックスくん……」


 それからその傾いた首が元へと戻り、疑いとうかがいと呆れの混じったジト目顔に変わります。

 こちらの表情変化を見逃すまいと、さらにそれが近づいて来ました。うーん、なんかダリル臭い……。


「あのさ、アレックスってさ……いつからそうなの?」

「何が?」


「だからさ、みんな心配してるよー、アレクがおかしくなったーって。……ま、そういうのほどほどにね。だって私アレックスのママだし、だらしない息子の面倒見てあげないとっ!」

「誰がママだよ……それいつの話だよ……」


 確かダリルと一緒に屋台ご飯を食べに行ったとき、そんなことをのたまっていた気も……。

 こっちはショタボディから回復したっていうのに、そのノリまだ続いてたんですね……。

 酔っぱらいの妄言であって欲しかった……。


 しかしなんかダリルにまで心配されたり感づかれたり、こんなことになるとは思いませんでした。

 でもしょうがないです。自重しないってことはこういうことなんです。決めたからにはこの先も手加減なんてしません。

 落ち着いてゆっくり出来るその時まで。


「工房に行こアレックス! 温泉作ってくれたらみんな喜ぶしっ、そしたらまた触らせてあげてもいいよ!」

「ママ、頼むからそのネタ引っ張るのだけは止めて……色々とデリケートな問題なんだよ……」


 そりゃ触りたいけど……。

 ダリルママの胸部は一部の人々とは違って、まだまだ無限大の成長力を残しているのです。

 持たざる者は持つ者に嫉妬して、必ずや俺に八つ当たりをすることでしょう……。


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