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(4)夜釣り

今回の話は、2012年7月17日に心霊夜話として、投稿した話を加筆した物です。

釣り好きの方の中には、夜釣りに行かれる方も多いと思う。

夜釣りは、人気が高く、日中と比べると、魚の警戒心が薄らぐので、大物が釣れる確率が高い。

また、夜釣りでないと、なかなか釣れない魚がいる事も、釣り人を魅了している。

夏の暑い日中を避け、納涼を兼ねての夜釣りも人気がある。

だが、あなたは知っているだろうか。

夜釣りには、違った納涼感が味わえるという事を。

これは、私が以前、行った釣り場近くの釣り具店で聞いた話である。




海沿いの町、P町にあるK堤防は、釣り人に人気で好釣果の期待できる有名ポイントである。

しかし、堤防は、危険な一面もあり、数年に一度、海への転落事故も起きていたという。

事故が起きれば、色々な噂もたってくる。

大抵は、事故原因や事故当事者の話だったが、中には、背筋が冷たくなる様な噂も流れ始めていた。

そのK堤防に、二人の釣り人が夜釣りに訪れた。

ここで、二人は、身も凍る様な体験をする事となった。

その日、二人は、釣りポイントに着くと、仕掛けを準備し、真っ暗な海に向かってキャストした。

電気ウキが弧を描いて飛び、着水すると、海面上にウキがゆらゆらと揺れ始める。

赤く光る電気ウキを見つめる二人。

遠くには、漁船の漁り火が見える。

海は、穏やかで、堤防に当たる波が、小さな音をたてている以外は、静かである。

時折、吹く夜風が、心地良い。

気分的には、とても良いのだが、どうしたものか、肝心の魚のアタリが全く無い。


「釣れないな」


「ああ」


「ウキがピクリともしないぞ」


「こんな日もあるんだな」


これは、長期戦になりそうだと、二人は思った。

やがて、余りのアタリの無さに退屈したのか、こんな話を始めた。


「なあ、こんな話を知っているか。この堤防で1ヶ月ぐらい前に自殺があったろ」


「ああ、女の人が海に飛び込んだってやつか。海中のテトラポットに顔面から直撃したらしいな」


「そういう、それでさ、遺体が、すぐに見つからなかったんだってさ。遺体が見つかるまでの間、この辺り、カニや魚がやたら良く捕れたんだってさ。何故だか、わかるか」




「まあ、わかるけど、もうそれ以上言うなよ。釣りをする気が無くなる」


「悪い、悪い。今の話は無しな。じゃあ、この話は知っているか。この堤防に現れる女の話」


「女?」


「そう、女。夜釣りをしていると、赤い服を着た女が現れて話しかけてくるんだと」


「それって、今、噂になっているアレの事か」


「そう、そう、アレ。まあ、本当なのか、どうか、わからないけどな」


「お前も、その手の話が好きだな。けど、そういう話をしていると、集まって来るっていうぜ」


「そ、そうか。じゃあ、この話も無しな。あれ、お前のウキ、引っ張られているみたいだぞ」


「おっ、きたか」


待ちに待ったアタリに喜び、ロッドを立てリールを巻く。

しかし、ウキは沈んだまま、上がってこない。

魚のアタリでは無く、どうも海藻か何かに、針が引っ掛かった様だった。

針を外そうと、ロッドを右に左にあおってみる。

針が、やっと外れ、リールを巻き始める。

その時、後ろから、何か音がした。



ぺちゃり ぺちゃり



誰かが、近づいて来る。

この時、二人は、他の釣り人が、やって来た程度に思っていた。



ぺちゃり ぺちゃり



なおも、音は近づいて来る。

二人は、この音に何か違和感を感じ始めていた。

何かおかしい。

最初は、足音だと思っていたが、足音にしては、少し変だ。

足音というと、もっと堅い音ではなかったか。

この音は、まるで、濡れている様な、柔らかい物の様な。

やがて、音は、二人のすぐ後ろで止まった。



「ねえ、わたしの」



何か声がした。


「今、何か言ったか」


「いや、俺は何も」


「そうか」


どうも、後ろにいる人物が言ったのだろうと、二人は思った。

そのまま、無視し、再びリールを巻き始める。

リールを巻き終わり、仕掛けが上がってきた。

何か重い。

どうも、何か針に掛かっている様だ。

その掛かっている物を確かめようとした時、また声がした。



「ねえ、わたしの…あった?」



低い女の声だ。

後ろにいるのは、女だったのか。

女?

ん、いや、待てよ。

あの噂によると、女が出て来るんじゃなかったか。

K堤防、夜釣り、女。

二人は、急にK堤防の嫌な噂を思い出した。

夜のK堤防に何か出るという噂を。

確か、その噂は、女が現れて話しかけてくるという内容だった。

女の声、意味不明な問いかけ。

話で聞いていた内容と一致する。

自分達の後ろにいるのは、釣り人なんかじゃない!

何か得体の知れない者がいる!

恐怖の余り、二人は体が動けなくなってしまった。

後ろから、腐った肉の様な臭いがしてくる。

二人は、後ろを振り返る事も出来ず、前を見続けるしかなかった。

その視線の先には、手に持ったロッドから下がった仕掛けがあった。



「ねえ、わたしの、からだ、あった?」



その仕掛けには、黒髪と皮膚らしき物がぶら下がっていた。




一生に一度、するか、しないか、であろう、恐ろしい体験をしてしまった二人だったが、全てを話せる様になるには、少し時間がかかったそうである。

この話を語ってくれた釣り具店の主人は、こうも言っていた。

恐ろしい思いをしたくなければ、K堤防の夜釣りだけは、およしなさい。自分から、災いを招きに行く必要は無いと。

今夜、夜釣りに行かれる方もいらっしゃると思う。

夜の堤防は、くれぐれも気をつけて頂きたい。

もちろん、色々な意味で…

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。次回は、K堤防のその後の話を投稿する予定です。

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