Episode3:冒険者にも貴族になりました(お涙頂戴の嘘も方便!)
アヴァランチが戻ってきた「主さま、ただいま戻りました。皆、主さまのご活躍を賛美しております。早馬を飛ばし国王様にご報告されるとのことです。」作戦の成功に声も弾んでいる。
それに反して、アユムは浮かない顔をして「ただ、ちょっと困ったな、つーか、だいぶ困ったゾ、どうしよう。」
「冒険者にもなっていないこの僕が、皆の前でメテオを放ったわけだが、それも4発同時に…、目立ちたくないって言ってたのにさ、もし、国王に呼び出されて、いろいろ聞かれて、自分のステータスがばれたら、たぶん自由は取り上げられちゃうと思うんだよね。」
カタストロフはすぐに反応して「では、まず、ステータスを隠ぺいする事から始めましょう、取り込んだスキルの中に ”隠ぺい” スキルはありますでしょうか?」
「カタストロフー、ちょっと見てくれる、僕のステータス」話しながらアユムはステータス画面を開いて見せた。
『【ステータス】名前:ワタリ アユム/種族:人間/年齢:18/性別:男/職業:自由人
レベル:∞/HP:∞/MP:∞/力:∞/防御:∞/敏捷:∞/知識:∞
【スキル】エクストラ:英雄経験値加速Lv4(MAX)/限界突破Lv4(MAX)/…
一般:鑑定Lv4(MAX)/リペアLv4/…、黒魔術:プチファイアLv4(MAX)/ファイアLv4(MAX)/ファイアーアローLv4(MAX)/ファイアーウォールLv4(MAX)/メギドLv4(MAX)/メテオLv4(MAX)/プチサンダーLv4(MAX)/サンダーLv4(MAX)/…、白魔法:…、光魔法:…、闇魔法:…、無属性:…』
カタストロフが読みだしてから、かれこれ一時間は経つ「ふーっ、ありました、”隠ぺいLv4”、凄いですよLv4になると『相手を操れる』みたいです、もうなんでもありです。それにこの世のほとんどの戦闘に役立つスキルを取得されています、無いのは歴代魔王のエクストラスキルとレジェントドラゴンのエクストラスキルだけですね、さすが我が主さまでございます。このステータスを一般の人間の男性の数値に変えておきましょう、それでステータスの問題は解決ですね。」
続いてアヴァランチが「それでは次に国王様の前での今回の件の説明についてですが、今後を見据えて、主さまにお聞きしておきたいことがございます、この先どのようにされるおつもりでしょうか?」
「じゃぁ、思いつくまま順不同で言うから、皆覚えてね」
・チップを成長させたい…「もう、魔物の最高レベル999になっております」
・君たちを合体させたい…「きっといつの日にか、お願いいたします」
・冒険者になりたい…「それは冒険者登録をすればすぐにでも」
・馬車で行商して、世界をめぐりたい…「商業ギルドで登録と馬車が必要です」
・魔王とレジェントドラゴンが眠る地を訪れたい…「私たちがいつでもご案内できます」
・戦闘奴隷とメイド奴隷が欲しい…「奴隷商でお買い求めください」
・やっぱりコメが食べたい、農業をやりたい…「農業ギルトへの登録と広い土地が必要です」
・貴族になりたい…「今回の一件で、もしかしますれば…」
・領地を経営したい…「貴族になりましたら可能でございます」
・エクストラアイテムを使いたい…「今すぐにでもどうぞお使いくださいませ」
・地球の料理を広めたい…「食材集めとメイドが必要でございます」
・お金が欲しい…「アイテムを売りましょう、王国からの報奨金も期待できますな」
・工業を発展させたい…「それならば、ドワーフ族の協力は必要になりましょう」
・ダンジョンを攻略したい…「喜んでお供いたしましょう」
・大きな風呂付の家を建てたい…「土地があれば、あらかた無限収納のクラフトで可能です」
・そして、日本に帰りたい…無言、返事に困っている
するとアヴァランチが「最後以外は今の主さまなら、すぐにでも出来そうな気がしますわ。ただ、当面の問題としては、『国王様への説明』ですね、このような内容は如何でしょうか」
せつめい
・確かに魔法を使ったが、あれはメテオではなくメテオの上位黒魔法メテオーラだった。
・自分の魔力を使ったのではなく、家宝として伝わるスクロールを使ったこと。
