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34-11 完成・お披露目・ダリルの鍛冶工房! あの特別ゲストがまさかの緊急来領!? 1/2

 工房はわりとあっさり完成しました。

 建物と内装は最初から人任せでしたから、錬金術師の役割は数々の魔法の鍛冶道具を用意するだけでした。


 しかしどれも機械的なものになりますので、1つ1つの便利パーツを錬金術で作り出して、それから組み立てるという面倒な手順になります。

 オールムの技術を受け継いだとはいえ、さすがに工数が多く苦労することになりました。


 全然あっさり完成してない? いえ日数だけでいえば半月ほどの超ペースだったんですよ。

 とにかく苦労のかいもあって工房が無事に完成しました。

 予定していた鍛冶設備全てを実装させて、しかもちゃーんと予算通りに収まったのです。だからあっさり。


 さあ後はお披露目です。

 いえところが、ところがそのお披露目に、とんでもない方々が参加することになっていたのです。



 ・



 その日大公閣下と、カーネリアン商会の主アストラコンさん、それと聖域のコモンエルフ・キエ様がいらっしゃいました。

 ちなみに主要なアトリエメンバーには工房を自慢済みです。……ダリルが勝手にね。


「こ、これは大公様っ! わ、私なんかの工房にっ、ようこそおいでくれましたっ! に、似顔絵よりカッコイイんですね!」

「ダリルダリル、おいで下さいました、な? あといきなり場違いなこと口走ってるぞー」


 つーか、なんでこの超絶VIPどもにお披露目(プロモーション)する事になったんだっけ……。

 確かお嬢から叔父のアストラコンさんに漏れて……。

 きっとそのアストラコンさんから聖域のキエ様に漏れて……。

 ちょうどそのキエ様が公国に公務で来ていたところから、大公様に漏れたんですか……?


「こ、これは失礼しましたぁーっ!!」

「うわ、こんなに緊張してるダリル初めてみたよ俺。はい深呼吸ね、深呼吸~」


 さっきから胸を反り返らせて直立したまま、ガチガチに緊張してるっぽくて指を震わせたり脂汗かいてます。

 意外だなぁー、俺みたいな礼儀知らずサイドかと思っていたのに。

 ま、自分の商売に直結することなんだから当然かもしれません。


「そうかしこまらないでくれ、マハからダリル殿の話は聞いている。明るくて面倒見の良いやさしいお姉さんがいるとな」

「マハくんからそんなっ! い、いえっ、マハ公子殿下の方が私にやさしくしてくれてるだけでっ、そんなっ!」


 グッジョブマハくん、大公様の心証ゲット済みとはこのお披露目の幸先が良いです。

 さて前後しましたが彼らVIPを接待するのは俺と、ダリルと、お嬢です。


「お嬢、助けてやってよ」

「しょうがないわね……」


 相手は国の最大権力者が2人、大商会の主人が1人という取り分けです。

 この営業次第で契約が取れるかもしれない。テンパるのも当然でした。


「お久しぶりです大公様。それとキエお婆様、アストラコン叔父様。ここが錬金術のアトリエ全額出資によって完成した、至上最高峰の鍛冶工房です」

「リィンベルちゃぁ~んっ……!」


 それをお嬢が鮮やかにフォローしてくれました。

 こういう小さなやさしさ、頼もしさが人望に繋がるんでしょうねー。

 面倒ごとを避けたがる俺にはマネできません。

 ……って、……え?


「ちょっちょぉぉ~、キエ様ぁぁーっ?! ど、どこを触られておられっ――ヒャファハァッ?!!」


 なんて人事みたいに見物してたら、キエ様に背後を取られていました……。

 公務だというのにエッチな娼婦みたいなご格好で来やがりまして、このお方が人の腰を抱きつつ尻を撫でてくるのです……!


「ヒヒヒ……子供に戻ったと聞いたときはどうしたものかと思ったぇ……♪ よきよき、この尻なら問題無いぇー」

「キエ様ッッ!! それはあたしっ、じゃなくてっ、大公様の前でそんなところ撫でないで下さいッッ、エルフの恥よッッ!!」


 怒りと嫉妬と恥じらいの入り交じらせた孫の姿、それがキエ様をむしろ喜ばせたらしいです。

 俺の耳元にヒヒヒ、と楽しげな笑いが届きました。

 歪んだ孫好きもあったものです……。


「リィンベルに同意だ。お目汚しを致しております閣下、キエ様はコモンエルフ、我らエルフとは別の存在とお考え下さい」

「これ息子よ、親に対してその物言いは何だぇ?」


 お、親……??

