馬鹿王子を悪徳商人にけしかけた妹王女の話
お父様から宝石を頂きました。
『マティア、この宝石で学園の授業料を払いとドレスを買いなさい』
『お父様、有難う』
そう、我が領地にささやかながらルビー鉱山があります。
その中で最高品質の赤い色のルビーを頂きました。
『お父様、私・・何だか怖いわ』
『これも勉強だ。大金貨30枚以下で売るなよ』
『はい、お父様』
『大きな商会をいくつか回りなさい』
お父様から頂いた大事な宝石。
私はアドバイス通りいくつか店をまわる事にしました。
『まあ、大きな看板だわ』
商業通りに真っ赤な看板で目立ちました。
サコタ宝石店・・か。
私は迷わず入りました。
『いらっしゃいませ』
『これはこれは可愛らしいお嬢様、何をお求めですか?』
『実は買取りを前提とした鑑定をお願いしたいのです』
『もちろんです』
『お嬢様、家門は?』
『はい、ホイラー男爵家です。王国山岳地帯ですわ』
『なるほど』
中年の上品そうな紳士でした。カイザーヒゲに、すらっとした体型に白髪交じり。方眼鏡をかけていました。
白手で宝石を持つが、あまり腕は良くないようだわ。ぎこちない。
この店はやめようかしらと思ったわ。
結果は・・・
『お嬢様、これはニセモノです』
『えっ、そんな・・・』
『持っていたら、捕まりますよ』
『そんなはずはありません。鑑定書を下さい。他の店でみてもらいます。返して下さい』
『いや、ニセモノにしてはよく出来ている。金貨一枚で買い取ってあげます』
『そんな。断ります』
断ったら豹変しました。店の奥から男達が出てきて。
『さあ、帰りなさい。田舎令嬢、ここはあんたの来る所じゃないよ』
『キャア!』
店から放り出されました。
『こっちは貴族様がついているのだ。今はときめく、ゲベルマン伯爵様だ』
『男爵令嬢ごときが!』
ですから、ですから・・・・
・・・・・・・・・・・・
「グスン、グスン、折角合格したのに・・・もう、学費を払うことは出来ませんわ・・支払日を待って頂けないでしょうか?」
今日、学園の学費の支払日だわ。伸してもらおうと思って、学園の理事の方にお話をした・・・
相手は・・・
「待てないの~、期限は絶対なの~」
王女殿下だ。若干、6歳にして数学の天才、学園の名誉理事、しかし、学園に来て遊んでいるそうだわ。
熊のヌイグルミを持ち。毅然と言われたわ。
「グスン、そうですよね」
「ついてくるの~」
「・・・えっ」
「くればわかるの~」
まるでお人形さんみたいだ。
学園の庭に行く。喧噪が響いていた。
「おい、俺のジャケットどう思う!新調したぞ!」
「・・・殿下、個性的ですわね。オホホホホ!」
ド派手な金のジャケットを着ていた学生がいた。髪は金髪で碧眼、王女殿下と同じ色だわ・・・
学生達に囲まれている。
「殿下、素晴らしい」
えっ、殿下?!
よく見たら、背中に『王子参上!』と文字が刺繍されている。
王女殿下が話しかけたわ。
「お兄たん。メリメリのお願いなの~」
「何だ。隣のご令嬢は?」
「男爵令嬢なの~」
「な、何と、男爵令嬢だと!平民と貴族の良い所が入交じる男爵令嬢だと!」
「エリザベートお姉様に言いつけるの~」
「そ、それは勘弁!」
王女殿下が懐から蝶蝶のブローチを取り出したわ。
「これを売りに出してもらいたいの~」
「おう、メアリーよ。キャンディーでも買いたいのか?」
「うん。これ、下町で買ったものだけど、大金貨30枚で売って欲しいの~」
「掘り出しものだな。分かった!」
どう見ても、屋台で売っている代物だわ・・・
行く先は、もちろん。サコタ宝石店。
私は顔バレしているので店の前で待っていた。殿下と王女は二人で入ったわ。
「何だと、これを大金貨30枚だと、とんでもない奴だ!」
「フン、おれはヘンドリック王子だ!言う事を聞け。王女殿下が身につけていたブローチだぞ!」
「なら、私はこの店の王だ。こんな馬鹿なジャケットを羽織るお方が王子なわけがない!」
「つまみ出せ!」
「「「はい!」」」
やっぱり店を追い出されたわ。
「グヌヌヌ、おのれ~!王族に無礼を働いたな!」
「お兄たん。このままで良いの~」
「やってやる!メアリーのために!」
何だか、嫌な予感がするわ。
☆☆☆サコタ宝石店
「ゲベルマン伯爵、掘り出し物のルビーが手に入りました」
「サコタご苦労、ほお、素晴らしいルビーだ。いくらで買い取ったのだ」
「金貨一枚です」
