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④、~武闘会と予選~

 夜、リルがちょっと不機嫌だったのはなぜか?

 

 俺は、いつも通り朝日で目が覚め……なかった。

 寝ていた俺にリルはいきなり腹の上に思いっきり乗って来た。


「ッ!? ゲホッ、ッハァ……リル、怒っているにしても流石にきつい」


「グレイが禁術魔法を使うからいけないのです」


「……やっぱり《桜火影おうかのかげ》のせいか」


 リルが昨日の夜から不機嫌だったのは、俺が《桜火影》を使ったからだ。

 《桜火影》は、本当の名前は禁術魔法の《サクリファイス》と火の魔法の混合魔法だ。

 能力は、身代わりを作ることができる。それに火魔法を加えて、分身が火となって目くらましに使うことが出来る。

 しかし、禁術魔法なので、それだけの代償はある。それは、自分の体の一部分の一時停止だ。なので、俺は今、利き手ではない左手が動かない。それも後、三日続く。リルは、俺が自分を大切にしていないことに対して怒っている。


「ごめんって、何でもするからさ」


 俺がそういった瞬間、リルが目を光らせる。


「本当に何でもするんですね? では、キスして下さい」


 ……やらかした。


「それもキスってなんだよ!? いや、それはチョット……な」


 リルみたいな子供にキスなんて、世間体で排除されるし。

 けど、立場的に弱い俺はリルにさらに追い込まれる。


「けど、グレイは言いましたよね? 何でもって。 言った言葉に責任を持たないのはどうかと思います」


「ぐ、……分かったよ、リルの為だ。目を瞑ってくれ」


 リルは目を瞑る。腹をくくるしかないな。

 俺はリルに近づき、自分の唇を顔に持っていく。

 そして、触れる。


 おでこに。


 いや、びびりじゃねえぞ? 実際やって見ろよ。まじでやばいから。

 リルを見ると頬を少し赤くし、また、ちょっと不満そうだ。


「……今日はこれで許しておきます」


「今日だけなの!?」


 しかし、蒲団の中にもぐったリルは出てこなかった。

 結局、宿から出て行く時に、「後から行きます」とだけ小さな声で言っていた。


 現在、午前9時半、俺は宿の外に出た。


「さて、今日の武闘会はがんばるか!」


「お、いい感じに張り切ってるな」


 後ろにはルーカスがいた。


「ルーカスおはよう、今日は宜しくな」


「おう、おはよう! たがいに頑張ろうな」


「おう!」


 そうして、俺らは武闘会が行われる会場に向かった。



 俺らは会場に着く。そこにはたくさんの選手がいた。

 俺は一つ思ったことを口に出していた。


「なんで武闘・・会なのに、魔法使いがいるんだ……」


 その言葉の答えを出したのはルーカスだった。


「結局、強い奴と闘っているのを皆は見たいんだよ、強ければ何でもいいってのがこの世界での昔からの伝統だしな。 ま、難しく考えたら負けだ」


「……だな」


 とりあえず、控室に入ろうとする。その時、何人かの騎士が向ってくる。

 相手は俺ではなくてルーカスにだが。


「ルーカスさん何処にいたんですか!? 俺らもの凄く困っていたんですよ!」


「上の人たちに団長がいないことを言うと、特訓に行ったのでしょ、しか言わないし!!」


「いい加減、俺らの団長としての自覚を持って下さいよ!!」


 部下に言い寄られ、よろめくルーカス。

 ルーカスが何か言おうしようとするが、結局、部下たちに謝っていた。

 ルーカスは俺の方を向く。


「先に行っててくれ、……行けたら行く」


「お、おう、がんばれ」


 そう言って俺が離れると、部下にもの凄く怒られて、何度も謝るルーカスだった。

 まあ、それは置いといて、控え室に入ると空気が張り詰めていた。

 皆が戦う敵と考えるとしょうがない。

 

