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⑩、魔法使いの戦い



 闘技場入口に俺達が戻ると、クレアが寄ってくる。


「お二人ともお疲れ様」


「ありがとうございます」


「どうも」


 クレアの労いの言葉にメリッサ、俺の順に感謝の言葉で返す。

 クレアは笑いながら言葉を続ける。


「メリッサも強かったけど、グレイ、あなた強すぎるわね」


「まあ、本気で戦ったからな」


「そうですか、決勝戦を楽しみにしていますわ」


 クレアはそう言って、闘技場に向かった。

 俺はこの試合に納得は行って無かった。 本気を出したが、余りにも俺が弱すぎる。 何故か結局わからないので、何か知ってそうなリルに後で聞くことにした。

(あの日の夜の記憶の一部分が無くなっているので、漆黒の首飾りの事に気づいていない)

 その時、不穏な空気が漂う。 俺は、思わず後ろを向くと、そこにはタルトスがいた。

 タルトスは、ゆっくりと闘技場に向かう。 俺はこの空気に気おされて、動くことができなかった。



 闘技場では、また、凄い盛り上がりを見せていた。


『いや~次の試合も盛り上がりそうですね』


『今大会のトップ2の魔法使いの戦いですからね、本当に楽しみですよ』


『さて、2人はどんな戦いを見してくれるのか、しっかり目に焼き付けましょう! そろそろ始まろうと

しています』


 クレアとタルトスの間の空気は張り詰めている。


 (5、4、3、2、1、0)


『試合開始だ!!』


 始まるとすぐに、2人は魔法のラリーが始まった。

 どちらも無詠唱で、

 クレアが火魔法の《ファイア》をたくさん放つと、タルトスは水魔法の《ウォーターウェーブ》で相殺する。

 また、クレアが雷魔法の《落雷サンダーボルト》を放つと、タルトスは防御魔法の《魔法防御壁バリアー》を二重に張って、相殺する。

 またまた、クレアがランク8の水魔法の《氷雪のブリザードスピア》を放つと、タルトスはランク8の火魔法の《黒炎のコロナウォール》を張って、全部溶かす。

 そして、一旦そこで終わる。 ここまでにかかった時間は、一分足らずだ。 観客たちはあまりのレベルの高い戦闘に声が出ない。

 タルトスが、手を上にかざして詠唱を始めた。


「生きとし生ける者共……」


 俺はその詠唱を聞いて、観客達に急いで《魔法防御壁バリアー》を張ろうとする。 今、観客達の所には《バリア》は張っている。 だけど、タルトスが全力で使おうとしている魔法には行くも簡単に壊されるだろう。

 俺は無詠唱だったが、《魔法防御壁バリアー》を張る。 身体から異常なほどの魔力を使って、とても分厚いバリアーが出来た。 何故、こんなに魔力があるのか不思議に思ったが、今はどうでもいい。とにかく張れてよかった。

 タルトスはさらに詠唱を続ける。


「全ての生命ごと凍らせよ――《絶対零度コンゲラーティオ!》」


 水の大魔法。 闘技場が凍っていく。 クレアもこの魔法に途中で気付いたようで、詠唱に入っていた。


「生きとし生ける者共、全ての生命ごと蒸発させよ――《エクスハラティオ》!」


 火の大魔法。 こちらは制御しているため、周りに影響を与えずに、氷を全て溶かしていく。

 そんな大魔法が闘技場ではぶつかり合っている。 何とも言えない光景が目の前で広がっている。

 相殺で終わると思いきや、クレアが押し切って、タルトスを蒸発させた。 その後すぐに、タルトスは指輪のお陰で戻ってくる。 そこで、試合に決着が着く。


『勝者は、クレアだ!!』


『いや、レベルが高すぎる試合でしたね』


 観客も歓声を上げる。 しかし、まだ納得していない者が一人いた。


「……おい、待ちな」


 とても低い声が響く。 タルトスの声だった。


「何か用? 早く帰りたいのだけど」


 クレアは何ともないような声で返す。


「ククッ、帰りたいか、それは無理だ。 ここであんたは死ぬのだから!」


 タルトスの身体が見る見ると変わっていく。 やがて、ある化け物になる。

 その化け物とは、黒い身体に赤い目と角が生えたガーゴイルだった。

 その場にいた全員が驚く。 そして、タルトスはこう告げる。 


「我が主の目的、【アルカディア】の為に全員死ね!!」


 そう言って、クレアに向って口から火を吐いた。




 ここは、タルトスの主がいる場所。


 王座に座る主と、周りに色んな色のローブを着た者達が、真ん中にある大きな水晶を囲むようにしている。

 その水晶には、闘技場の様子が映っていた。


「主、タルトスがガーゴイルに成りましたが、どう致しますか?」


 赤いローブを着た者が、王座に座る主に聞く。


「一応、あれを用意して置け、多分タルトスが負けるだろう。 だが、ここで負けたら困るのでな」


 主は笑いながら言って、再度水晶に目を向ける。


「さて、灰色、いや、グレイはどう出るかな?」


 不気味な笑みを浮かべていた。

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