2、魔法と歴史
昼食を取った後、俺は書庫に向った、クレアではなくメイと。
もともと、一緒に行こうと約束したクレアと行くつもりだったが、メイが
「クレア様、確かまだ、お仕事が残ってましたよね? まずはあれを片づけて来て下さい。終わるまでの間、私が教えていますので安心してお仕事をして下さい」
と言って、クレアは無理やり自室に戻させて(そう見えただけで確信は持てないが……)、メイと俺の二人っきりで書庫に行くことになった。(リルもいるが、剣に戻っているため今は人数として数えていない)
そして、書庫に行く途中でメイが止まり、俺に向かって、
「今のうちに注意をしておきます。あなたがとても強いとしても、クレア様に対する態度が酷すぎます。今後、言葉遣いに気を付ける事とクレア様に敬意を払う事をお願いします」
「あ、はい、分かりました」
思わずそう答えるしかなかった。
そんな事もありながら、書庫の扉の前に着く。扉を開けると書庫は思ったよりきれいで、また、目を見張るほどの本があった。早速俺は、
「メイさん、とりあえずここにある魔導書を全部見せてもらってもいいでしょうか?」
さっきのせいで敬語になってしまっている俺だったが、メイさんはそんなことを気にせずに俺を魔導書がある場所まで連れて行く。着いてみると、見たところ、ざっと五十冊はあるだろう。俺はその中からきになった物を選ぶ。
数分後、魔導書を選び終わる。選んだのは、転移魔法魔導書、合成魔法魔導書の上、中、下巻だ。
転移魔法とは名前の通りで、移動する魔法だ。例が、自分だけを一瞬で移動させる【ワープ】、座標指定をして物体を移動させる【テレポート】などがある。とても便利な魔法があったものだ、早く知っておきたかったな……。
次に、合成魔法とはこちらも名前通りで、魔法と魔法を合成させて放つ魔法だ。例えば、雷魔法の【サンダーボルト】と火魔法の【プロミネンス】を同時に出して、放つ時に合わせることにより、合成魔法の【プロミネンスボルト】(またを、【紅炎落雷】と呼ばれる)を放つことが出来る。威力は、二つともランク5の魔法だったが、【プロミネンスボルト】はランク9に位置する。それだけ合成魔法は強い。
しかし、使うには条件がある。一つ目は、合成させるための魔法のランクは必ず一緒にしないといけない。二つ目は、威力は綺麗に5:5に分けないとならない。この二つを守ればいいのだが、これがとても難しいらしくあまり使う人はいないらしい。しかし、使えるの確かだ。
俺はこの四つの魔導書を黙々と読み続けた。読み続けていると、凄く使える魔法がどんどん出て来る。二時間ぐらいで俺は読み終わった。満面の笑みで本を片づけているとメイさんが、
「さて、今読んでみた魔法を使ってみる為、訓練場へ行きますか?」
と聞いてくるので、俺は頷く。実際、訓練はクレアとしたかったけど……。そう思いながら扉に近づいていくと、扉が開いた。
「メイ、仕事全部終わらせたわよ!」
そこには、疲れているのが目に見て分かるほどのクレアがいた。メイさんは、
「え……嘘ですよね!? あの量をこの短時間で終わらせるなんて無理です!!」
「でも終わらせたよ、見たところ、本も読み終わって訓練場に行くところかな?」
クレアはそう聞いてきたので、
「はい、行くところです」
俺はなんとか敬語で答える。しかし、その敬語に気付いたクレアは、
「ん? グレイ、どうしたの敬語なんて使って? あ、わかったメイに強制されたでしょ!」
さっきといい、今回といい、クレアの読みが凄すぎるわ。俺がそう思って声を出さずにいると、クレアは、
「グレイ、メイの言う事聞かなくっていいって、グレイかメイと話す時だけ、姫様の顔をしなくていいのに、グレイがこんなんじゃ気を休める時間が少なくなるじゃない」
かわいらしく怒るが、メイは、
「クレア様! 自分の立場をしっかり考えて下さい! また、そのような所を他の人に見られて困るのはグレイですよ!」
迫力がある怒りをする。それを見るクレアはやれやれという感じで、
「勿論、考えているわよ。その上で言ってるに決まってるじゃない、後、グレイは大丈夫よ、なんだってこの国で一番強いわ、そんな人が困るわけないじゃない」
「クレイ様よりも、ロビン卿よりもですか!?」
「勿論じゃない」
クレアがそう言うとメイはかなり驚き黙り込んでしまう。なので、俺は、
「じゃあ、俺は敬語じゃなくていいのかな……?」
「良くありません!」
すかさずメイさんは言ってくるが、
