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Episode1:こんな転生、どこにでもあるよね(3つの願い)

異世界話は出尽くした、きっとどれかと似た話になるでしょうね!だったら…。

「まぁ、なんじゃ。その~ほれ、いつものやつじゃ。なんつーか、最近よくあるアレの話じゃよ」老人は面倒臭そうに話し出した。


「なんか、歯切れ悪いですね、あなたもしかして、神さま?、これってよくある ”異世界へGO” 的な場面ですか?」歩夢は最近よくある異世界モノを思い浮かべて、目の前の老人に話しかけた。


「お~ぉ、おぉ、よ~わかっとるようじゃの、察するに異世界の話じゃな」神さまは説明の手間が省けて良かったという表情を浮かべている。


「でもなんで僕が?さっきまでピンピンしてたのに、なぜここに?」当てずっぽうで話した異世界モノであることに驚きながら、ここに至る状況が理解できない歩夢は、納得がいかない表情を浮かべ少し大きな声で問いかけた。


「聞きた~い?、数多ある異世界転生の話じゃから、この辺はすっ飛ばしても良いんじゃないかのぅ」神さまはやはり面倒臭そうにしている。


「いやいやいや、ここにいる理由が僕にはわからない、なぜ?いったいどうして!納得できない」歩夢はさらに語気を荒げた。


しぶしぶ神さまは応じる「しょうがないの~ぅ、聞かん方がええかもしれんが…」


「是非お願いします」


「そっか、よかろう!」


歩夢はいろいろな異世界モノの始まりのシーンを思い浮かべた。僕は病気で死んでもいないし、子供を救おうとして車にはねられたわけでもない、まして召喚されたわけでもない、一体なぜ僕はここにいる?


「お前さん、ついさっきまで何をしとった?」


「何をって、YouTube見て馬鹿笑いしてたけど…」


「で、それからどうなった?」


「笑いすぎて吃逆シャックリが止まらなくなって…」


「止まらなくなって、どうなった?」


「気が付いたら、ここに?…ンっ、いつ僕死んだ?」


「わからんか? ”止まらなくなったお前の吃逆シャックリを止めようと、ノリでお前の家族が総出で、たまたま同じタイミングで、それぞれ違う方法で、お前を驚かせたんじゃ” それでびっくりしてお前の心臓が止まったわけじゃな」神さまはその時の家族のしたいろんな驚かせ方を思い出して笑っていた。


神さまの笑う様を見ながら歩夢は淡々と語った「家族みんなで、冗談のつもりで脅かしたら、僕が驚いて死んだって事?なんてこった、みんなの夢枕に立ってやる」


「ほ~れのぅ、話さん方が良かったじゃろ~、時間の無駄だったのぅ」


「で、何でここへ?」歩夢は最初の疑問へと立ち返り、神さまに再び訪ねた。


「なんじゃ、死に方が面白くてのぅ、お前なら、あっちの世界でも笑わせてくれそうじゃからのぅ、わしゃ、暇で退屈しとったんじゃょ」神さまは、急に胡坐をかいて座り、手を顎に当て、撫でながら、薄笑いを浮かべ歩夢を見ていた。


「…へ~ぇっ」 歩夢は、しらーと薄目で神さまを見た。


「もういいじゃろ、ほれほれ、特別な能力をさずけてやるゾぃ」神さまは急き立てるように言った。


「ちょっと待ってよ、いくら異世界モノが山ほどあるからって話し飛ばしすぎだろ!僕まだ名前すら言ってないし…」


「わしとお前がわかっとるからええじゃろが?」


「いやいや、ここはお決まりのパターンだから!、僕の名前は、渡 歩夢18歳…、でっ、僕は異世界で何をすればいいのでしょうか、まさか勇者とか?」歩夢はよくある勇者の話を想像しながら、心をときめかせながら神さまの返事を待った。


