⑨、~グレイとメリッサ~
闘技場では、驚く程の声援が響き渡っている。
『凄い声援ですね、今回の大会で最もの盛り上がりですね』
『選手が凄いですからね。 なんだって、片方は、皆に人気で王女直属騎士団長のメリッサ選手、また一方では、今回の大会初出場でもの凄い強さを見せつけたダークホースのグレイ選手。 今までとは一味違うね』
『これは本当に楽しみですね、さて、メリッサ選手とグレイ選手は真ん中で向かい合いました!』
俺は、長剣を中段の構える。対して、メリッサは、腰を落とし、前かがみになって、右の剣を前下に、左剣を後ろ上にして構える。そろそろ始まると言う時にメリッサが声をかけて来た。
「いい試合をしよう」
(5、4)
「ああ、そして、楽しもう」
(3、2)
「……始まる、行くぞ」
(1、0)
『試合開始だ!』
「「オオオオオオォォォォ!!」」
俺とメリッサは、叫び声と同時に前に突っ込む。 そして、俺の長剣とメリッサの双剣がぶつかり合う。 激しい金属音鳴り響き、そして俺らは弾かれるように離れる。
メリッサは、地面に着地すると、すぐに俺に向かってくる。
俺はとにかく避けることにした。
メリッサは、ルーカスの時のように、右の剣を振りおろして、左で横薙ぎ、また、右で振り降ろすの繰り返しをする。 俺は、ひたすら避けた。
やがて俺は、だんだん避けるのがきつくなってくる。 なぜなら、メリッサの剣速が速くなってきている。それでもまだ、5割位の俺だけど、メリッサもチート級だと思う。
俺は、避けるのを止めて、受け流す事にした。
メリッサは、右の剣で振りおろしてくる。 それを俺は、受け流すが、少し小細工を入れる。 剣と剣が滑りあっている途中で、俺は左に押しながら滑らせてみた。
そしたら、思った通りメリッサは、(俺から見て)左に傾いていく。 そして、速さを余りにも上げていたせいで、そのまま転んでしまう。
俺は、そこを狙って斬り上げる。 メリッサは、何とか剣の腹で受け止めるが、吹っ飛ぶ。
俺は追い打ちをかける為、メリッサに向って走る。 メリッサは立ち上がり、自分の胸の前で剣を交差させる。
俺は、無詠唱の《パワーストライク》を使ってメリッサの胸を突く。
その時、俺は吹き飛ばされる。 なぜか、メリッサの回りに風が巻き起こった。
『おっと、グレイ選手が吹っ飛ばされた! メリッサ選手が風魔法を使用したのか!?』
『……あれは、魔法では有りません』
解説者のアーリーが言う通り、あれは魔法ではない。
『あれは、剣術奥義――《天力解放》、魔力ではない魔力を生み出す事が出来る奥義です』
『……奥義を使ったことも驚きですが、魔力ではない魔力とは?』
『まだ、何も分かっていないです』
『なるほど、まだ、未知の奥義なのですね』
実際、魔力ではない魔力とは、日本で言う『気』のことだ。 一度使ってみた時、漫画で見たような気が発生して、もの凄い力がわいてきた。 その代わり、これは命に関わることが分かった。 そんな奥義をメリッサは使った。 俺に勝つために。
メリッサは俺の方を向いて微笑する。
「すまんな、勝つためには奥義を使うしかなかった」
「謝られてる気はしないけど、別にいいよ。 負ける気ないからな」
「そうか、そうこないとな! 行くぞ!!」
今までの速さの2倍はあった。 俺は、受け流そうとしたが追いつかない。 剣でガードをしただけになり、吹き飛ばされる。 俺が、立ち上がった時にはもう目の前にメリッサはいた。そして、
「双撃、三ノ型――《疾風双剣》!」
凄い速さで乱舞をしてくる。 俺は、避けることにした。 長剣で防いでしまうと、剣が壊れてしまうだろう。
何とか、メリッサの乱舞が終わって、動きが止まったところを狙った。 無詠唱の《クウェイクブレイク》を使って、剣を壊すのが目的だったが、避けられた。
俺は、メリッサに後ろを取られた。そして、メリッサはもう攻撃してきている。だから俺は、100%の力で、100%の速さで《パワーブレイク》を使った。
俺の長剣とメリッサの双剣がぶつかり合い、また、激しい金属音が響き渡る。 しかし今回は、メリッサが弾け飛んで行った。 そして、メリッサは壁にぶつかり、うめき声を上げる。
俺は、もの凄い速さでメリッサに近づいて、指輪を突く。そして、メリッサの指輪は砕け散った。
『グレイ選手の勝利だ!!』
観客からは、歓声や色んな声が響き渡っていく。
俺は、メリッサの方を見ると、メリッサが、何故斬らなかったのかという目で見て来る。
「すまん、やっぱり女性を斬るのはためらいがどうしても出る」
「まったく、負けた私が言うのもなんだが、そう言うところでは、まだ甘いな」
「理解してる」
「ふう、完敗だ、おめでとう」
「ありがとな」
俺は、メリッサと一緒に控え室に向かった。
その時、風が吹いた。 俺の服が少し浮く。 浮いた事で見えた、胸にある黒いペンダントがキラリと光った。
次、番外編書きます。




