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34-15 夢の開拓地に温泉を作ろう 諸般の問題編 1/2

 これで源泉の位置はわかりました。

 残る問題はその立地・人手・温泉の採掘方法です。

 ポインタこと赤き両手剣が示したそこ一帯は、木々がやたらと深く、傾斜があっちこっちと複雑に入り組んでいる厄介な場所です。


 当然ながらわざわざそんな場所に開拓の労力をかけるわけも無く、言葉通り手つかずのエリアとなっていました。

 ただちょっとついていた部分もあります。

 実は北西部のドロポンストリートからそう遠くない位置関係だったのです。


 つまりですね、そこから北西ドロポン街道まで温泉を引いてやれば、これ都合良くも旅人に湯と宿を提供出来るというとても魅力的な立地でした。

 例えば山奥だとか谷底だとか、場所が悪ければそれだけでリゾート地としての価値が下がります。だってこの世界には車なんて無いんですから。

 だから俺たちはこのベターな立地を喜ぶべきなのです。


 ただし。どうやってそこまで湯を冷まさずに運ぶのか、という難が1つ。

 次にどうやって源泉のある地層まで掘り抜けばいいのか、という難がもう1つ。

 湯を何とか掘り当てたところで、その湯を管理出来なければ意味が無い、という現実ももう1つ。


 配湯システムと温泉宿、その宣伝、従業員確保。

 ……商売って手間と時間と山ほどの資本がいるんですね。これ、どうしよう……。

 うん、わかんないのでみんなを呼びつけて聞いてみました。



 ・



「カーネリアン商会にお金借りるとか」


 ま、そうそう簡単に答えなんて出ませんでした。

 停滞した会議をひっかき回すために、あえて触っちゃいけない場所を触ってみます。


「却下よッッ!! そんなの絶対ダメッ、あたしが許さないわ!!」

「だよねー」


 そのご息女に断られるのも知ってました。

 あと会議と言いましたが会議室なんてありません。屋敷の食堂に今、住民のほぼ全てが集結しています。

 ただしモショポーさんは抜きで。性格悪いし、根拠の無い屁理屈で流れ荒らされるに決まってますもん……。


「先輩性格悪いっスね~、リィンベルちゃんが嫌がるのわかってて言ってるっスよ」

「コイツはそういう男だ、いつか愛想を尽かされても知らんぞ」

「あらぁ~~、わたくしは~~、アレク様~好きですよ~~♪」


 頭数が多いのでそれだけいつもより手厳しさが増しております。

 やんややんやと意見が行き交ったり、ときおり俺を総ツッコミしやがるのです。


「既にアトリエの資金を……開拓地とダリルの工房に投入しています……。リィンベルの実家を頼るという兄様の意見も、けして悪くないお考えではないでしょうか……」

「あーダメダメ、リィンベルちゃんって実家のことだと超ガンコだし。クスクス……そこはアトゥだってそうでしょ~。実家、頼りたい?」


 当然の権利でアクアトゥスの隣はウルカが陣取りました。

 思わぬウルカの反論に聞こえますが、きっとそれは愛するアトゥの手を握るための方便なのです。

 態度もいつも通り異常に好意的でしたし。


「ウルカ……はい、そこは否定しません……」


 その手をやさしくもう片方の手で、アトゥが包み返すからいけないんじゃないですかね。

 そこはあんまり見ないでおきました。

 ……うーん、お兄ちゃんときどき妹が心配。


「アレク殿の妹君は立派でごじゃるなぁ~……」

「黙れモンテ、お前も少しは考えろ。ふんっ……ここが繁栄すれば我がロマーニュ家も栄える、協力してやるぞ」


 雌狐エミリャの兄2人にも参加してもらいました。

 あんまり頼りにしてませんけど、使えないこともない方々です。サボり癖から目をそらせば。


「だってさ、温泉宿と配湯システムの建設にまず金かかるじゃん? 従業員だって人件費タダじゃないんだから、そうなるとzなんていくらあっても足りないよ。お嬢が折れてくれたら1番早いんだけど?」