・本来はそのスクロールを売り、広大な土地を買い、人を雇い、田畑や工業などやり、そこで作った品々を世界巡りながら販売して生きたかった。
・血縁者が亡くなり、一人になった僕は、こんな夢を抱いてここへやってきたが、この王国の民を守るためとはいえ、すべてを失ってしまいました。
「如何でしょうか、アルジさ…」
「よしっ採用!、よしグレシアへ向かおう」
こうして、アユムは工業都市王都グレシアに足を踏み入れた、その際門番に名前を聞かれ ”アユム” と名乗ると、門番は驚きの声を上げ、グレシアで最上級の宿に宿泊するようにと話してきた、きっとこの後のことを考え所在をはっきりさせたかったんだろう。
王国の対応は素早かった、僕が指定された宿屋に行き、宿帳を記入していると、宿屋の主人から「料金は王国から頂いておりますので、お支払いはありません」と言う言葉と同時に王国からの招待状が渡された「早っ!」
それによると、一週間後に王城に来るようにと言うような内容だった、詳しくはわからない。なのでそれまでにやることは、いろいろあるのである。
やること
①冒険者ギルドに行き、冒険者登録を済ませる
➁アイテムを売り、当座の資金を得る
③国王陛下への拝謁用の服を大至急仕立てる
④セリフを覚える
⑤できれば奴隷を見に行く
とまぁ、こんなところなので早速、冒険者ギルドに向かった。受付で冒険者登録の依頼と名前を言うと、場は騒然とした。是非パーティに入ってくれと、てんやわんやの騒ぎになり、押すな押すなの黒山の人だかりができた、ただ僕は、正直どのパーティにも入りたくなかったので「僕は魔術師じゃない、メテオは家宝のスクロールを使ったんだ、それももうないっ」と言うと、今までの騒ぎが嘘のように、まるで蜘蛛の子を散らすかの如く集まってきた人たちは、元の場所へ戻っていったのであった。
しかし、受付の大人のお姉さんの対応は違った、すぐにギルド長の部屋へ通された、僕はそこで考えていた説明を何とか言ってみた。話を聞いたギルド長と受付のお姉さんは、少し涙ぐんでいるようにも見える、説明がうまくいったのか、本来は町の汚れ仕事や薬草採取が中心のG級からの登録になるが、僕の場合は試験もなく狩猟もできるF級の登録にしてもらえた。
そしてギルドでアイテムを売った、よくある異世界モノの話のようにドカンとアイテムを出して驚かれることは避け、安いアイテムを各種一個づつ並べ、大まかな買取金額の価格調査をしながら、販売した。ある程度の価格が分かったところで、当座の資金である500ゴールド分のアイテムを換金した。
次は服の仕立てである、都市一番の服屋を紹介していただき、国王陛下への拝謁用の服を大至急仕立ててもらう事にした、すでに”アユム”の名はあちこちに浸透しており、親切に応じてくれた。今後の事もあり、こちらがデザインした下着を含めた服も作ってもらえるように、専属契約を交わした。服屋も ”アユム” ブランドが作れると大喜びだった。
王城で説明するセリフはあちこちで話すうちに、自然に頭に入った。
最後に奴隷商に足を運び、相場を調べることにした。いきなり奴隷商から声をかけてきた「いらっしゃいませ、本日はどのような奴隷をお探しでしょうか?」いつもの決まり文句のようだった。
「戦闘用奴隷が一人と料理、読み書き、計算ができるメイドに使えそうな奴隷の相場を調べにきた。」
「持ち合わせは、いかほど…」手をさすりながら聞いてきた。
「今は持ち合わせがあまりないが、気に入った奴隷であればすぐにでもお金は用意できる。」
「さようでございますか、ではこちらの戦闘奴隷はいかがでしょうか、うちで扱う最高の戦闘奴隷でございます、レベル230,トカゲ族のオス、ファイターでございます、こちらは2000ゴールドで…」
アユムは思い出していた、”こういう時、異世界モノでは一番奥の檻の中で、ゴホゴホと咳をしている奴隷が当たり奴隷のパターンだよね” そう思ったアユムは「奥のも見せてもらうよ!」中へと進んだ。
「正直こちらのはお勧めできません、病気を患っておりまして、もう長くは持たないと思いますが…」
思わずアユムは「来たコレっ!」と声を上げ、続けて「いくらだ?」と価格を確認した。
「これですと、200ゴールド、奴隷紋の処理で3ゴールドでどうでしょうか?すぐに死んでしまってもお金は返しませんからね。」
