23-3 上層はベリーイージー
迷宮を下へ下へと進んでいきました。
8号=ソロ専用の超ハードモード仕様の世界ですが、上の方はそんなでもありません。
しかしある法則により進めば進むほどに超ヤバい世界が広がってゆくのです。
そもそも先述の通り、事前に先生方に掃討をお願いしていおいたのでこれがスライム一匹すらおりません。
なので地下24層目までフリーパス状態なんですね~。
マッピングもしていただいたので、もうひたすら歩いて下って歩いて下ってを繰り返すだけだったり。
フロアそのものは入場制限にふさわしく大きくないのですが、それでも下り階段を含めて1フロア5分ほどもかかります。
ええつまりですねー。
(5 x 24) = 120分の下り道なんです。
全くもってこの暇も計画通りのものなのですが、予想に違わず……なんか微妙なテンションになっていきます……。
1匹くらい討ち漏らしのモンスターとかが現れてくれてもいいのに、先生方いい仕事し過ぎです……。
てなわけで、あえてこの上層最大の敵がいるとしたらコイツと言えるでしょう。
超重量のカートがたまに段差とかに車輪が引っかかって、すっげぇ重い!!
スロープ状の下り道とかメチャ引きずられるし! 迷宮に言うのもなんだけど、階段とかもうマジ止めてっ!
もう重過ぎで……。
こりゃ準備やり過ぎたかもと、こうして早くも後悔しかけてきた次第です……。
「ふぅぅ……」
そういうことですので、あっさりとはとても言いがたいですがダラダラトントンと地下25層目前まで下り切りました。
階段途中で二度目の休憩をして、同じく暇そうなレウラとドロポンにも警告します。
「お前ら、先生方の支援はここまでな。こっから先が本番、さあ行くぞ」
・
25層目に入りました。
この迷宮、だてに大公家の継承試練に使われちゃいません。
これまでの階層を振り返ると、通常の迷宮より装飾がやたらと細かく、各所に天使やら聖獣やらのレリーフが多数掘られていました。
でもまあそんなの珍しかありません。あくまで状態の良い神殿型のダンジョンでしかありませんでした。
「うわ……なにこれ昭和臭?」
ところがどっこいなんてこった25層。
その黒っぽい壁は鏡のようにどこもかしこも磨かれて、どっちを向いても俺、レウラ、ドロポン、俺、レウラ、ドロポンが二重鏡。
ここの到達者から話こそ聞いてたけど、なにここ……です。
その経験者たちによるとここは数多の冒険者を無慈悲に阻んできました。
どんなに強くともこの階層で沈むと記録にあります。
都市伝説みたいな話ですが、何でも鏡の向こうから自分自身が敵として現れるそうです。
ほらどこかで聞いた話でしょ。忘れもしません、エルフの隠れ里あたりでほら。
で、その分身は強さも何もかもコピーだそうで、いかに強くても結末は相打ち、あるいは冒険者側の撤退で終わってしまうそうでした。
「おいレウラ、お前うろちょろすんなよ。はぐれたらここ超めんどいからなっ」
「キュキュッ♪」
「だわはっ?! ふざけんなっ、お前を頭に乗せて歩いたら、マジで首折れるってのアホォーっ!!」
レウラのいつもの悪い癖はおいといて、でも問題なしです。
もし今度こそ自分自身と遭遇することになって、俺がそいつと戦うことになったとしても、このフレアやらアイスやらサンダージェムの出番がついに来るってだけですから。
巨人すらもお宝にしちゃうさすがの迷宮さんだって、俺たちの新型爆弾まで都合良くコピー出来るはずがありません。
つかそんな攻撃力過剰の俺同士が仮に戦うことになったら、このフロアどころか上下巻き込んで消し潰れるかと。
……ああ怖っ、とんでもない量の爆発物を持ち込んでますよ俺。誤誘爆したら完全即死。
「クルルッ……?」
「ああ重い……なんで飛べるんだよこの体重で……鉛みてぇ……」
綺麗に磨かれた壁を杖で傷付けながら進軍します。
面倒ですが左手の法則を使って地道に攻略することにしました。
……なぜかレウラを胸に抱いて。
「はははっこの甘えん坊さんめっ♪ だぁーっいい加減しろおらぁっ!」
最初は甘えてきてかわいいかなぁとも思ったものの、やっぱクソ重いので投げ捨てました。
手が痺れてジンジンします。なのにレウラのやつめ、今度はドロポンの背中に着地しやがるのです。
こいつはアレか、地を行く生物全てを乗り物か何かと勘違いしてないですかね?
・
「あ、下り階段だー、やったー」
うーんラッキー、てか自分の変な体質に感謝?
よくわかんないですけど、今回も誰とも会うことなくあっさり突破しちゃってました。
つまり俺のコピーなんてどこにもいないんですね~。
おお、なんか哲学的!




