18-01 その後の経過報告
前章のあらすじ
非常勤教師アレクサント、アクアトゥスとウルカの卒業式に出席する。
行事嫌いの彼は帰宅するなりベッドに倒れ込み、定かではない過去を夢見る。
夢は突然の轟音により中断された。
寝ぼけまなこで見ればキングサイズのベッドとアクアトゥス、その親友ウルカが彼の枕元に現れていた。
ここで暮らしたい、この部屋をよこせ。
彼女らの強引めな願いを彼はあえて受け入れ、ならばいっそとアトリエ増築計画を発案するのだった。
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それからまたしばらくして、わけあってアレクサントはタダ働きをすることになった。
アトリエをよく訪れる少女、青髪のサティ。
彼女が病気の母親を治して欲しいと、錬金術師アレクサントに頼りすがったのだ。
それは極めて緩やかな死を呼ぶ石化毒。
凶暴なレアモンスター、暴君バジリスクによるもので、解毒方法がまったくわかっていない。
錬金術師アクアトゥスの知識によると、そのタイラントの素材さえあれば薬が作れるかもしれないという。
そこでアレクサントは古代の遺産スペルタクルスで標的タイラントが現れる迷宮を調べあげる。
だがその危険性から強い反対を受けて討伐は中止となってしまった。
と見せかけて、彼は飛竜レウラ、涙もろい恩師ダンプ、およびマナ先生の協力をあおいで迷宮を下っていた。
その廃スペック過ぎる仲間たちの活躍で無事タイラント・バジリスクの素材を入手する。その後ちょっとした災難に遭いながらも。
ともあれ解毒剤によりサティの母は救われた。
彼女は子供ながらのありったけの思いで錬金術のお兄ちゃんに感謝を叫び、たまたまそこに現れた色男ロドニーの方に告白をするのだった。
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日常に忍び寄る悪意 アインスの素性を知る者
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わたくしはここで生まれました。
過去などございません。
造物主である主人に尽くす。
それがわたくしの存在意義でございます。それ以外が必要だとは思えません。
我が主人が過去に使命を捨てたように、わたくしはわたくしとして生まれ直す必要があったのです。
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18-01 その後の経過報告
近々一度店を閉めなければなりません。
といっても悪さして営業停止食らったわけじゃないですよ。
うちはただ適正価格で暴利をむさぼってるだけですから、同業者の恨みもそんなに買ってないはずです。ええ、そう思いたいところです。
あ、じゃなくて。
そうじゃなくて、近々アトリエ増築の手配が整いつつあるのですよ。
裏の立ち退きももうじき済みますし、石材その他の手配もほぼ整っているそうで。
後は作業員が集まるのを待つだけ、といっても過言じゃない素敵進捗状況です。
てか予定より建設規模が膨れ上がってるというか何というか……上手く行けばもう一軒分土地確保出来そうだったり、するかも。
あ、ちなみに工事中は商売も調合も難しいですから、全部お休みにしちゃいます。
在庫商品は一周年セールとかこつけて、ドーンとお祭り騒ぎにして売りさばいちゃうことになりました。
それが終わったら工事が終わるまで長い休暇です。
何をして過ごすのか、当面の滞在場所をどうするのか、そこんところは何かお嬢に考えがあるらしくいっそお任せしちゃいました。
運が良かったらお嬢の故郷に招待してもらえちゃったりするんでしょうか。
……人間はダメって本人は言ってましたが。でもほら、団体客ならOKだったりしませんかね。ダメ? やっぱダメお嬢?
……あっ、それはまあここに置いといて。
妙な客が現れたんですよ。
ええ、うちは妙な客ばかりなんでそう言われたところで、また新しい騒動の始まりかと思われるでしょうけど。
しかし今回のやつらは飛び抜けて妙というか、いえ……ちょっと冗談じゃ済まないような人たちだったのです。
さすがの俺も茶化しきれない、真面目にならざるを得ない事件が起きました。
はい、彼らはうちのアトリエにこう注文したのです。
娘を60万zで売ってくれ、と。
今さらですが各章の頭はあらすじにより短くなりがちになります。
どうかご容赦下さい。