「メイ、それ以上、口を入れて来るなら、侍女を解雇するわよ」
クレアが強い口調で言うとメイはすぐに黙る。クレアは俺の方を向き、
「さてグレイ、訓練場へ行きましょうか」
「あ、ああ」
俺はメイの方を一度見てそう言う。メイはもう何も言うつもりはなさそうだ。その後、俺はクレアについていって訓練場に着いた。一応、メイもいる。
広さは、闘技場とあまり変わらなかった。俺たちは真ん中に行き、そしてクレアが、
「では、始めましょうか。なにからするの?」
「んー、転移魔法から行くか」
そういって、とりあえず転移魔法を唱えてみる。
「【ワープ】」
そう唱えると、壁際まで一瞬で移動する。確かにこれは使える。俺はもう一度、【ワープ】を使って元の位置に戻る。
「一回で成功させるかな……」
そう言って苦笑をしていた。
その後も、【テレポート】、自分以外の物体を運ぶことが出来る【トランスポート】などを練習して、一度で成功させていく。出来る範囲だったが一通り、全てやった為、次の練習に入ることにした。
「えーと、次の練習は合成魔法だな」
俺がそう言うと、クレアは、
「合成魔法ね、あれは結構難しいけど、大丈夫かな? 私でも失敗する時はあるわ」
「まったく、どの口が失敗するとか言ってんのかな、あの超魔法を放っている時点で合成魔法は完璧って言う意味だろ」
「やっぱり気付いていたわね」
クレアはあははと笑う。
あの超魔法とは、大会の決勝戦の時にクレアが使った魔法だ。あれは七つのランク7,8の魔法を合成する事が出来るほどの実力を持っているため、失敗するなどまずあり得ない。
クレアは言う。
「あれは特別な魔法なんだけどね」
「特別……?」
「そう、特別。あの超魔法は、このアーカーデンにいる、六王家それぞれの鍵人にしか使えないの」
「え、えーと?」
色んな知らない言葉が出過ぎて混乱してしまった俺に、クレアは丁寧に説明してくれた。
「六王家は分かるわよね? 三大王国のアルフェア、カーリス、デリンダーと、近辺王国のインカル、ルジェイロ、アメイルがあって、そこには、鍵人と呼ばれる姫様がいるの。鍵人とは、昔、六人の姫と三人の異界の勇者がいたの。その九人は魔王を命と引き換えに封印したの。その時に九つの鍵が現れて、六つの鍵はそれぞれの国へ飛んで行き、話ではそれぞれの妹達の身体に入っていったらしいよ。残りの三つはどこかには飛んでいったらしいのだけど、消息はつかめないままで終わったらしいわ」
その話を聞いた俺は、話と状況を整理して、クレアに質問をしていく。
「まずは、異界の勇者ってどういうことだ? なぜ異界の者だと分かったんだ?」
「簡単じゃない、自分達が異界から来たと言ったからよ」
「なるほど、次に、クレア、自分が鍵人だと何故分かったんだ? その、特別な超魔法が使えたからか?」
「それもあるわね、けど、五歳の時に継承式があるの、その時にもと鍵人、母親にもらうわ」
「なるほどね、じゃあ最後に、残りの三つはいまだに見つからないのか?」
「まあね、けど、一つは見つかりそうだわ」
「その一つはどこにあるんだ?」
おれがそう聞くと、メイは怒りながら、
「グレイ、さっきから何を聞いているのですか、そんな常識すら知らないのですか!?」
やはり常識だったらしい。けど、知らなかったので何とかごまかそうと思った時、クレアが、
「メイ、しょうがないじゃない、グレイは異界の勇者のだから」
「「えっ!?」」
メイと俺は同時に驚く。多分メイは、俺が異界の勇者と言う事に、俺は、何故異界の者だとばれた事にだ。メイは喋れそうにも無いので、俺が先に聞く。
「何故、俺が異界の者だと分かったんだ?」
「私に魔法を教えてくれた師匠が異界の者だったからよ。見た目と言い、雰囲気と言い、もの凄く似ているわ」
「なるほどね……って、クレアの師匠は異界の勇者だったのかよ!」
「そうよ、だから私はここまで強くなれたわ。けど、師匠はもう亡くなったわ」
「……そうか」
クレアは本当に相手の心を読めるようだ。俺は考えたことは、その師匠に出会って、ここでの生き方と失ってしまった記憶の戻し方を聞こうと思っていた。しかし、もうそれは叶わないことになってしまったが。
「まあ、ありがとよ。よし、とりあえず合成魔法の特訓でもするか」
「そうね、じゃあ、ビシバシ行くわよ」
「ハハ……、お手柔らかに」
その後、訓練場では、クレアの元気のいい声と男の悲痛の叫び声が聞こえ続いていたと言う。




