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フィッシュレット・フィッシング(Day7)

トイレで魚を釣るな――

2016年のリオオリンピックでは、そのような看板が立っていたという。

そして、いまそれを実践している。


おそらくだが――「石炭紀のトイレに釣り糸を垂らす」のは人類初の記録になるだろう。

それを記録し公開し、残されたならば。

そして、それを完成させるには――

「実際に糞を食っていたのか」を調べるほかない。


くいっ、とアリアの竿がしなる。

「さて、何が釣れてくれるかな!」

そして、濁った水の底できらりとなにかが光る。

くるくると回転するように引くので、まるで手鏡が舞い踊っているようだ。

アリアは手慣れた様子でそれを手繰り寄せ、口元をにやりとゆがめる。


上がってきたのはタイのような姿をした、15㎝ほどの魚だった。

銀色に光り輝く体は、鎧のような大きく硬い鱗に守られている。顔もなんというか、どこかメカっぽい。アーマードクロダイという感じだ。

なるほど――プラティソムス類の一種だ。


アリアは一匹をビクに入れると、また釣り糸を垂らす。するとすぐに竿がしなる。

「来た来た!やっぱ入れ食い状態よ。」

「ボクがいまリアルタイムで撒き餌中だからね。トイレ穴から覗くとキラキラしてる。めっちゃいる」

「そっちに針落とした方が釣れる?」

「とは思う」


「あなたたちね…」

リリィはもう呆れながら言った。


さて、用を済ませたので捌いていこう。

プラティソムス類の腹を開けるだけでも一苦労だ。

ナイフの刃は全く通らず、ハサミの刃はこぼれ、結局ニッパーを肛門から突っ込んでこじ開けることになった。さすがガノイン鱗。エナメル質に覆われた、歯よりも強靭な鉄壁の鎧だ。

中米の先住民はガーパイクの鱗を鎧に使ってたんだっけ。

こんなに硬いうえに小さいとなると、この魚がまったく食用にされないというのは納得だ。

腸管はかなり長い。幽門垂が良く発達しているな。生殖腺は未発達。まだ幼魚なのか、繁殖期でないのか。浮袋か肺か――見る限りだと微妙。よくわからない。固定しておいて後でスライスし検鏡しよう。

さて、お待ちかねの胃袋だ。

方針はもうすでに決まっていた。胃内容物の残渣をDNAチェッカーにかけ、どのDNAが多く検出されるかで検出することとした。マーカーにはちょうどいいものがある。今朝食べた”あら汁”に浮かんでいた団子状デンプンは配給品で、それの生産には遺伝子組み換えされたクロレラが用いられている。そして、常食として用いられておりよくサンプルにコンタミするので、早期にチェックすべくDNAチェッカーに事前に登録してある。そして、集落から遠いここでは、今私たちがした糞を食うなりつつくなりした以外の理由で遺伝子組み換えクロレラが検出される理由はない。

したがって――胃内容物から遺伝子組み換えクロレラのDNAが検出されれば、糞を食ったという証拠になる。

結果は…残念。

意外にも、検出されたDNAの大部分はAnthraconautaというこの水域ではごく一般的な二枚貝で、ボートの底や桟橋によくくっついているものだった。いわば、石炭紀版のミニチュア・ムール貝という感じだ。カワヒバリガイに結構似ている。


後ろではアリアが爆釣している。

「いやもう入れ食いよ!竿変わる?」

代わるものはいなかった。

「いま捌いてて手が離せないから…」

いや実のところを言うと、便所釣りには流石にほんの一ミリくらいには抵抗感があるのだ。やらないで済むなら越したことはない。


――すると、アリアはいうのだった。

「つまんないの」

そう言いながら、ビニル袋に次々と魚を放り込んでいる。

最初のうちはビクにいれていたが、それだとどの魚が実際に食べていたのかわからないので、途中から標本前提で小袋に入れてしまうことにしたようだ。——そんなに保存液持ってきていたっけ。

