⑧、~成果と強敵~ 後編
後編です。長いです。
俺はもう1度、ブルーゴリラの肩に切りかかる。
「斬撃、六ノ型……ッ!」
いつの間にか来ていた拳を紙一重でかわす。
さっきまでとは動きが全然違う。
「リル! 9の魔法を頼む!」
「うん! 時間かかるからお願い!」
「まかせとけ!」
怒ったブルーゴリラの動きはハッキリ言って危ない。
けど、お願されたから頑張るしかないな。
俺も無茶な頼みをしたしな。
ランク9の魔法は、ハッキリ言っておかしい。強さが。
その代わり莫大な魔力と特殊な詠唱が必要だ。
たぶんリルはランク9の魔法を使ったら、疲労で動けないだろう。
まあ、倒せると思うが。
「とりあえずいきますか!
斬撃、四ノ型――《スラッシュカッター》!」
一文字の斬撃波がブルーゴリラに向かって飛んでいく。
ブルーゴリラは腕を横薙ぎに振って、《スラッシュカッター》をかき消す。
こちらに気を引かすための攻撃といえ、かき消されるとは……。
また、何度も避ける作業が始まった。
けどきつい。
「風よ、加速の力を、身に付加となせ――《ウインドアクセル》」
ランク5の風魔法だ。
《ウインドブースト》は瞬間の速さを上げ、《ウインドアクセル》は数分間の間の速さを上げる。
《ウインドアクセル》のおかげで、だいぶ楽に避けれるようになった。
やがて、リルの魔力の上昇が終わった。
そろそろか……。
リルは詠唱を始めた。
「拡散した氷よ、荒れ狂う氷槍となせ――《ブリザードスピア》!」
ランク9の水魔法だ。
《ブリザードスピア》はブルーゴリラを襲う。
最初の方は拳で壊していたが、間にあわずに次々に身体に刺さっていく。
やがて体は氷で覆われ、見えなくなってしまう。
「……やったか」
ブルーコングがいた場所は、刺々しい氷の塊が出来ている。
中は見えない。だが、動く気配は無かった。
……ブルーコングありがとう。
「やったなリル、お疲れさん」
疲労で疲れて動けないリルの頭をなでる。
それに対して、リルは微笑みで返していた。
「さて、帰るか」
早く休みたいしな。
リルの方を見る。
唖然とした顔をしている。
「どうした、リル? 何処か悪いか?」
口で何か言おうとしているが、リルは
声を発する気力もないようで、声が出ない。
だが、焦っているようで何度も口を動かす。
俺は何とか読み取ろうとする。
あ
ぶ
な
い
う
し
ろ
を
み
て
まさか……。その瞬間、氷が砕ける音がする。
後ろを振り返る。
だが、予想とは違う事が起きていた。
予想より遥かに酷い事態。
俺らの戦闘につられてくる奴がいたのだ。
「今度はイエローコングかよ……!」
氷を砕き現れた正体。
第2Rが始まろうとしていた。
俺はまずリルを安全な場所に置いてきた。
逃げたいとこだが、この体力では厳しいだろう。
なんせ、ブルーコングより強いのだ。
ならば、方法は1つしかない。
「第一の黒の制御よ、今こそ解き放て――《ファーストリリース》」
左についていた黒の腕輪が消える。
そして、今まで制御していた力が解放される。
魔力が一気に身体を巡る。
余りの魔力に、酔った感じになる。
「ふう、何とか慣れてきた……で、お前はどうするのかな?」
イエローコングは目に見えるほど怯えていた。
「今なら許す、去れ」
俺は背中を向けて去ろうとする。
「ウホホホオオオオ!!!!」
イエローコングは襲ってくる。
まあ、想定内だがな。
「あめぇよ……、風よ、鋭い刃と成りて切り刻め――《ウインドカッター》」
イエローコングは真っ二つになり、絶命する。
「俺の相手を貶すような行為、
そんなことする奴には感謝なんかできなねぇな。死んで悔やみな」
俺は、そう言い残してリルのもとに行った。
リルのもとに行くと、リルは寝ていた。
「無事だな、さて帰るか」
リルをおんぶして、今度こそ小屋に帰った。
戦闘がやっと終わりました。
過去編もそろそろ終わりです。