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第11話~財布~
11日目、水曜日。
「結城さん、お大事に」
昨日に引き続き脚の診察をして貰い、待合室に戻った私は椅子の間に財布が落ちているのを見付けた。
「一日一善」
直ぐに総合受付に向かうと女性が何かを訴えていた。
「もしかしたら、これをお探しでしょうか?」
「ああっ!? それは私のお財布! 有り難う御座います……」
私が財布を見せると、途端に涙ぐむ女性。どうやら合っていたらしい。
――お礼を受け取ってしまうと一善にならないので、断るのに苦労した。
私の母はスマートフォンを使っているのですが、過去に病院のトイレに置き忘れてしまった事があります。
慌ててトイレに戻るも既に無くなっており、すがる思いで受付に向かったそうです。
結果、落とし物として届けられており、スマートフォンは無事に母の元に戻りました。
私は個人情報の漏洩や、コピーされて悪用される事を恐れていたのですが、幸いにして被害はありませんでした。
今回は拾って下さった方が、善良な人で助かりましたが、これからは注意して欲しいものです。