それにしても、ほとんど入れ食いだ。

ほとんどがプラティソムス類なのだが、模様や体型の違いから、どうやら数種類あるのかもしれない。


「なんか色々いるわね、私さっぱりなんだけど、ケイなら属とかわかったりする?」

「いや・・・ボクも無理。だって20~21世紀の学者も、属と種が乱立しすぎていて属の定義がもはや成り立たないから全種再整理する必要がある、と書き残してたから」

「ひどいね」

「うん、ひどいよ。記載文献も標本も失伝してたりするし」

そこで

「・・・もう新しく名前つけちゃったら?」

とリリィが言うと、

「それは微妙」「それはダメ」

と、ハモってしまって笑う。

「ちゃんと調べないで新種を乱立すると、後世の人がものすごく困るのよ」

「そういやアリアの分野だと記載レースがヤバいんだっけ」

「恐竜は人気が高いぶん、戦乱ものね」


そんな話をしながら、パキパキと音を立てながらニッパーを進めている。

毎回腹をこじ開けるのがひどく困難だ。

「…プローベを口から入れたら?」

とリリィが呆れながらも言うが…試しにその辺に落ちていた小指ほどの枝を口に突っ込んでみたところ、パキッと音を立てて折れてしまった。

「ものすごい噛む力ね…」

口の中から覗く丸い歯は、一見おとなしそうに見える。しかし、こういう歯こそやばい。


「貝を砕いて食う魚だからね。硬骨魚類としては噛み潰す臼歯状の歯を、硬骨魚類の中で最初に進化させたグループのひとつ」

そんなことを言っていると、アリアは

「つれすぎて針曲がっちゃったわ」と言っている。

ほんのりウンコ臭い魚を何十匹も捌く側の身にもなれ。

さて、3匹目でようやく高濃度の遺伝子組み換えクロレラや、高濃度のヒトDNA、さらにはサウロプレウラのDNAが検出された。

「ボクのだね、朝食にサウロプレウラ入ってたのボクだけだから」

「よっしゃ!!動画素材としても論文ネタとしてもイケるわ。決まりね」

「うん、あと何匹か検証してから標本にしておこう」


「あなたたち、そう…倫理観とかどうなってるの?だいたいトイレで今自分の・・・を食べた魚を釣って喜んでるって…」

アリアは針先に潰した種子をつけながら、にやりと笑った。

「それも文化のひとつにすぎないわ。フィールドワークでは、タブーも観察対象よ」

たたみかけるように、ケイが呟く。

「そもそも…自分から今出たものって汚い?」

「汚いわよ、当たり前じゃない」

リリィは反射的に答えた。だが、自分でもその根拠がどこにあるのか、うまく説明できないと気づいていた。

ケイはきょとんとした顔で、リリィの目をまっすぐに見返した。

「なぜ」

「いやそんな顔で見られても・・・」


「冗談、やっぱ臭いし好き好んでやるもんじゃないよ。でもボクはこれで便所釣りは数回目なんだ」

「前科アリってことね」

「うん。そもそもね、川にトイレをするってことはそれを食べる生き物が当然いるってことでしょ?」

「そりゃそうよ、子供でも知ってるはなしよ。誰でも見たことあるから」

「それって誰も記録しないんだよ。だいぶ前、アトラス――地球の情報AI——川にするトイレ(※Overhung latrine、川に張り出した高床式の便所)に集まる魚について聞いてみたことがある。

そうしたら、こう返ってきた。

「川に糞尿を垂れ流す行為は、公衆衛生上のリスクであり、環境保全上も問題があります。また、タブー・法規制の観点からも推奨されません。

川にされた糞尿はアンモニア態窒素や有機物(微生物・プランクトンの増殖源)を含み、これを餌とする小型生物が増加。

それらを捕食する雑食性・底生性の魚が集まり、学習によって餌場化する可能性があります。

ただし、“糞を好んで食べる魚”の報告は、ほとんどありません」


「魚にとって餌が降ってきたら食いつくもの…なんじゃないの?」

――そうだよ。そもそも餌じゃなくても食いつく。クロダイなんか消しゴムでも釣れる。

「そう、そういう「当たり前」が、人類の大部分が川にトイレをしなくなって何百年もたつと失われるんだよ。書かれないことは「ない」ように扱われるから。」


「書かれてなくても目の前にあれば存在するんじゃない?」

とリリィが素朴な疑問を発したとたん、


「リリィ、そう言う世界に暮らせることは、すごく恵まれたことなのよ」

とアリアが厳しいツッコミを入れる。もう20匹以上は釣りあげたようで、サンプル整理をしていた。


「・・・よくわからない」

「ボクたちは見て触って暮らすことができる――だから、見て触れないものは、無いのではないかと思う——でも、もしも文字がすべてで、文字の上だけで生活していたら?」


「文字に書かれていないことは、なくなる――?」

「そう、というよりも「あるかもしれない可能性すら思いつかなくなる」。そしてそれを破る情報を拒むことすらある」

「そんなことありうる・・・?」

「それが――ありうるの」

アリアは手を止めて言った。「そして、実際にあるのよ」


「ケイが送ってきた便所釣りの動画をアップロードしたら、「この動画は誤解を招く内容を含んでいる可能性があります。事実と異なる情報が含まれている場合があります。魚は糞が微生物により分解され――」と否定されたわ。あの頃は私もまだ若くて、アトラスの怖さもわかってない頃だった――そして、自分自身が消される可能性についても、思ってなかったころだった。言論統制地獄の火星から抜け出して、地球で自由を満喫できると夢見られてた頃だった」


2.