 あ、そうか、お嬢が孫なんだからアストラコンさんは息子になるんですよね……。

 息子ねぇ……さぞや若い頃は苦労したんでしょうねアストラコンさん。


「しかしキエ殿、アレクサント殿はうちのマハが先約済みですぞ」

「ほぅ……それは初耳だぇー? まあ、我は種さえ貰えれば問題ないぇ~、ヒッヒッヒ……」


 止めろ王者ども……。

 少なくとも俺の尻を理由に何かを奪い合うのは止めて下さいよ……なんかゾワゾワしてくるってば……。


「……はぁ、何か、思ってた人と違う……なぜか超フランクだし……」


 ダリルがボソリとつぶやいて姿勢を崩しました。

 緊張していた自分がバカみたいだと、でかい脂肪塊を揺らして軽く柔軟し始めるのです。


「うぉほんっ! うむ!」

「ちとふざけ過ぎたかもしれんなぁ~、久々にはしゃいでしまったぇ」


 大公様とキエ様はその言葉に我に返ってか、今さら虚勢を張りなおしました。

 いやもう遅いって2人とも。


「鍛冶師ダリルよ、くろがねに魂を売りしその業を、大公の御前に披露せよ、壮絶にな……」

「……へ?」


 さあこれで話が進みますよ。

 ってところでアストラコンさんが文学と厨二は紙一重な進行をしてくれるからさあ大変です。

 ごめん何を言ってるのかわからないと、せっかくリラックスし始めたダリルに困惑が浮かびました。


「愛を失いし孤高の狩人よ、我が与えし魔導と鋼のその因果、ここに顕現して見せよう……後ほど、泥の傀儡の変幻自在なる大地を支配せし勇姿、こちらもご賞味いただこう……クククッ」


 代わりに俺がフォローしておきました。

 訳すとこうです。

 アストラコンさん、錬金術の鍛冶工房の素晴らしさを見て下さい。それと後で、ドロポンの新しいフォルムを見せます、凄いんですよ。


「ねぇリィンベルちゃん、この人たち何言ってんの……?」

「ああもう……アレクッ、これ以上叔父様に恥をかかせるのは止めてってばっ! 目の前で見てる身内の身にもなりなさいよっ! 叔父様もっ、今は大公様の御前よッ!」


 小さい体を一生懸命揺すらせて、お嬢は場をどうにかしてくれようとしました。

 叔父が恥ずかしくてたまらないと、うっすら頬とエルフ耳を赤く染めていた点もポイント高いです。おお、エルフ、最高……。


「あ~~、話進まんし、じゃあ俺が解説しますね。これ、アダマンダインと呼ばれる希少鉱物です。この地にあった23迷宮、その最下層を守っていたアダマンダイン・ゴーレムの肉体そのものです」


 工房の端っこにアダマンダインを運んでおきました。

 お披露目ですのでかぶせておいた布を外して、その巨大ゴーレムの破片を見せつけます。


「うむ、それが報告にあった23号迷宮の守護者か。見事であったぞアレクサント殿、このアルブネア領の急発展も含めて賞賛しよう」

「ありがとうございます、で、コイツをこの超魔磁クレーンで持ち上げます」


 天井から釣り下がる小規模クレーンが当工房の特色です。

 壁際まで移動して、そこに設置したコントローラーを使いアダマンダインを磁力で持ち上げました。


「おぉ~、これは驚きだぇ~。やはり長生きはするものだぇー」

「人力も無しにクレーンが動くだと……フッ、なかなか凄まじいな……」


 お偉方の興味は相当のものでした。

 それを一身に受けながら、クレーンがアダマンダインを自動精錬装置に下ろします。

 下ろす直前にダリルが駆け寄って布をどかし、ふたを開けてくれていたのです。


「見事! 原理はわからぬがさすがアレクサント殿の考案、わははっあやかりたいものだなっ! おっと、本音が漏れてしまった。まあ今さらかまわんかっ!」


 大公閣下は俺を味方に引き入れたがっていました。

 だからこそアルフレッドにこの土地全てを任せたのです。

 少なくとも古なる者との決着が付くまで、大公家とは親密にやってゆくべきでしょう。


「はい閣下、私も取り扱ったことがございますが、アダマンダインの重量は鉄を凌駕いたします。それをあんなにも軽々と運搬してしまうとは、凄まじい技術と認めるしかありません。フッ……さすがは裏切りの堕天使」

「ヒヒヒ……めんようじゃのぅ……こんなものを見たのはそう、あの頃以来だぇ、ヒヒヒ……」


 キエ様はグリムニールをさらに超えるスーパーババァです。

 この世界で一番の最長老と俺は思い込んでいます。

 そのキエ様のあの頃っていつさ、範囲この国の歴史より広過ぎでしょ……。

 確か別世界から逃げてきたのかコモンエルフ、この地で生まれたのはエルフだっけ……?


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