 やがて、アナウンスでランダムに番号が呼ばれる。 予選が始まるのだろう。

 この武闘会のルールはこんな感じだ。

 今回の参加者は、120人だった。 なので、10人ずつ分けて12組作る。 そして、1組ずつバトルロワイアルをして1人だけ勝者を決める。 その後、12人でトーナメント式に2人ずつ戦って行く。 そして、勝ち残った方が上に進み、最後には残った2人が戦う、となっている。

 武器は、杖以外、すべて鉄となっている。 また、犠牲の指輪と呼ばれる、一定以上の攻撃を自分の代わりに受けてくれる。しかし、それ以上を超えると壊れる。 一個、金貨2枚の価値らしい。

 勝敗は、その犠牲の指輪が壊れた時点で負けだ。

 また、壊れた後に、攻撃したら失格、殺してしまったら即逮捕だ。


 とりあえずだ、予選を勝ち進むことだけを今は考えていればいいってことだな。

 三回目のアナウンスで俺が呼ばれる。 俺は立ち上がり、ロングソードを持って控室を出る。

 俺は、闘技場に出る。 俺以外はもう集まっていた。

 俺が入ると、解説者の声が響く。


「さて、予選第3回戦が始まろうとしています! この試合はどう見ますか、ロンドさん?」


「やっぱり、62番のキスラムかな、Aランクギルドの名前で通っているからね」


「やはり、キスラムさんですか。 他の人も頑張って頂きたいところです! さて開始されます!」


 審判が数字を数えて行く。 5、4、3、2、1、0……。

 皆が一斉に動き出す。俺は、いったん下がった。 他の人はキスラムを狙いに行った。

 

「やはりキスラム選手に集中された!! どう対応するかキスラム選手!?」


 キスラムは持っている武器のロングソードと盾で、皆の攻撃をさばいていく。

 そして、隙を見せた奴を一人ずつ斬っていく。

 俺は、その瞬間を狙った。斬った後の隙を見逃さずに。

 俺は右手に持ったロングソ-ドを剣先を前に向ける。


「《クイックストライク》」


 詠唱破棄をしてみる。確かに、少しスピードが乗らないように思うがもともとから速い。

 ものすごい速さでキスラムに突撃する。

 俺は見事にキスラムの胸にロングソードを刺した。

 キスラムは何があったのかまだ分からないような顔をしていた。

 俺がキスラムの胸から剣を抜いたその瞬間、キスラムの指にある犠牲の指輪は壊れる。

 キスラムはその時に自分が負けたことに気付いた。


「おおっと!? まさかキスラム選手が1番にリタイアをした!! 倒したのは101番のグレイ選手だ!!」


「意外な展開になって来たね。それにしても、グレイ選手のあの速さはもの凄かったね」


 解説で何か言っているらしいけど、聞く暇などない。次は俺に標的が変わるだろう。

 俺が剣を抜いていて、隙だらけの所、予想通り、まず4人が俺を狙ってくる。

 けど、この時を待っていた。


「《風車》」


 《風車》は、斬撃の八ノ型だ。俺は、もの凄い速さで一回転する。(もともと回転しながら移動攻撃が出来るのが強い所なのだが、今は手加減しているため、一回転で抑えている)

 周りにいた4人の選手が吹っ飛ぶ。だがそこでは終わらない。

 俺は無詠唱で《夜桜》を使う。無詠唱になると、目に見えて落ちているのが分かる。

 後ろで立っていた4人の選手に4つの闇色の剣が伸びて当たるように見えた。(もともと、斬撃波を飛ばす技だが、手加減と無詠唱の為、威力が落ちて飛ばす事が出来ずに伸びるだけになった)

 俺はそこで一息をつく。そこで解説者が言う。


「なんと言う事か!! グレイ選手が一瞬で試合を決めてしまった!!」


「彼は今回の注目の的になりそうだね」


 そこで審判に勝利を告げられて、控室に戻った。



次は他の組の予選です。


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