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25-2 ショタだけど飛竜と一緒に旅に出ます

 準備にそう時間はかかりませんでした。

 元よりヤツをさらいに行くつもりでしたし、だからせっせと商品乱造しておいたのです。

 予定外なことと言えば、知らないうちにアインスさんとアクアトゥスさんの腕が急上達していました。


 そりゃ半年も店主不在だったんですから、当然といえば当然の成長なんでしょう。窮地が成長を促したのです、喜ばしい限りです。

 ……じゃなくて、ホントありがとう二人とも。もし二人がいなかったらどうなってたやら想像するだけで怖い。


 そんなわけで店の方は問題ありません。いえあるとすれば別の部分にありました。

 俺です。迷宮で死にかけて半年の昏睡に至り、10歳の肉体に巻き戻ったアレクサントさんその人です。

 ソイツがまた懲りずに遠征するとか言い出すんですから、うん……彼女らの心境も複雑なようでした。

 だから俺にしてはおかしな行動になるんですけど、それぞれにお伺いを立てました。行ってきても良い? と。


「別に……。別に、アレクがアレクの好きにすれば良いじゃない。いちいちあたしに聞くなんて、何だか変よアンタ」

「そりゃお嬢には迷惑かけたみたいだからね。食事もまともに取らずガムシャラに仕事してたとか、さすがに俺だって心が痛むよ、今さらだけど心配かけてごめん」


 聞けばお嬢とグリムニールさんが俺を元に戻してくれたそうです。

 そうなれば彼女の許可はどうしても必要でした。


「……うん……本当に心配した。アレクがもう目覚めないんじゃないか、あたしのせいでみんなを不幸にしたんじゃないかって……ずっと怖かった……ずっと……」

「いやそこは聞いた感じさ、グリムニールさんが悪くない? 説明無しで昏睡コースとかあの人もあの人で勝手だよ」


 お嬢は許してくれました。

 だから安心して俺はレウラの背にまたがり、懐かしい友の元へと旅立つことが出来たのでした。


「アンタが一番勝手よ……。もうっ、さっさと行って帰って来なさいよっ!」

「もちろんそのつもりだよ。まあ外掘りからアイツ追いつめていくから、少しかかると思うけど。8号迷宮と比べたらちょろいちょろい」


 それと他のみんなも同じように許してくれました。

 まあ許す許さないじゃなくて、行くぞーって宣言にも等しいんですけど。

 ええ、人の話聞かないって自覚くらいありますよ。


 ・


「あれからずっと、兄様に覇気を感じられませんでした。原因もわかります……兄様はまたアトゥの為に、全てを捨てられたのです……」

 アクアトゥスさんは相変わらず何かを引っ張ってました。いやそんなこと言われても覚えてないし困るんですけど。


「それで兄様に笑顔が戻るなら、アトゥは兄様をお待ちします。いってらっしゃいませ兄様……」

「うん、よくわかんないけど行ってくる。アイツが来たらもっとここが面白おかしくなる、だから待っててね」


 人の気も知らないで、って顔をした気もします。

 でも俺は今、少年の姿をかたどっているのでそれも許されるんだろうって都合良く考えました。


 ・


「アシュリー、じゃそういうことだから」

「そっスか。自分が言うのもなんスけど、アルフレッドくんには同情するっス。でも先輩の気持ちもわかるっス。……だから結果に身を任せることにするっス」


 アシュリーは物わかり良いです。

 ヤツがどうなるかも俺たちの付き合いを知ってる以上、予想がつくんでしょう。

 ええそうですよアシュリーさん、アイツの夢のために俺はあえて鬼になるんです。

 ああ、かわいそうなアルフレッド、どうしてやろうかなーへっへへっ。


 ・


「ご主人様、グリムニール様がいらっしゃい、ました」

「ククク……またおかしなことを始めると聞いたぞ。だが我もいい加減ババァでな、いささか貴様が心配になった。その幼い容姿がいかん、非常にいかん。だからほれ……」


 それと出発前にグリムニールさんまで来てくれました。

 何をくれるのかと思ったら……。


「あれ、これって……俺のじゃん」

「うむ、すそ上げしておいてやったぞ。ババァの心のこもったお裁縫だ、嬉しかろう」

「針を通すのは、私が手伝い、ました」


 へー、老眼。じゃなくて。


「って! これキエ様から貰ったローブじゃん! こういう伝説級装備すそ上げしちゃっていいのかよっ、いや良くないよねっ?!」

「ふむ、良いか悪いかとで言えば……ククク、使わぬ方が罪と言うものよ。貴様が死ねばキエの好色ババァは悲しむ、それが一つの真実だ」

「ご主人様は、身体を小さくされた、のです。ご自覚なされて下さい……」


「だからってあーあ、伝説のローブが子供用に……。まあいいか、ありがとう二人とも」


 そういうわけなんです。

 俺はみんなに見守られて、美しくてわがままな飛竜レウラにまたがり遙か東方、アルフレッドの実家を目指したのでした。


 ヒルドガルド連邦帝国、アルブネア公爵家領エーミル。連邦国北部に位置するそこはちょうど冬。

 雪に閉ざされたその実家で、アルフレッドのやつはおそらくくすぶっています。

 そもそも本当に官僚を目指せているなら、辺境地の実家なんかにいるわけがないんですから。


 世話の焼けるヤツです。いっそもっと穴に向けて蹴り落としてやりましょう。


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