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馬鹿王子を悪徳商人にけしかけた妹王女の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/03/04

 お父様から宝石を頂きました。


『マティア、この宝石で学園の授業料を払いとドレスを買いなさい』

『お父様、有難う』


 そう、我が領地にささやかながらルビー鉱山があります。

 その中で最高品質の赤い色のルビーを頂きました。


『お父様、私・・何だか怖いわ』

『これも勉強だ。大金貨30枚以下で売るなよ』

『はい、お父様』

『大きな商会をいくつか回りなさい』



 お父様から頂いた大事な宝石。

 私はアドバイス通りいくつか店をまわる事にしました。


『まあ、大きな看板だわ』


 商業通りに真っ赤な看板で目立ちました。


 サコタ宝石店・・か。


 私は迷わず入りました。


『いらっしゃいませ』

『これはこれは可愛らしいお嬢様、何をお求めですか?』

『実は買取りを前提とした鑑定をお願いしたいのです』

『もちろんです』

『お嬢様、家門は?』

『はい、ホイラー男爵家です。王国山岳地帯ですわ』

『なるほど』


 中年の上品そうな紳士でした。カイザーヒゲに、すらっとした体型に白髪交じり。方眼鏡をかけていました。


 白手で宝石を持つが、あまり腕は良くないようだわ。ぎこちない。

 この店はやめようかしらと思ったわ。


 結果は・・・


『お嬢様、これはニセモノです』


『えっ、そんな・・・』

『持っていたら、捕まりますよ』

『そんなはずはありません。鑑定書を下さい。他の店でみてもらいます。返して下さい』

『いや、ニセモノにしてはよく出来ている。金貨一枚で買い取ってあげます』

『そんな。断ります』


 断ったら豹変しました。店の奥から男達が出てきて。


『さあ、帰りなさい。田舎令嬢、ここはあんたの来る所じゃないよ』

『キャア!』


 店から放り出されました。


『こっちは貴族様がついているのだ。今はときめく、ゲベルマン伯爵様だ』

『男爵令嬢ごときが!』



 ですから、ですから・・・・



 ・・・・・・・・・・・・




「グスン、グスン、折角合格したのに・・・もう、学費を払うことは出来ませんわ・・支払日を待って頂けないでしょうか?」


 今日、学園の学費の支払日だわ。伸してもらおうと思って、学園の理事の方にお話をした・・・


 相手は・・・


「待てないの~、期限は絶対なの~」


 王女殿下だ。若干、6歳にして数学の天才、学園の名誉理事、しかし、学園に来て遊んでいるそうだわ。

 熊のヌイグルミを持ち。毅然と言われたわ。


「グスン、そうですよね」

「ついてくるの~」

「・・・えっ」

「くればわかるの~」


 まるでお人形さんみたいだ。

 学園の庭に行く。喧噪が響いていた。


「おい、俺のジャケットどう思う!新調したぞ!」

「・・・殿下、個性的ですわね。オホホホホ!」



 ド派手な金のジャケットを着ていた学生がいた。髪は金髪で碧眼、王女殿下と同じ色だわ・・・

 学生達に囲まれている。


「殿下、素晴らしい」


 えっ、殿下?!


