【プロローグ】 アイ アム デッド
季節は春だ。
校門を潜ると両脇には少し遅めの桜並木。
俺こと岬太陽は二年生になった。
花城学園に入って二度目のこの季節。校舎の内外を問わず新しい環境に心湧く生徒たちで賑わっている。
新学年とはいえ二年にもなれば馴染むのも早いもので、教室に入るといくつかの仲の良い者同士の塊がほぼ同じ面子、ほぼ同じ位置にに構成されている。
勿論その面子以外と交流が少ないなんてことはない。このクラスはわりとフレンドリーな奴が多いのだ。
「太陽ー!」
教室に入ってすぐに俺の名前を呼ぶ声がする。視線をやると前後の席に座った新と湊の二人が手招きをする。俺はすぐに二人に寄っていく。
「湊、おはよ。新も」
「なんだ、俺はついでか?」
新が言うと三人で笑い合う。
「土曜日は五時前に私ん家だからね」
そう言って俺の肩を叩くのは藤堂湊。
彼女とは去年も同じクラスだ。
ボーイッシュな性格とノリの良さが合ったのか一番と言っていいほど仲のいい友達の一人になった。と言っても浮ついた様な関係では全くないけど。
「新は一緒に行かないのか?」
俺はもう一人に向き直る。
「俺はちょっと早めに行きたいから遠慮しとくよ。わるいな」
と、無駄に爽やかに答えるのは高宮新。
知り合ったのはこのクラスになってからだったが人当たりがいい性格のせいか既に名前で呼び合うぐらいの間柄になった。活発な新はよくクラスを勝手に仕切っている。
「なんで早く行きたいわけ?」
湊が不思議そうに聞いた。
「そりゃお前、俺が一番に行ったらその分全員揃うまで待ってる時間が長くなる。それすなわちまだ仲良くなってない女子たちとの仲を育む時間も長くなるってわけだ」
「相変わらずね」「相変わらずだな」
湊と声を揃える。
「なんだよ二人して。人間異性がいないと幸せにはなれないんだぜ? それにお前ら二人の邪魔しないでやろうと気遣ってやってるのにさ」
「はいはい、気遣ってくれてありがと」
湊はやれやれといった感じだ。
こうやって遠慮せずに冗談交じりになんでも言い合える空間は心地が良かった。
ちなみに話の内容は週末に控えたクラスの親睦会の待ち合わせの話だ。新が提案した親睦会にはクラスのほとんどが参加する予定になっている。このクラスはわりとフレンドリーな奴が多いのだ。
もっとも湊と一緒に行く理由は単に俺の家から集合場所までに湊の家があるってだけだが、俺自身とても楽しみにしている。
高校に入ってからの一年はあっという間で、その理由は楽しい時間は早く過ぎる原理で、恋人こそ居なかったものの毎日を楽しく充実した日々を送っていた。
そんな俺ですが、
本日…………お亡くなりになりました。