uneasy lesson
翌日はほとんど眠らずに登校した。細切れの睡眠のなかでみる夢は、みんな和樹に関することばかりだった。
まだ生徒たちの進路の決まらない授業は先生も気が抜けているようで、いつも通りうっすら覇気がないようだった。黒板にコツコツと音をさせて数式を書いていく。わたしは気もそぞろだった。
美容師を目指して専門学校へ進学する予定の美羽と、おざなりに大工になろうと思っていてどこかの親方に弟子入りしようと思っている町田くん(わたしは気が変わってフリーターをやってからホストにでもなるのではと思っているけれど)見やると、ふたりとも一応はペンを動かして退屈な授業を受けているようだった。
明日からは冬休みだ。終業式を間近に控えてほかの生徒たちは楽しげだったりクラスに友達の多い子は憂鬱そうだったりみな様々だった。
和樹は今どうしているのだろう。やっぱり彼は登校してこなかった。こっそりスマホを開いて和樹のLINEを確認すると、既読がついていない。
いざとなったら警察に頼ろうか。でもわたしのパパのことを考えるとうかつな行動はとれない。パパに頼ったら、「高校生で男をつくるとは何事だ!」と殴られるかもしれなくて怖くてできない。
落ち着かなくて時刻をみやると昼の3時前だった。あと少しで一日が終わる。
窓の外の空はきもちよく晴れていて、なんの悩みもなさそうに鳥が晴れ渡る空を飛んでいった。
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ホームルームで担任のあやか先生が、
「あしたからクリスマスだからってハメ外さないようにね!なにか問題起こしたら先生とても困るのよ。先生にはやっとこの歳で将来を誓いあえた男がいるんだから!」
あやかちゃんそりゃないよ〜とクラスのみんなが笑う。美羽も微笑んでいる。しかしみんなは先生が見栄を張っているのをちゃんと知っている。
放課後。わたしは仲良く町田くんと帰ろうとする美羽を呼びとめた。
「あの...。和樹今日来なかったんだけど。」
「え?風邪でもひいて休んでるんじゃないの?」
美羽がきょとんとする。
「風邪じゃなくて...。昨日からLINE送ってるんだけど既読がつかなくて。」
「じゃあやっぱり寝込んでるんだよ。なんか心配そうな顔してるけど、だったら彼のうちに行ってみたら?彼、絵梨花と同じで一人暮らしなんでしょ。」
別れてもまだ合鍵持ってるくせに〜と美羽がわたしの腕をたたく。
「...じゃあそうする。ごめんね、美羽、町田くん。」
ふたりが手を繋いで教室を去っていく。
和樹はぜったいに部屋にはいないはずだ。でも、もしかしたらなにか事件の痕跡のようなものや置き手紙なんかがあるかもしれない。わたしはすばやく帰り支度を整え、教室を出ると、バイトは休んでしまおうと思いながら、美羽と町田くんの背中を探したけれど見つからないまま学校を去った。




