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34-14 大見得切ったもののさっぱり方法がわからない、錬金術の限界を越えた案件 2/2

「……兄様、重ね重ね申しておりますが、やはりそれを付けると悪党にしかアトゥには見えません……」

「はいはいそのツッコミは聞き飽きたよ、何度言われようと便利だから良いの。……ではスペクタクルスよ、ここ、アルブネア新領を鑑定せよ!」


 小さな起動音とともにレンズへと文字が浮かび上がっていきます。

 ふんふん、なるほどなるほどこれはちょっとだけ興味深いです。


――――

[ア・ポロン迷宮群23号迷宮・地上部]

[攻略済みエリア]

 魔物出現率:0.000001%未満

 所有者:アルフレッド・アルブネア

 攻略者:アレクサント・オールオールム

――――


「へー、所有者と攻略者って別になるんだなー……」


 って何だよ、アレクサント・オールオールムって。

 スペクタクルスにまで現実突きつけられた気分になります。いいや俺は俺、ヤツはヤツ!


「どうですか兄様?」

「もうちょっと待って。今のは糸口を探るための命令だから。……ではスペクタクルスよ、この地の地下資源を鑑定せよ。出来れば温泉も含めて」


 ところがスペクタクルスのレンズに予期せぬある文字が浮かび上がりました。

 [動力を補充して下さい]と。


「ええい金食い虫め……」


 しょうがないのでスペクタクルスに持参したエーテルをまたぶっかけました。

 湯水のように魔力を吸い込むその姿、半分以上ホラーです。おかげで生身で触れるのがちょっと恐ろしい、誤作動1つに根こそぎ全部奪われそうで。


「やはり燃費の悪さがその子の難ですね。兄様らしいと言えば兄様らしいですけど、ふふっ……」

「笑えない笑えない、お、出た出た」


――――

[水資源値]  2518(豊富)

[鉱物資源値] 3   (最低)

[土壌]    1545(肥沃)

[その他]

 [温泉源泉地]1

――――


「あったっ、1ヶ所だけあるって! ああ良かったこれで計画倒れとはオサラバってわけだ!」

「……便利なアーティファクトもあったものですね。正直、そのスペクタクルスについては驚きばかりです」


 そこは全力で同意しよう。

 だが使えるものは使えるということでそれで良いんです。便利は正義なんですから。

 俺はご機嫌で次の命令を下すことにしました。


「ではスペクタクルスよ、その源泉の場所を示せ」


 ところがそうテンポ良くいかない道具なんですよコレ。

 [動力を補充して下さい]と、また財布の痛い表示が現れました。


「どうですか兄様?」

「また動力を補充しろって……ああもう……がめつい情報屋め……」


 エーテルを再びスペクタクルスにぶっかけて掛け直します。

 いえ、ところが……。


[出力が足りません、動力を現在の7倍補充して下さい]

 とか表示されました……。


「上手く行っていないようですね、何かお手伝いがいりますでしょうか?」

「あー……うん、エーテル8本分もサーチに使うらしい……。悪いけどさ、10本くらい持ってきてくれないかな……」


 俺はてっきり、どこかにあるデータベースにアクセスしてるんじゃないかって思っていました。

 しかしそれならアクセスにかかる魔力は何であっても一定のはず……。

 あるいは、そのデータベースに無い情報にはコストがかかるってことなんでしょうか……わからん、わかるわけない。


「エーテル12本でわかるならむしろ安上がりですよ兄様、少しお待ち下さいね、アトゥが大好きな兄様の為に、子犬のように一生懸命駆けてまいりますから……♪」

「いやいや走らないで良いよー、貴重品だしゆっくりねー?」


 アクアトゥスさんを待ちました。

 すぐに駆け足の彼女が戻って来て、小さな木箱ごとのエーテルとトレイを足下に下ろしてくれます。


 そこから1本1本エーテル瓶を開封して、じゃぶじゃぶとトレイ上のスペクタクルスへと大事な10本分をぶっかけました。

 わざと多めに補充させたのは保険です。動力が残れば今後他の命令を出すときに便利ですし。

 動力補給を終わらせてシャキッと顔へと片眼鏡を装着し直しました。


「さあ兄様っ、ご命令を!」

「はぁぁ~赤字赤字赤字っスな……まあ今回はお嬢も同意済みだし気軽だけど。ではスペクタクルスよ、食った魔力分はちゃんと働け! 今一度、源泉の場所をここに示せ!」


 すると不思議なメッセージがレンズ上に現れました。そこにはこう記されていたのですよ。

[ポインタを発射します 5、4、3……]


 発射?? ポインタ?? え、なに、どこ、何の話、何が始まるの……?!


「きゃっっ?!!」


 そしたらいきなりの轟音、アクアトゥスさんが驚いてくっついてくるほどの物凄い音が響きわたりました。

 いやこれ何事と周囲を見回すと、何か、空に赤い何かが撃ち上げられていました。


 ソイツはクルクルと回転するフリスビーのような円盤で、高々と高々と天高く昇ったかと思えば……。やがて領館より北西の樹林地帯へと音と共に落ちました。

 スペクタクルスのレンズにふと目を向ければ、メッセージが更新されています。


[0……発射完了、スリープモードに移行します]


 なるほど今の赤いやつがポインタで、落下地点に俺たち目当てのものがあるってことですか。

 スペクタクルス、これ……とんでもねぇです、まさにアーティファクトです。再評価もののパワフルなご活躍でした。


「あ~~、ところでアクアトゥスさーん……?」

「ひしっ……ひしっ……。アトゥは何も聞こえませんよ、離れろと言われてもそれは無理です……申し訳ありません兄様、アトゥは温泉よりも兄様の胸の中でふやけていきたいのです……はぁぁ、兄様の匂いが……真夏日による汗の香りと混じり合って……スーハァスーハァ……♪」


 スペクタクルスの使用なんかより、妖怪ひっつきお化けを引きはがす作業の方に体力をごっそり奪われました……。

 隙あらばがっついてゆくこのスタイル、さすがは我が妹。ベタベタ感MAX。

 元は立つことも出来なかったあのアトゥが、ここまで元気になってくれたことに喜びを覚えつつ、やっぱりこれ以上彼女の暴走スイッチが過激化するのだけは避けたいなぁ……なんて思う夏の日でした……。



 ・



 その後、封鎖したはずの23号迷宮入り口が内側からぶち破られていたと領館に急報が走りました。

 それ俺のせいです。でもスペクタクルスが勝手にやったことです。

 って申告したらやっぱりみんなに怒られました。

 俺のせいじゃないもん、って言っても前科がありますのでやつらは聞く耳持ちません、ひどい。


 さて肝心のポインタは迷宮内部より発射され、天高く飛び上がった後に目印として大地に突き刺さりました。

 樹海同然の北西エリアから赤いポインタを捜索するのに人手を使い、ようやく見つけ出されたのは翌日の夕方頃のことです。


 しかもポインタという名称で表示されたソレが、円盤ではなく1振りの巨大両手剣だったと報告が来たんだから2重にビックリです。

 もちろん厨二カッコイイので回収させました、後は下準備を整えて目印地点から源泉を掘り当てるだけ。

 ズルをした感がありますけどいいんです、さあやるぞ!


 ……え、スペクタクルスと迷宮の関係性?

 そんなの考えたってわかるわけありませんよ。とにかく温泉、温泉、温泉が近づいているのです!


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