⑤、~予選と観戦~
おれは、自分の試合が終わって選手専用観客席で予選を見ることにした。
選手専用観客席に行くと、2人の選手がいた。
見た目は、1人目は成人の男性で。緑の短髪で身長は約180㎝と高い。顔は結構整っていて、イケメンだな、このヤロ。2人目は少年で、金髪のオールバックで背は140㎝で少し低い。何と言うか、昔に流行った魔法使いの映画に出て来た、あの○フォイに似ている。
そうやって見定めていると、緑髪のイケメンが声をかけて来た。
「グレイ君、強いね~、あのキスラムを倒すなんてね。見た目は強そうに見えないんだけどね」
「よく言われるけど、そんなに強そうに見えませんか?」
「……自分を改めてみてごらん」
俺は鏡を渡される。……誰だこいつ、俺じゃない。
顔は自分で言うのもなんだが、明らかにカッコよくなっている。幼い感じはあるが、決してカッコ悪くは無い。
改めて全体を見ると、背は169cmと変わらないが、体つきは変わっていた。筋肉が前に比べたら凄く付いていた。けど、周りに比べたら、かなり細い。
唯一の助かりは、黒眼と少し長めの黒髪だ。これだけはもと日本人として無くしたくない。
でも、確かに強そうな雰囲気は無いな。
「なるほどこれは、強そうではないな……」
ため息をついて、認めると緑髪のイケメンは気にするなと言ってくる。
「けど、強いのだからイイじゃない。強い人を見るのは楽しいわ」
さっきから思ってたけど、語尾に違和感を感じる。
今まで無言だった偽○フォイ君が入って来た。
「あんまりコネル、緑髪のそいつと話さない方がいいよ。そいつ男が好きだから」
その言葉にコネルと言われる緑髪のイケメンが反論する。
「俺は強い男が好きなんだ、分かったかマルフォード?」
「あぶねええええええぇぇぇぇぇl!!」
まさかの似過ぎた名前に、俺は思わず大声で叫んだ。その声に2人はビクッ、と驚いた。
「どうしたんだいグレイ君そんな大声出して、戦闘終わりだから興奮しているのかい?」
「危ないって、君は強いからもうこの変態に好かれているよ」
2人は俺を心配してくれる。一つは、間違いであってほしいが。おれは、一度深呼吸する。
「いや、すまん、なんでもない。お、ちょっとツレが見えたから呼んで来る」
ちょうど、リルが観客席に入っていくのが見えたのでここから退出する。
あそこにいたら、色々と危なそうだ。俺は、帰る予定もない場所を離れて行った。
俺はリルに会いに行こうとする。リルはまだ入口の所にいた。なぜなら、変なおっさんに留められていた。ここからでも少し話が聞こえた。
「いいかげん通して下さい」
「だから言ってるじゃないか、今日、おじちゃんと一緒に、夜、遊んでくれるなら入れるって」
「いやです、けど、入れて下さい」
「全く聞きわけの無い子だな、こんな子にはこうしてやる!」
おっさんがリルの肩に触れようとした瞬間、俺は走ってその手をつかむ。
「イッ!? だ、誰だ!? ……え、選手のグレイがなんでここに!?」
怯えているおっさんに冷やかな目で睨みながら、しかし、口調は穏やかに言う。
「その子、俺の連れなんですよ、いや、何処にいるかちょうど探していたんですよ」
「そ、そうなんですか……」
「やっぱりこんだけ可愛いと心配になっちゃってね。前にもこんなことがあって、そん時は誘拐されてて、誘拐した奴らを皆殺ししたことを今でも覚えていますよ」
「……(パクパク)」
「というわけで、……さっさと去りな。俺が切れる前に!」
「すいませんでした!!!!!」
おっさんは前にも見たスライムのように急いで逃げて行った。
リルは俺に近づいてきた。
「グレイ、手をお掛けしてしまってすいません」
「いや、リルが無事なら俺はいいんだよ」
俺は、リルの頭をなでる。リルは俯いた。少し頬を赤めているのがわかった。まったくかわいいな。
何かを思い出したかのようにリルが、顔を上げる。
「ところで、グレイは勝ったのですか?」
「おう、予選は勝ったよ」
「ならよかったです」
「よし、どこかに座って試合を見るとするか」
リルが頷き、移動をする。何とか席を捜す。そしたら、俺の戦いを見てファンになったというじいちゃんに席を空けてもらった。
「ごめんな、じいちゃん、ありがとう」
「いや、イイってことじゃよ。あの試合は久しぶりにスッカっとする試合じゃった」
笑いながら褒めてもらい嬉しい気分で予選の試合を見る事が出来た。
俺の次の試合では、何とか勝ったという感じで、テトラ選手が上に進んだ。
5試合目で、ルーカスが出て来た。けど明らかに覇気が弱い。それだけ怒られていたのだろう。
けど、試合が始まったと同時に見違えるような人になっていた。なんか、怒りにまかせた狂人のようだった。俺と同じく、一瞬で試合が付いた。そこでルーカスは高らかに大剣を上げて、観客を盛りあがらせる。解説者も感想を言う。
「さすがルーカス選手ですね。強さも人気も文句無しですね」
「まったくだね」
ルーカスは戻っていき、次の試合が始まる。他の試合で目に着いたのは、七と八と最後の十二試合目だった。
七試合目では、ショートソード使いのメリッサは、見事な剣さばきで、華麗に試合を決めたのが印象に残った。
八試合目では、魔法使いのクレアは、フード付きのローブを着ていて、魔法使いらしい恰好で出て来た。そして、強さは飛び出ていた。一度に、《ファイアーボール》を無詠唱で9つ出して、また、全てをコントロールして選手1人ずつに当てて行った。威力も高いようで、初撃でまず5人倒れる。次に、敵の足元から水が襲う、ランク6の水魔法――《アクアピーラー》をまた無詠唱で使う。それで、決着した。
そして、十二試合目。これは、違和感を感じた。タルトスというクレアと同じローブを着て、出て来た。その瞬間、寒気が走った。理由はなんとなくわかった。それは、こいつは周りと何か違うと。そして、やり過ぎ感はあったが、指定する広範囲を炎上させる魔法、ランク8の火魔法を使って、それこそ、一瞬で決着がついた。
そこで一度、解説者が休憩のお知らせを入れる。
「予選が終了いたしました、一旦、30分程度の休憩を取ります。また、予選を勝ち抜いた選手はその間に準備をして、控え室に集まって置いて下さい。以上、私、解説者のモチョと特別解説者のSランクのアーリーさんでした。また、30分後に会いましょう!!」
終わった後に、みんな一斉に動き出す。
俺も少ししたら、移動しないといけないな。そこで、おじいちゃんに声をかけられる。
「わしは、お前さんを応援するからな! しっかり頑張りんしゃい!」
「おう、頑張るよ、じいちゃん!」
「リルも応援します」
「リルもありがとな」
俺は、控え室に向かった。結構は早めに来たのだが、勝ち進んだ人が数人集まっていた。
やがて、少しずつ集まって、最後には時間ギリギリでルーカスが入って来て、休憩の終わりを告げられる。
さて、ここからが本番だ!
自分的に○フォイ押しです。