②、~特訓と制御~
異世界に来て、現在一週間がたった。
そして、俺は頭を抱えていた。
ココは森だ。森のはずだ。
だけど、焼け野原のなっている。
「なんで、制御できないんだよ……」
この一週間は魔力の制御の練習に費やした。
何とか一回り小さな威力となったが、まだ強すぎる。
「どうすればいいんだか……」
とりあえず焼け野原を戻すか。
「自然の風よ、草木を、緑を、蘇らせたまえ――《グロウ》」
目の前はたちまち、緑でいっぱいとなる。
こんな魔法があって本当に良かったと思う。
「とりあえず休むか」
少し向こうにある大きな木に向かう。
その根元には、魔導書と箱が一緒に置いてあった。
俺は座って箱を開ける。
中にはレタスの様な野菜で肉を包んである食べ物だった。
「よし、頂きます」
この野菜は近くにあった水辺に生えていた。
レタスに似ていたので食べてみると、まんまレタスだったので、沢山採っておいた。
肉は、黄色の牛の肉だ。初めて見たので捕まえてみた。
味は青の上位だけであって美味しかった。
食べ終わって、魔導書を読む。
「なんか便利な魔法ないかな……!? これは!?」
とうとう見つかった。
なんとなくあるのではないかと思っていた魔法が。
「制御魔法――《サプレッシング》……、自分の全ての力を10分の1にする。
また、何重にすることも可能。けど、こんなドMな魔法を使う奴が現れない事を願う」
ゴメン、ここにいるよ、訳あり変態が。
読んで思わず、作者に謝ってしまう。
けどこれは使える。早速使おう。
「闇よ、自身に備わる力、魔力、全てを制御せよ――《サプレッシング》」
唱えた瞬間、右腕に黒い腕輪がはめられる。
そして、力が弱まったのが自分でも分かった。
「よし、これいいじゃん! 腕輪もダサくないし」
さっそく魔法を使ってみる。
「火よ、焼け――《ファイア》」
今までより、遥かに弱まった火が出てきた。しかし、
「これでも、強すぎるな」
実際に目の前は、今までより小さいが、焼け野原となっている。
「もう一回かけとくか」
そして、《サプレッシング》をかける。
身体の力が弱まっていくのがハッキリ分かった。
「おお、これはいけるんじゃねぇか!?」
そして、魔法を使う。
《ファイア》はゲームで見たような小さな火となっていた。
「よっしゃ! これで色んな魔法が練習できる!!」
その日は、テンションが高かったので、魔力切れを起こすまで特訓した。
そして、途中で寝てしまった。
俺は、朝日とともに目が覚めた。
「あ~良く寝た、……何かいるな」
静かすぎる。そして、この頃の特訓のお陰で研ぎ澄まされた感覚により分かった。
かなり大きい。近づいてくる!
バキッ、と木々を折って行く。
そして、そいつの正体が明らかになる。
牛の顔、人型、そして大きな身体と大きな斧。色は茶。
「……ミノタウロスか」
「ブモオオゥ!」
その声とともに斧を振ってくる。
皆、いきなり襲ってくるな。待ってくれてもいいのに。
紙一重で避ける。何度もそれが続く。
……隙が見つからない。
今までの魔物中で一番強いという事が分かる。
そして、俺が弱くなったのもよく分かった。
「けど、こいつぐらいこの状態で倒せないとな!」
攻撃を避けて、大きく後退する。そして、魔法を使う。
「炎よ、燃やせ――《フレイムボール》」
ランク3の火魔法だ。
火の玉より大きい、炎の玉がミノタウロスを襲う。
数秒すると、ミノタウロスは焼き焦げていた。まだ生きているか……。
「風よ、鋭い刃となりて、切り刻め――《ウインドカッター》」
ランク3の風魔法だ。
二つの風の刃がミノタウロスを三等分に切る。
「炎よ、焼け――《フレイム》」
ランク3の火魔法だ。
絶命したミノタウロスは、たちまち燃えて消える。
酷いと思うかもしれないが、これは意味がある。
戦った相手に対して、せめての償いでもあり、尊重するためだ。
自分が死んでしまった時に、死体はさらしたくない。
そう思った為、俺は燃やした。
「ありがとよ、ミノタウロス」
俺は、静かな森を歩いて家に戻った。
けど、最後のは酷いという方、すいません!