「な~にを言っとる、家族のドッキリで死んでしまうお前が勇者なんぞなれるわけがないじゃろ、それに勇者なら、ふた月ほど前にもう行っとる、絶賛成長中じゃょ」


歩夢は落胆を隠せない表情で、「じゃぁ、何をすれば?」


「自由に生きよ、その生きるさまをわしに見せて、大いに楽しませてくれ、お前がどんな異世界モノを作り上げるか見てみたいものじゃの~」神さまは楽しそうに答えた。


特に使命もない”自由”という言葉に反応し歩夢は「へぇ~、異世界で自由人か、悪くないな」自由をイメージしながら歩夢は異世界ライフを送ることに納得していった。


「これで納得したか?もうええんか? なら、早う願いを言え、三つまでじゃぞ」早く異世界へ送り、歩夢のハチャメチャ異世界ライフを期待している神さまが矢継ぎ早に捲し立てた。


「三つねぇ~、大盤振る舞いだね」数ある異世界モノを想像しながら、神さまとは対照的にゆっくりと受け答えを始めた。


「三つぐらい言えば、今まである異世界モノとは違う願いが出てきそうじゃからな」神さまは何かを期待している。


「じゃぁ、一つ目、まずこのスマホ!異世界でも使えるようにしてくれ」


「ガックシ!いきなり聞いたことのある願いじゃぞぃ」そりゃ有名作品とかぶっているぞと言わんばかりの落胆ぶりであった。


「それで!」


「それでっ!それでとは最初の願いの続きという事かのぅ?」


「そう!それで地球の情報も見られたり、最新のアプリが使えるようにして欲しい」


「あぁ、それ知っとる、じゃが通信で取り寄せるとかネットに書き込むなど地球と関わることはできんからの!」神さまはその有名作品に習って同じ条件を付け加えた。


「あぁ、いいよ!…そんでもって…」


「そっ、そんでもって!ふーぅまだ続きがあるのか?欲張るのぅ」


「神さま、フレンド登録してくれ、たまには連絡したいから」


「おぉ~、それもそうじゃな、どれ、スマホを貸してみろぃ」受け取った神さまは、”ホンジャマカホンジャマカ”と唱え「ほれ、受け取れぃ」歩夢にスマホを渡した。「して、次の願いは、なんじゃ?」