 商会の資本が入ればお金の問題が超改善します。

 そこでお嬢をもう1度突っついてみました。……嫌われるの覚悟で。

 ところがその小さなエルフは返答を返してくれませんでした。それどころか無言で睨まれちゃいました。


「じゃあこうするっス。急がないなら、ゆっくりみんなで作れば良いと思うっス」

「ふむ、まずは公共風呂からスタートというわけだね。いきなり大金をつぎ込むよりは無難だろう」


 するとアシュリーが助け船を出してロドニーさんがより現実的な方向にそれをならしてくれました。


「ああ、ここの領主としてもロドニーさんの案に惹かれる。最初はそれで良いではないか」

「そうだね、ダリルちゃんも賛成~。私は温泉に入れればそれで良いし!」


 いかん、なんか話が地味~な方向に流れてるじゃないですか。

 そんなちんたらやってらんないんですよこっちは、自重無しって決めたんだし派手にやり切るよ。

 よーしならもう1回話を荒らしてやろう、今度はどこを突こうかなー……。


「ううん、それはダメよ、あたしは反対。公都から馬車で2時間の距離なのよ、競合相手は無し、客はいくらでもいるわ! ここで投資しなければせっかくのアレクの頑張り、ううん欲張り根性が台無しよ!」


 そしたらお嬢がこちら側の応援をしてくれるじゃないですか。

 そうです、これは濡れ手に粟ってやつで、ガツンと資金をぶっこんで良いやつなんです。って、欲張り? あ、間違ってないや。


「お嬢なら応援してくれるって信じてたよ俺。……じゃあ商会にお金借りようか」

「嫌よ! あたしは実家の力無しでやりたいの! アストラコン叔父様がこの話に加わること自体ッ、大・反対よッ!!」


 そのアストラコンさんが今のセリフ聞いたら、きっとマジ泣きしちゃうんじゃないですかね……。

 愛を失いし孤高の狩人としては、愛する妹の娘の活躍を支援したいって考えるに決まってますし、ああ哀れ、愛を失いし孤高の狩人よ……。


「何より少しでも早く温泉に入ってみたい。ってさっき言ってたよリィンベルちゃんが。あと、お金かけた方が絶対良いお風呂と宿屋になるに決まってる、って、へへへ~ダリルちゃんバラしちゃったー」

「う……そ、それももちろんあるわ……。でもあたしだけじゃないでしょっ! みんなだって出来ればっ、今すぐ熱いお風呂に浸かりたいって思ってるでしょっ!! しかも温泉よ温泉っ、美肌に健康よ!!」


 うん、実は温泉宿経営の利益と、領地の税収アップしか考えてなかったとか言えない雰囲気。

 お嬢の言葉に、その場の皆が納得しました。とにかく温泉入りてぇ、そこに反論はねぇ、と。


「はい……そこは私もやぶさかではございません……。最近は暖かいので肌がどうしても……」

「温泉、楽しみです。フレスベル旅行、楽しかったですから……」

「そうでごじゃるなっ、その時はアレク殿の背中をお流しいたそうっ、その後は軽く、軽くキュゥゥ~っと♪」


 女性の意見は完全一致、モンテ・ロマーニュも酒を楽しむジェスチャーを始めて以下同文です。

 

「あ、アレクサント先生と一緒に、お風呂……っ。ぼ、ボク……どうなっちゃうんだろう……は、恥ずかしい……」


 どうもしません。

 そこは保証します、永久保証書付きです。

 だから頬を染めてチラッチラッこっちを見てこないでマハくん……何を、期待してるんだし……。


「ははは、殿下は本当にアレックスくんのことが、大好き、だね。ふっ……羨ましい限りだよ」

「良かったなアレクサント、ご寵愛をいただけばお前の拝金主義にもさぞや都合が良かろう」


 良いわけないのわかってて言ってるよねコイツら……。

 そんなBLゲーみたいなルート絶対お断りです。

 あーもういいや、こうなったら奥の手出しましょう。実はこんなこともあろうかと、用意してあったんです。


「……じゃあしょうがない、これを売ろう。レ~アさーんっ、とエルザさんお願いします!」

「先輩……?」

「おい、貴様……」


 合図をすると、食堂にレアさんとエルザさんが台車を引いて現れました。


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