33-12 進撃のドロポン、クレイゴーレムを使った全く新しい……ポロリもあるよ 3/3
「おうアレクサント、こないなところで何しとるんや! あっ、それは……っ!」
背後からあまり会いたくないお人の声がしました。
しかも不思議なのです。ドロポンさんが恥ずかしいよぅ~止めて止めて~って、また真っ赤に染まり始めるじゃないですか。
「仕事はどうしたんですかモショポーさ――おわぁぁっ?!!」
「せ、先ぱっ、あ、アレって……!!」
振り返るとそこにモショポーさんがいました。
どっから資金を調達したのやら元のエセ貴族姿に戻っていたのですが、そこはどうでもいい。
アシュリーが驚愕するのも当然、その両手いっぱいに、やわらかルビーこと、ドロポンウンコがいっぱいです。……あ、言っちゃった。
「う、わぁ……」
「ちょっとずつ、プリプリってしてたみたいっスね……。あはは……」
どうやら俺たちが気づかない間に、ドロポンさんってば鹿のように垂れ流していたもよう。
それを見つけたモショポーさんがせっせと拾い集めてここに現れた、という道理です……。
「なんや?」
「いや……うわぁ……」
「うわぁぁぁ……っス……」
さすがの強欲っぷりです。
しかし俺たちの微妙な反応にさすがの彼女も困惑を浮かべ始めました。
「な、なんやその反応はーっ! それよりアレクサント横取りなんてずるいでぇーっ! それにせっかくのお宝をそんなババっちぃ棒でぶっ刺すなんて……価値台無しやんかアホーッ!!」
ババっちぃってそれどっちの部分の話ですかね?
質にでも出していたんでしょうか。
せっかく取り戻したエセ貴族の服が……ドロポンのウンコまみれです。
「いやぁぁ……だってさ……。うわぁぁ……」
「先輩……。自分からはちょっと言えないっス……先輩からちゃんと説明するっスよ……」
「何やっ、何の話やはっきりせぃアレクサント!」
田舎情緒。バカンス。アシュリーとの楽しいお散歩。全部どこに飛んでったんでしょうか。
そこにあるのは、果ての無い言葉選びと、欲への呆れと、ウンコだけでした。
「じゃあこれもモショポーさんにあげるよ。そこに転がってるヤツも全部ね、全部。えーっと……だから俺たちの後に付いてくるといいよ。お目当てのブツもそこに……たれ流されるから……」
「なんやケチなヤツやと思っとったけど、意外と話わかるやーん♪ それなら文句無いでっ、言っとくけんど、宣言撤回なんて絶対させへんからなぁーっ!」
俺は言いにくい説明を放棄しました。
そこからひり出されるウンコ以外の何物でもねぇ現実を直接見た方がわかりやすいですから。
それにモショポーさんに気を使う理由なんてこれっぽっちもないしー?
「いやむしろ助かるっていうか、全力で回収しちゃって下さいっていうか……じゃあ始末の方よろしくお願いしますね」
ドロポンがぷるぷるぷるぷる……と恥ずかしそうに揺れます。
気持ちはわかりますけど回収しないと騒動が広がります。そういった意味ではモショポーさんに助けられたとも言えます。
「先輩はほんと性格悪いっス……。ドロポンも超恥ずかしそうっスよ。……ま、それがかわいい~っんスけど♪」
とまあそんな感じで落ち着きました。
俺たちは強欲のモショポーに綺麗でやわらかいウンコの処理を任せて、ブラブラと街道作りにいそしみました。
ときおり背後からはしめしめと大喜びされるモショポーさんから、大変下品な声が響きわたって来ます。
「ヒャハハハハハーッッ、もう笑いが止まらへんでぇーっ♪ 貧乏生活もこれでおさらばやっ、ついにうちに運が向いてきたわぁーっぷっぷぅー♪♪」
けれど長くは続きませんでした。
ドロポンが停止して、変色して、うんうんと力みながら赤い宝石塊を――ついに脱糞されちゃったのですから。
「ひっひぇっ?! こ、ここここ、これっコレってっ、これってつまり……クソやんかぁっコレェェェーッッ?!!」
ともあれドロポンとモショポーさんの活躍により、アルブネア新領南東までの街道が無事に出来上がりましたとさ。
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「く、クソはクソであるともっ、金目のものなのは変わらへんっ変わらへんのやっ! うちはクソまみれになってでも舞い上がって見せるでぇーっ、絶対、負けへんわぁぁーっ!!」
ちなみに回収の手は止まりませんでした。
元から品性とかプライドとかへったくれもない人ですし、結局開き直ってウンコを独り占めされました。
「たくましいっス……。絶対見習いたくないっスけど……」
「ていうかさ、ここだけの話。……あんな変なもの、詐欺師の前歴がある人から、保証無しで買う商人なんているのかな」
さすがの俺もアストラコンさんにドロポンのウンコ売る気にはなりません。
もし仮に、アレへとアイテム鑑定魔法を使ったら、ウンコの3文字がそこに現れるわけで……。
「負けへんでぇぇぇーっっ!! これはウンコやないっ、うちのお宝やぁぁーっっ!!」
これを処分するにはモショポーさんの不屈のがめつさと悪党根性が必要なのかもしれない。
そう思うことにして俺は現実とさよならバイバイするのでした。
「アシュリー、時間もちょっと余ったしドロポン屋敷に戻したら水浴びしない?」
「おっ良いっスね。だってモショポーさんのあの姿を見てたら……一刻も早くそうしたい気分になるっス……」
アシュリーと涼み直した後は帰領したみんなを歓迎して、自慢のドロポンを紹介しましょう。
今日は南東に繋ぎましたが道はまだまだ必要なのです。
がんばれドロポン、負けるなモショポー、それが宝石かウンコかを決めるのはけして鑑定魔法なんかではありません。
信じる心があればウンコも宝石に変わるのです。
まあ、あれは間違いなくウンコですけど……。