「そうだな、異空間倉庫が欲しい、それも無限に入るやつ」


「アイテムボックス的な奴じゃのぅ、それもありきたりじゃのぅ」やはり落胆し渋々応じる神さまだった。


「さらに!」


「さっ、さらにとは願いの続きという事かのぅ?」


「あぁ、そこに保管しているもので、僕が作りたいとイメージしたものが作れるのなら、クラフトしたい」


「あぁ~、そんな話もあった気がするぞぃ、まぁ良い、いいじゃろう。最後はなんじゃ?」


「う~ん、そうだな、僕は弱いし勇者じゃない、実際戦いは好まない」歩夢は自分の性格と現状を分析し神さまに確認するように話した。


「まぁ、たぶんそうじゃのぅ」


「でも、スキルは大事だと思うんだ」


「そりゃ~ぁ、自由に生きるためには、ある程度は必要じゃな」


「だけど、今は、どのスキルが必要かわからないんだ。だから集めておきたい、死んだ魔獣や怪物などの死体からスキルをもらえるようにして欲しい。」


「ほぅ、死んだ魔物からのぅ、それなら戦わずしてスキルを奪えるのぅ」


「そして!」


「やれやれ、そしても願いの続きじゃな」


「そして!重複したスキルは、スクロールにしてドロップさせて欲しい」


「スクロール、ドロップ、なぜじゃ?」


「売れば当面の資金調達ができるだろ」


「なるほど、やはり面白いことを考えるのぅ、じゃが、スキルにはレベルがある、最高でレベル4じゃな、レベルが上がれば、できることも変わってくるのじゃが、良いのか?」


「なら、こうしよう、スキルレベルがレベル4でカンストしたら、それ以降同じスキルを得た場合は、スクロールでドロップしてくれ」


「よし、これでよいな、では、送るぞぃ!」


「送る?って何処へ、まさか、よくある魔の森にポツンと置いて行かれるんじゃないよね」歩夢は上目遣いで問いかけた。


「な~にを言うとる、わしが送るのは決まって”はじまりの村”じゃよ」


「”はじまりの村”?なんかいろんなものが混ざってきたな、まぁ、そこなら安全かな、…わかった!いいよ」


「おっと、忘れとった、ほれ、餞別じゃ20ゴールドある、勇者にはいつも渡しておるんじゃ、初期装備代じゃょ」


「神さま、僕は勇者じゃないから、好きに使わせてもらうよ!」


「あぁ、わかっとる、お前の好きに使え、ではの、達者でな」


すると目の前が歪みだし、気が付くと村の井戸の前に立っていた。


「”はじまりの村”、井戸の前、石造りの家、昔のヨーロッパ調…、なんで日本風じゃないんだろう?まぁいいかっ!」いつも通りを歩夢は納得した。


「おっ、おい、そこの変わった格好の人」


「俺の事?!」振り返ると、大きな馬車の荷物の隙間から話しかけてくる商人風の男がいた。「あなたは?」


「俺は、この先を三日ほど馬車で行ったところにある大きな工業都市で王都でもあるグレシアで商人をやっているロルドっていう行商人だ、今日”はじまりの村”のロト村に来たばかりだ」汗まみれの男は額の汗をぬぐいながら話しかけている。


「そう?、行商人?、ロルドさん…わっ私はワタリ 歩夢アユム、アユムと言います」この世界で初めて会話をすることに戸惑いながらアユムは自己紹介をした。


「ずいぶん奇妙な格好だね、どこから来たんだい?」ロルドはアユムを上から下へなめるように眺めながら話を続けた。


改めて自分の格好を見ると上下ジャージ姿だった事に気付いたアユムは、焦ってつい本当のことを言ってしまう「どこって、違う世界からです」


「違う世界?あぁ、別の大陸の人かい、そんな服が流行ってんのかい?ここじゃ笑いものだよ、ちょうどいい、服も取り扱っているよ、どう?買って行くかい」ロルドは自分の理解が及ぶ範囲で良いように理解してくれている。


確かに目立つのはダメだなと思い、すぐにアユムは返事をした。「かっ、買います」


「んじゃ、1300シルバーね」荷物の隙間からニュっとアユムに掌を出してきた。


「これで」アユムは1ゴールドを差し出した。


「ほいよ、上下の服と8700シルバーね、毎度あり」ロルドは手際よく対応してくれた。


アユムが上下の服を受け取ると、”ピロリン”という音が二回鳴った…気がした。


「あんた、これからどうすんだ?旅をすんなら地図も買うかい、今なら5000シルバーでいいぜ」ロルドは商売の話を続けてきた。


「そうだな、どこに行くにもこの世界の地図は必要だな、買うよ」5000シルバーを手渡し、地図を受け取った、するとまた、”ピロリン”という音が鳴った…気がした。しばらく考えてアユムはロルドに「できれば工業都市グレシア!王都に行ってみたい」と伝えてみた。


ロルドは手を止め「そうかい、おれはここで商売をして、明後日にはグレシアへ戻るつもりさ、良ければ一緒に行くか?俺も話し相手が欲しいし、1ゴールドでどうだ?」


”なんだ金をとるのか”と思いながらも「あぁ、よろしく」アユムは笑顔で返事をしていた。


「じゃ、明後日の昼前に、ここでな」と言うロルドと別れ、井戸の物陰で素早く服を着替えた。


アユムは「先ずは今日の宿と食事だな」と言いながら、宿屋と思われる看板を見つけ歩き出した。


「おぃ、あんた、見ない顔だけど、ここへは観光で来たのかい」笑顔で話しかけてきた村人らしい人物がいた。


「そんなんじゃないけど、まぁ、そんなところかな」言葉を濁しながら、その村人に「何か?」と問いかけた。


「いやね、観光ならいいところがあるんでね、連れって言ってやろうかと思ってね」やはり笑顔で答え、「私はそこの宿屋をやっているもんだけど、観光案内もやっているんだよ」アユムに近寄ってきた。


