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24-5 そろそろ化けの皮を脱ごうと思う、後戻りは出来ない 2/2

「それでドロスくん、何の用事っスか?」


 ああそうそう、それより目的を果たさなきゃね。

 婆さんも僕の善性をアピールする良い舞台装置になってくれたし、ここはガツンいこう。


「ねぇアシュリーさん。実は僕、アシュリーさんにお願いがあるんだけど、いいかな……」

「お願いっスか?」


「うん、アシュリーさんを友達と見込んで頼みたいことがあるんだ」


 下手に出てやるとアシュリーさんはどこか嬉しそうに口元を微笑ませた。

 だけどそれが急に困り顔に変わる。あれ、何で?


「なんスかねぇその……妙なデジャヴを覚える発言は……。まあ、いいっスよ、なんスか?」


 ふん……アイツも僕と同じような頼み方をしてたってことかな、ちょっとしくじった。

 それに友情につけ込んで頼みごとするなんて、本当に軽くてうさんくさいヤツ……。

 でもそんなこと今はどうでも良かったんだった。だってこの一言で目的の正否が決まるかもしれないんだ。

 疑われないように純真なドロスくんを演じて、ある大事なお願いを投げかけることにする。


「あのね、僕ね、これから変な質問するかもしれないけど、誤解しないで欲しいんだ。そういうものがあるって話を聞いただけで、全部ただの好奇心なんだ」

「なんかよくわかんない前置きっスね。頼みにくい話だってことはわかったっスけど。で、自分にどうして欲しいんっスか?」


 今のところ疑われてはいない。

 いけるかも、僕は意を決して禁句に振れることにする。

 熱くドロドロした執念が僕の腹の底に渦巻いて、だけどそれを悟られぬよう押さえつける。

 無垢な少年の笑顔を猫毛のアシュリーに向けて、僕は大事な大事なお願いをした。


「僕ね、巨人の血を見たいんだ。だってリィンベルさんがどこかに隠しちゃって、お願いしても見せてくれないんだよ。アシュリーさんなら知ってるでしょ、どこにあるか僕に教えてよ……♪」


 純真で好奇心旺盛な気持ちを演じる。

 間違っても狙いを悟られちゃいけない、既にもうリィンベルさんには疑われてるんだから。


「だってアインスさんの呪いはそれで解いたんでしょ……? なら僕、実物を見てみたい……」


 なのに僕としたことが少しだけ執着心を声色に漏らしてしまっていた。

 でもきっと大丈夫、これまでずっと僕は良い子だったんだ。

 彼女たちがそんな僕を疑うはずがない。


「ソレはダメっス」


 あれ甘かったかな、アシュリーの反応は予定外にも硬直的だった。

 返答はただ一言だけだったけどわかる、とっくにリィンベルあたりから警告が来ていてもおかしくない。僕には喋るなって。

 だからこそそれを出し抜くための長い長い演技だったのに。やっぱり騙せませんでしたじゃ困るんだよぉ……。


「なんでさ……?」

「ダメなものはダメっス。それに超貴重品っス、エルフの里で殺し合いが起きたくらい、ヤバくてヤバくてヤバいヤツっスよ。危ないからドロスくんには絶対見せれないっス」


 危険物を子供から遠ざける。

 筋は通ってる、子供の軽い口なんて信用するべきじゃないもん。

 でもさ、アシュリーが何でそんなこと知ってるの? やっぱり誰かにこう言えって吹き込まれたんだね。


「えー、僕なら平気だよ。ねぇアシュリー、こっそり僕にだけ見せてよ、っていうかなんで隠すの……? 僕ら家族でしょ……そんなの悲しいよ……」

「うっ……。そうは言われても……ううっ、そんな顔しちゃダメっスよ、仲間はずれにしてるんじゃないっスから!」


 まんまと彼女は罪悪感を覚えてくれた。

 問題ない、僕は学習した、大人を舐めると大変だって。だから油断はしない。


「なら見せてよ……? アシュリーさんにとって僕が本当の家族だって、証明して見せてよ……?」

「そ、それは……だってアレっス! そうしろってあのロリババァがっ……い、いやなんでもないっス、自分なにも言ってないっスよっ!!」


 その一言ですぐにわかった。

 どうも後ろで糸引いてるのはグリムニールのババァだって。

 グリムニールが口止めしている。これは些細な言質だけど答えにも等しい。

 つまり巨人の血はあの老獪で厄介なババァが保管してるってことだ。


「ありがとうアシュリーさん、僕アシュリーさんのこと信じてたよ。そりゃ姉さんも好きだけど、僕アシュリーさんも、明るくてやさしくて大好きだよ……っ♪」

「はっはうぅっ! は、反則っスぅ! 先輩っ、先輩自分っ、道を踏み外しそうになるっスよぉぉっっ!!」


 なぜかアシュリーは空に向けて祈りだした。

 先輩ってやっぱりアイツだよね。

 ……こんなタイミングだけど少し気になる、一体ソイツはどこに消えたんだって。


「ねぇ……アレクサントって人、死んだの?」

「ッ――何を言ってるっスか! ピンピンしてるっスよ!」


 ならどうして居なくなったのさ。

 僕みたいな偽物をのさばらせて、好き放題されてるんだからふがいないバカだ。


「ただ……ちょっと調子が悪そうに見えるだけっス。風見鶏みたいなもんっスよ、今日は今日の風の方角を向いてるだけっス。でもいつか帰って来てくれるって信じてるっス。……みんなもきっとそうっス」

「よくわからないよ。でもありがとう、今からグリムニールさんのところ行ってみるね」


 もう彼女に用はない。

 グリムニールのババァが持ってるとなるとちょっと面倒だけど、そこは純真な少年のふりして盗んじゃえばいい。


「バイバイ、アシュリーさん♪ 本当にありがとうっ!」


 そうだよ帰ってこないヤツが悪いんだ。

 どこで死んだか知らないけどそこで見てるといいよアレクサント、キミが命をかけて手に入れたっていう巨人の血、この僕が貰っちゃうからね……。


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