パステル
汚いものばっかり
そんな風に君はため息をついて笑うけど
そんなことはないよ
ほら顔を上げて? 案外悪い景色じゃないでしょう
「確かにさ」
君の言うとおりだよ なんて君は言う
拗ねたように口をとがらす君に僕はため息をつく
「そんなこと」
難しいことじゃない 首を振る僕に
君はやっぱりほほえんで
あの日の あの時間、空間も すべてすべて
優しく包み込んで
なんとなく 幾度なく 何度となく つないだ右手は
今も君を 探している
あの日の あの音色、見えた色 君の体温
淡い色で染め上げて さあ、行こうか
君のいない世界へと
耳をふさいでばかり
そんな風に君は世界から逃げ回って
つらかったよね
でも何でだろう? 存外そんな君も愛しくてさ
「大丈夫」
君の耳をつつんで 僕は呟いて
拗ねたような君に世界の色を精一杯語り継ぐ
「そんなこと」
難しい事だって 首を振る君に
僕は教えてあげたくて
あの日は あの時間は空間は 戻ってくれない
優しく包み込んだ
なんとなく 幾度となく 何度となく 思い出す記憶
あの日の あの音色、見えた色 君の体温
淡い色で染め上げて―――――
君がいた いつでも そう、いつまでも
いると思ってた
当たり前に 引き裂かれ なくなる、なんて
思ってもいなかった
今なら少しの後悔と涙で済ませられるのかな?
君の残した思い出はまだにこやかにほほ笑んでるのにさ
あわい………
紫の瞳が僕をずっと惑わす
これでいいのかと もういいのかと 無邪気に笑いながら
ねえ
くすんでる? ぼやけてる?
もう見えないよ それでも
淡い色で全部染めてしまおうか
あの日の あの時間、空間も すべてすべて
優しく包み込んで
何もない 君もない 空っぽの 薄紫色
それでも……
愛してる
あの日の あの時間、空間も すべてすべて
愛していられる
さあ行こうか
君のいない世界へと