⑦、~成果と強敵~ 前編
前編です。
リルと特訓を始めてから3ヶ月が過ぎた。
あれからものすごい速さで習得していった。
もう、流石としか言いようがなかった。
俺はと言うと、いつも通りの魔力のコントロール、それと剣の腕を上げている。
この前の【グレイリザード】に弾かれたのが思ったより堪えた。
なので、剣は常に急所を狙えるように、魔力は剣に纏う時に鋭く出来るように、
そんな特訓を繰り返している。
お陰さまでほとんどの敵は倒せるようになっていた。
なので、腕試しのとして今日は一緒に狩りに行く。
横ではリルも張り切っている。
「何を倒すの? 熊? それとも……蜥蜴?」
「ううん、もっと強い奴」
「ほんと!? むむむ、頑張らなくちゃ!」
そんなリルの姿を見ると、微笑ましくてこっちまでやる気が出る。
「さて行くか!」
「おー!」
西方向に行き、森があるギリギリのとこまで行く。
その時、大きな気配を感じる。
動く気配はない。しかし、相手も俺らに気付いているようだ。
やはりこいつは強いな。
俺らは気配の方に近づいて、やがて行き着く。
だがそこには誰もいない。
「グレイ、ここには誰もいないよ? 気配もないよ?」
「リルはまだ甘いな。気配は魔力で探すのもいいが、
こういう時に魔力を消す事が出来る奴もいる。
そんな時は感覚で探さなきゃな。今敵は、俺らの後ろ上だ」
リルは後ろ上を見る。
そこにいた敵は、大猿――ゴリラだ。色は青。
名前は【ブルーコング】だ。
色だけみると弱そうに見えるが、あの大猿はランク1から凄く強い。
1度だけグリーンコングと戦ったが、かなり苦戦した。
今回はランク1個上でとても強いだろう。
しかし、俺たちは2人だ。その強みは大きい。
「リル、来るぞ!」
ブルーコングは落ちて来る。
リルはその時を狙っていた。
「水よ氷塊となせ――《アイスクラスター》」
ランク6の水魔法だ。
ブルーコングに直撃するが、びくともしていない。
そして地面に着地する。
俺は走って近づく。
「斬撃六ノ型――《焔切り》」
ブルーコングの肩を焼きながら切る。
致命傷とまではいかないが、傷を与える。
しかし、そんな傷をもろともせず、拳を振ってくる。
拳は速い。が、なんとか俺は避ける。
もちろん反撃の隙などあるわけがない。
なのでひたすら避ける。
だがそれでいい。
なんだって最高のパートナーがいるからな。
リルは声を上げる。
「雷よ、乱雲轟き大地を穿て――《サンダーボルト》!」
ランク8の雷魔法だ。そして俺も同時に魔法を唱える。
「風よ、疾風の速さを身に付加となせ――《ウインドブースト》!」
ランク4の風魔法だ。
落ちる前に俺は、《ウインドブースト》によって得た速さで後ろに下がる。
ブルーコングは俺を追うが、《サンダーボルト》が先に落ちる。
「ウキャアアアアアアア!!!」
凄い威力だ。ブルーコングが叫ぶのも分かる。
だが、ブルーコングは倒れなかった。
これには、さすがに驚いた。
リルも信じられないと思っているのだろうか、身体が少し震えている。
「ウホホホホホオオオオオ!!!」
ブルーコングは、怒りをあらわにしたように叫ぶ。
「リル、まだ先は長いが頑張るぞ」
「……うん!」
「大丈夫、俺達なら勝てる!」
俺はそう言って、ブルーコングに突っ込んで行った。
初の前編と後編です。
戦闘がここまで長くなるとは思ってませんでしたが。