「悪い奴だな。私の名を使っているのだから上納金をたんまりもらうぞ」
この宝石店は客を見て判断をしていた。立場の弱い人から暴利をむさぼる。
位の高い者には丁寧に扱う。
何かあったらゲベルマン伯爵の名が出てきた。
「うむ。王宮の役職付のワシに逆らえる者はおらん。何か変わったことはあったか?」
「はい、ド派手なジャケットと、熊のヌイグルミを持った幼女が現れ。蝶蝶のブローチを大金貨30枚で買い取れと言いました」
「全く、悪い奴がいるものだ」
「ええ、王子と名乗っていました。王子があんな馬鹿な格好をしている道理がございません」
「よく不敬罪で捕まえなかったな。ワシは王子殿下と王女殿下から信頼もあついのだ。陛下に報告する。どんな格好だったか?」
「金のジャケットで王子参上と背中に刺繍がありました。全く馬鹿な奴でした」
ここで伯爵の頭に違和感がよぎった。いや、既視感だ。
王宮で見た事があるのだ。しかも今朝だ。
「・・金色で、白の縁取りのジャケットで、背中の王子参上は白の糸ではなかったか?」
「伯爵、その通りです。よくご存じで、有名な変人なのですか?」
「・・・幼女は髪を二人に束ねて・・・側頭部からピョンと出ていなかったか?ほら、ツインテールとか言う髪型だ。熊のヌイグルミを持っていなかったか?」
「よくご存じで、悪人の妹です。将来、阿婆擦れになるでしょう」
「・・・まさか、ヘンドリック王子殿下とメアリースチュアート王女殿下・・・か?」
その時、外から足音と怒号が響いた。
【ただいまより近衛騎士団!サコタ宝石店に不敬罪の疑いがあり。捜索を実施する!王命である!】
【歩兵大隊は建物を囲め!】
商業通りは封鎖され。そこには場違いな騎士と兵士しかいなかった。
王子の声が響いてきた。
【ナ~ハハハ~!この建物に王を名乗る馬鹿がいる。引っ張り出してヒゲを抜け!】
そして、王女が指示を出す。
【みなしゃま。殺しちゃいけないの~、でも、抵抗した殺してもいいの~!】
☆店内
三階の窓からのぞいた店主と伯爵は驚愕する。
既に一階の店員は強制的に出されていた。
「伯爵、奴は私兵を連れてきました。伯爵殿!」
「馬鹿!あれは王家の兵だ・・・」
「え、はい・・・でも、伯爵殿、王子と王女と信頼あついのじゃ」
「グッ・・・それは方便だ・・ほら箔が付くと思って」
実際は、王宮を用もないのにウロウロしているだけであった。
ガチャン、ガッチャン。破壊の音が三階の執務室まで聞こえて来た。
「宝石は証拠品なの~、スミスしゃん。宝石の扱いと鑑定をお願いするの~」
「はい、王女殿下、王家御用商人の名にかけて!しかし、店頭に並んでいるのはクズ石を削ったものばかり。ここは評判の悪い店でした」
「なの?でも赤いルビーがあるから注意なの~」
「はい、王女殿下!」
サコタと伯爵は同時に似たようなことを考えた。
ヒィ、あれは王都一の宝石商、スミスだ。どうしたらワシは助かる。そうだ。サコタを突き出せば。
王家だよ。王家の者とは分からなかったぞ!そうだ。伯爵の命令で仕方なくやったと言えば。
二人は喧嘩を始めた。店は更にカオスな状態になった。
「この悪徳商人を捕まえました!」
「いや、暴虐貴族です!告発します!」
「二人とも逮捕なの~!」
「「「はい、王女殿下!」」」
「ナ~ハハハ!思い知ったか!」
その後、宝石を取り戻してもらったわ。夜になったけど、スミスさんが鑑定してくれて・・・・
「これは、最高品質だが、傷がついている」
「それは、この店に持ち込む前の宝石の魔道写真ですわ。私は宝石鉱山の娘、扱いは木箱に入れて慎重でしたわ」
「なるほど、大金貨25枚・・サコタ氏の財産から補填して、大金貨32枚で如何ですか?それとも、オークションにかけますか?」
「いえ、今日中に支払いがございますので」
「なるほど、なら、現金の方が良いですね。護衛を出します」
その場で、王女殿下に支払いをして・・・
「王女殿下、学費でございます」
「確かに受け取ったの~」
【ナ~ハハハ!思い知ったか!悪人ども!】
「「ヒィ!」」
私は学園生になれた。このことを手紙でお父様に知らせたわ。
学園では、ヘンドリック殿下の婚約者、公爵令嬢エリザベート様が・・・
「殿下!男爵令嬢とお出かけしたって聞きましてよ!」
「メアリーと一緒だ!」
王子に詰問をしていた。ジャケットはツッコミ入れないのね・・・
王子でも婚約者には頭が上がらないようだ。
最後までお読み頂き有難うございました。