”宿屋の主人か、ここで観光案内を断ると、泊めてもらえない気もするな、さすがに野宿はいやだから、ここは誘いに乗るかな”と考え「時間もあるので案内頼めますか?それと今日、明日の宿もお願いしたいのですが」少し丁寧な口調で宿屋の主人にアユムは伝えた。


「いいさね、荷物もないみたいだから、早速観光するかい?」丘の方を指さしながら宿屋の主人が肩を叩いてきた。


「そうですね、部屋に入ると、動きたくなくなるから、このまま行きましょう」


「なら一泊食事付きで1500シルバー、観光案内は300シルバーだ、全部で3300シルバーだね、まいどあり」両手を皿のようにしてアユムの前に出してきた。


これが高いのか安いのかは、後々わかるだろうが、今は言い値で払うしかない、「では」と宿屋の主人の両手に3300シルバーを落とした。


金を受け取ると、宿屋の主人はサッと丘に向かって歩き出し、ついてこいと手招きをした「これから少し歩くぞ、行く場所は”勇者の墓”だ」


「まさか、村から出るんじゃないですよね!僕は武器もないし、すっごく弱いから」宿屋の主人の横に並び顔を見ながらアユムは確認をした。


「出やせん、ただ”はじまりの村”らしく、弱っちぃ魔物は出るかもしれん、なーに、蹴っちまえば死んじまう程度の奴さ、安心しな」宿屋の主人は笑いながら答えた。


アユムは少し不安にかられながら「でもなぜここに勇者の墓が?」という問いかけに、宿屋の主人は「なぜって?ここが”はじまりの村”だからさ、魔王を倒した勇者様ご一行が亡くなった後には、ご遺体はここに埋葬するしきたりなのさ」宿屋の主人はなんの疑いもなく当然のように語った。


「そして、ここには歴代の4人の勇者とそれぞれのお付きの猛者たち全部で16の英雄たちのご遺体が安置されているのさ」宿屋の主人はサっと手を広げ、ここだという合図をした。


「確かに墓石が16基あった」墓石をぼんやり眺めながらアユムは「それで?」とこの後の展開を期待した。


「どうぞ、お参りをしてくれ、よーく見て行ってくれよ」宿屋の主人はアユムの背中を押し、少し体を前にやった。


アユムは、”これだけ?”と感じながらも、質素ではあるが、重厚な感じのする16基の墓石へと歩み寄っていった。すると”シャキーン、シャキーン”という音が頭のなかで何度も何度も響き渡った。アユムはさっき聞こえた音も、今聞こえている音も何なのかわからないまま、なるべく気にしないように16基の墓石全部を見て回った。


「どうだ、すごいところだろ、これで観光は終わりだ、俺はお前さんが泊まる部屋の準備があるから先に行くぞ、ゆっくり帰ってこい」宿屋の主人はアユムに手を振り、登ってきた丘を駆け足で下って行った。


”これで終わり?300シルバーをタダでとられた気もする”と思いながら、しばらく頭の中で響く”シャキーン”という音を聞きながらぼーっと立っていた。すると、”ぎゅるるるる~っ”と腹から音がした、「これは腹が減った音だ、僕にもわかる、宿に戻って飯でも食おう」アユムは途中拾えるものを片っ端から収納庫に入れていった。そのたびに”ピロリン”という音が鳴ったので、アユムは音の意味がわかった気がした。「たくさん拾えば何かクラフトできるだろうか?」そう考えながら宿屋に向かった。


「宿屋に戻ったら、神さまに電話をして、今日のことを話してみよう!」アユムは宿屋に着くと主人に挨拶をし、食事を注文した。出てきた食事は、野菜スープと何かの肉の香草焼き、そして硬いパンだった。味は悪くないが薄味だった。「ふーっ、やはりパンか、当然この世界はコメじゃないんだよね、いつかはきっと!というパターンだな。早く慣れなきゃな」そんなことを呟きながら食事を終え、案内された部屋に入った。「神さまいるかな?」スマホを手に取り、フレンド欄に一つある”神さま”をクリックした。

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