アヴァランチがアユムに耳打ちしてきた「これは病気ではなく呪いです、呪いなら私が解呪できます、それに相当な実力もありそうです、是非お買い求めを!」
アユムはこの子をもらうよと奴隷商に決定の意思を伝えた。
奴隷商は「次に、料理、読み書き、計算ができるメイドに使えそうな奴隷ですと、こちらの三人でございます。」
アユムはまた思い出していた、”こういう時は忌み子としての扱いを受ける、黒髪の黒い瞳の…いた!ドンピシャ君だ。」
黒髪の少女の前に進むと、奴隷商は「黒髪で黒い瞳は縁起が悪いという事で13歳からずっと売れすに5年を過ごしています、その間、料理や読み書き計算まで教え込みましたが、どうしてこの容姿で売れすにおります、もしお買い求めならお安くしておきますが、それにこの子は初めてですが夜のオツトメも承知いたしております」
僕には二重で目が大きく、鼻筋も通っている、日本のかわいい芸能人に見えた「この子はいくらだ?」
「この子は育てるのにお金がかかっておりますが、お買い求め頂けるのであれは300ゴールドと奴隷紋の処理で3ゴールドでどうでしょうか?」やはり手を擦り合わせている。
「うーん、どっちもいなくなった方がこの店にも良い事なんじゃないのかな?二人で奴隷紋の処理込みで400ゴールドでどうかなぁ」アユムは奴隷商の目を見す、天井を見上げるそぶりをした。」
奴隷商は「いやはや、困りましたな、確かに売れてくれることは、良いことなのですが…」
「わかった、今後もあることなので450ゴールドでどうだ!」と今度は奴隷商の目を見て勢いをつけた口調でたたみかけた。
「わっかりました、今後の御贔屓にして頂けるのであれば、450ゴールドでお売りいたしましょう、早速奴隷紋の処理を…」お金と引き換えに奴隷紋の処理をして二人を引き取った。
「ふぇ~っ、今日換金したゴールドがもう底をついた、明日またアイテムを売って、必要なものを買おう、だから今日は今のままだが、ゴメン!」と二人にアユムは謝った。二人も緊張からか、ちょこんと頭を下げるだけだった。「さぁ、おいしい食べ物を買って宿に戻ろう」
食べ物と肌着を買い、宿に戻って二人にはすぐに風呂に入ってもらった。十分長湯だった、そのあと自分も風呂に入り、それから食事を同じテーブルでとった、体も温まり、清潔な肌着、そしておいしい食べ物をおなか一杯になるまで食べたころには、二人はいろいろと話すようになってきた。ただ名前を聞いても、「ご主人様が名付けて下さい」の一点張りなので、アユムは自分の好きだった芸能人の名前からつけてあけた。
銀色の猫耳族は今では ”絶滅危惧種” であり珍しい種族であるそうで、アユムもたぶんそんなことだろうと予想はしていた、この子は”アキナ”と名付け、アヴァランチに解呪してもらった。そして、黒髪の少女には”ユイ”と言う名前を与えた。
後でわかったことだが、アキナは過去冒険者B級までの経験があり、ユイはアサシンの素質と”隠ぺい”のスキルを持っていた。
そうこうしているうちに、国王との謁見の日となった、新調した服で大広間に通されたアユムは、大拍手の中、国王の前へと進み出た、すると国王はやはり事のいきさつをアユムに問うてきた、アユムは兼ねてから準備したセリフと表現で、広間にいる大勢の貴族たちの心を掴む説明をした。中には感動のあまりすすり泣くものもいた。
国王は「この国のため、自らの大切な財産である大変貴重なるメテオーラのスクロールを使い、王国にかわって複数の魔物のスタンピートを殲滅したことは大勢の民が見ており、事実相違なしである。また、このために財のすべてを失った事も事実である。スタンピートを止めなければ、この王国にどれだけの被害が出たか想像に難しくない。しかるにアユムよ、そなたに”子爵”の爵位と白金貨200枚を贈呈する、さらに子爵の領地として、荒地ではあるが、そなたが最初にメテオーラを落とした西の大地を与えることとする、皆の者良いか!」会場は割れんばかりの拍手が起こった。
「謹んでお受けいたします、王国のため、この命かける所存でございます」
「うむ、大儀であった…、それはそうとアユムよ、もっとこの王国のために精進せよ、働きによってはメテオーラを落とした東側の土地も残っておるでな!ハッハッハ」式典は大きな笑いと拍手の中で幕を閉じた。