 よく見たら、背中に『王子参上!』と文字が刺繍されている。


 王女殿下が話しかけたわ。


「お兄たん。メリメリのお願いなの~」

「何だ。隣のご令嬢は?」

「男爵令嬢なの~」

「な、何と、男爵令嬢だと!平民と貴族の良い所が入交じる男爵令嬢だと!」

「エリザベートお姉様に言いつけるの~」

「そ、それは勘弁!」


 王女殿下が懐から蝶蝶のブローチを取り出したわ。


「これを売りに出してもらいたいの~」

「おう、メアリーよ。キャンディーでも買いたいのか?」

「うん。これ、下町で買ったものだけど、大金貨30枚で売って欲しいの~」

「掘り出しものだな。分かった!」


 どう見ても、屋台で売っている代物だわ・・・


 行く先は、もちろん。サコタ宝石店。


 私は顔バレしているので店の前で待っていた。殿下と王女は二人で入ったわ。



「何だと、これを大金貨30枚だと、とんでもない奴だ!」

「フン、おれはヘンドリック王子だ!言う事を聞け。王女殿下が身につけていたブローチだぞ!」


「なら、私はこの店の王だ。こんな馬鹿なジャケットを羽織るお方が王子なわけがない!」


「つまみ出せ!」

「「「はい!」」」



 やっぱり店を追い出されたわ。


「グヌヌヌ、おのれ~!王族に無礼を働いたな!」

「お兄たん。このままで良いの~」


「やってやる!メアリーのために!」



 何だか、嫌な予感がするわ。




 ☆☆☆サコタ宝石店


「ゲベルマン伯爵、掘り出し物のルビーが手に入りました」

「サコタご苦労、ほお、素晴らしいルビーだ。いくらで買い取ったのだ」

「金貨一枚です」

「悪い奴だな。私の名を使っているのだから上納金をたんまりもらうぞ」



 この宝石店は客を見て判断をしていた。立場の弱い人から暴利をむさぼる。

 位の高い者には丁寧に扱う。

 何かあったらゲベルマン伯爵の名が出てきた。


「うむ。王宮の役職付のワシに逆らえる者はおらん。何か変わったことはあったか?」

「はい、ド派手なジャケットと、熊のヌイグルミを持った幼女が現れ。蝶蝶のブローチを大金貨30枚で買い取れと言いました」


「全く、悪い奴がいるものだ」

「ええ、王子と名乗っていました。王子があんな馬鹿な格好をしている道理がございません」


「よく不敬罪で捕まえなかったな。ワシは王子殿下と王女殿下から信頼もあついのだ。陛下に報告する。どんな格好だったか?」


「金のジャケットで王子参上と背中に刺繍がありました。全く馬鹿な奴でした」


 ここで伯爵の頭に違和感がよぎった。いや、既視感だ。

 王宮で見た事があるのだ。しかも今朝だ。


「・・金色で、白の縁取りのジャケットで、背中の王子参上は白の糸ではなかったか?」

「伯爵、その通りです。よくご存じで、有名な変人なのですか?」


「・・・幼女は髪を二人に束ねて・・・側頭部からピョンと出ていなかったか?ほら、ツインテールとか言う髪型だ。熊のヌイグルミを持っていなかったか?」


「よくご存じで、悪人の妹です。将来、阿婆擦れになるでしょう」


「・・・まさか、ヘンドリック王子殿下とメアリースチュアート王女殿下・・・か?」


 その時、外から足音と怒号が響いた。



【ただいまより近衛騎士団!サコタ宝石店に不敬罪の疑いがあり。捜索を実施する!王命である!】


【歩兵大隊は建物を囲め!】


 商業通りは封鎖され。そこには場違いな騎士と兵士しかいなかった。



 王子の声が響いてきた。



【ナ~ハハハ~!この建物に王を名乗る馬鹿がいる。引っ張り出してヒゲを抜け!】


 そして、王女が指示を出す。


【みなしゃま。殺しちゃいけないの~、でも、抵抗した殺してもいいの~!】



 ☆店内


 三階の窓からのぞいた店主と伯爵は驚愕する。

 既に一階の店員は強制的に出されていた。


「伯爵、奴は私兵を連れてきました。伯爵殿!」

「馬鹿!あれは王家の兵だ・・・」

「え、はい・・・でも、伯爵殿、王子と王女と信頼あついのじゃ」

「グッ・・・それは方便だ・・ほら箔が付くと思って」


 実際は、王宮を用もないのにウロウロしているだけであった。



 ガチャン、ガッチャン。破壊の音が三階の執務室まで聞こえて来た。


「宝石は証拠品なの~、スミスしゃん。宝石の扱いと鑑定をお願いするの~」

「はい、王女殿下、王家御用商人の名にかけて!しかし、店頭に並んでいるのはクズ石を削ったものばかり。ここは評判の悪い店でした」

「なの?でも赤いルビーがあるから注意なの~」

「はい、王女殿下!」


 サコタと伯爵は同時に似たようなことを考えた。


 ヒィ、あれは王都一の宝石商、スミスだ。どうしたらワシは助かる。そうだ。サコタを突き出せば。


 王家だよ。王家の者とは分からなかったぞ!そうだ。伯爵の命令で仕方なくやったと言えば。


 二人は喧嘩を始めた。店は更にカオスな状態になった。


「この悪徳商人を捕まえました!」

「いや、暴虐貴族です!告発します!」


「二人とも逮捕なの~!」

「「「はい、王女殿下!」」」

「ナ~ハハハ!思い知ったか!」




 その後、宝石を取り戻してもらったわ。夜になったけど、スミスさんが鑑定してくれて・・・・


「これは、最高品質だが、傷がついている」

「それは、この店に持ち込む前の宝石の魔道写真ですわ。私は宝石鉱山の娘、扱いは木箱に入れて慎重でしたわ」

「なるほど、大金貨25枚・・サコタ氏の財産から補填して、大金貨32枚で如何ですか?それとも、オークションにかけますか?」


「いえ、今日中に支払いがございますので」

「なるほど、なら、現金の方が良いですね。護衛を出します」

 その場で、王女殿下に支払いをして・・・


「王女殿下、学費でございます」

「確かに受け取ったの~」


【ナ~ハハハ!思い知ったか!悪人ども!】

「「ヒィ!」」



 私は学園生になれた。このことを手紙でお父様に知らせたわ。


 学園では、ヘンドリック殿下の婚約者、公爵令嬢エリザベート様が・・・


「殿下!男爵令嬢とお出かけしたって聞きましてよ!」

「メアリーと一緒だ!」


 王子に詰問をしていた。ジャケットはツッコミ入れないのね・・・



 王子でも婚約者には頭が上がらないようだ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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