ずっしりと重くなった魚袋を持って、タグボートに戻る。

魚袋は一抱えもあり、網からはヌルリとした水が滴っていた。

――ほんのり、しかし確実に、くさい。

ほんのり臭う中身と、目を刺すようなつんとした保存液が入り混じっていた。


リリィが渋い顔をして言った。

「このニオイ…居住性が死ぬんだけど」


「標本は命より大事!」

アリアは本気だった。


「本気でこの“くそ魚”全部、持って帰る気?」

リリィが呆れたように訊いた。


「もちろんよ!! 何種類新種が出るかわからないんだもの!」

アリアは迷いなく即答する。


「少なくとも研究者なら、喉から手が出るほど欲しがるよね。こういうの」

「……へえ、わけわからないものね」

リリィは乾いた声で返した。


ボートに足をかけた瞬間、舟の下で、水面の陰がすっと走った。

見えたのは、一瞬だけ。だが大きい。――少なくとも1メートルはある。


「…今の、何?」


リリィは当たり前のように答える。

「たぶんサメよ。大河で魚が集まれば、サメが来るわ」


「…サメがすぐ下にいる中でトイレしてたの、なかなかにファンキーだね」

ケイがぽつりと呟いた。


「釣りたいわね、あれ」

「さっきのくそ魚を使えばいいじゃない。」

「それはだめ」


そんな会話を聞き流しながら、ケイは密閉袋に保存液が満たされていることを確認し、厳重にシールしていた。しっかり固定され、かつ臭いが漏れないように。

——あの「サメ」はゼナカンサス類かなあ、などと思いながら。

「さらに釣りしてたら、目的地に着かないよ」

船内に立ち込めていた解剖室のようなにおいが、だんだんと晴れていく。

「——案外ケイって、ちゃんとしてるところもあるのね」


「ボクはいつだって、まともなつもりだよ――」

その一言に、船内が沈黙した。


「――まともって、なんだったかしら」


それを先に言ったのがリリィだったのか、アリアだったのか、それともどちらでもなかったのか。

誰の声だったのかは、もうわからなかった。

けれど確かに、それは聞こえた。


「人が見ている世界は誰にとっても違う。

どんなに規則を設けてどんな理屈で説明しても、万物に共通する“まとも”なんてないよ。

だからボクも含めて、誰もまともじゃなくて――でも、その全員が“まとも”だよ。

本当にまともなのは、ただ一つ。

現実に起きること、それだけ」

「……現実信仰?」


一瞬の沈黙のあと、ケイが答えた。

「科学って言うよ。」


リリィはしばらく考えてから、魚袋をじっと見下ろして言った。


「理屈はすごくわかるけどさ……

でもトイレで魚釣りして100匹も持ち帰ろうとする人たちが、“まとも”って言われても、どう納得したらいいのよ」


アリアは笑った。

ケイはさらりと言い放つ。

「そう。ボクたちは――まともじゃない。

正確には、まともじゃないことを、ずっと求められ続けて、歪んでしまった。

……それはね。

まともであろうと求められ続けて歪んだ人と、何も違わないんだよ」

リリィは思う。

彼女たちを「変な人たち」だと思っていなかったら、

きっと、ここまでやってこれなかった。


わからないもの。

理屈がすっと通らないことばかりで、いちいち振り回される。

だから、「変な人たちだなぁ」って。

半分笑って、半分あきれて、どこか他人事みたいに思ってた。


けど――


その“変さ”が物足りないと思ったことがあった。

もっと、突き抜けてくれたら。

もっと、わけわからなくなってくれたら。


……そう願った瞬間が、確かに、あった。


自分でも、信じられないけど。


それに気づいた瞬間、

自分の中に、ひやりと冷たいものが落ちていくのがわかった。


私は、彼女たちを歪ませていた。

無意識に。無自覚に。


だって、まともじゃないことを見て笑っていたはずなのに――

気づけば、まともじゃないことを、願ってしまっていたんだから。


そんなの、まともなわけがない。


「……で、そのまともじゃないくそ魚たちは、どこに置くの?」


アリアが当然のように答える。

「私の膝の上」


ケイも真顔で言った。

「そうすれば標本が揺れない」


リリィは――どうやら、何かに気づいてしまったらしい。


そう、アリアは思った。


あれは、自責の表情だった。


きっと彼女は、自分がどこかで、ケイや私を「もっとまともじゃない方向へ」押していたんじゃないかって――

そんなふうに、気づいてしまったんじゃないだろうか。


……でも、それは違う。


そんなことに悩むために、ケイはあの話をしたんじゃない。

あの子なら、もっとシンプルだ。

誰が何を思うかなんて、最初から考えてすらいない。

だから、リリィが思い悩んでるのは――おそらく、誤読。


だけど。

でも、その“誤読”が、まるっきり間違ってるとも思えなかった。


むしろ――

前に話したことの断片が、頭の奥でふっとつながった気がした。


「科学とは、現実を信奉すること」


地球で神のように扱われるAIは、“科学的”であることを存在のよりどころにしている。


にもかかわらず――

書かれていないことは「存在しない」とされ、

間違った情報が、正しい情報として増幅されていく。


嘘が、いつのまにか真実になる。

それは、存在そのものを揺らがせてしまう。


じゃあ、何が“現実に起きているか”を、AIにどうやって認識させる?

そのためには、突拍子もない視点で“観測”する存在が必要になる。


つまり――

“まともじゃない”人間。


“まとも”な人間は、ただ同調してしまう。


だから、観測者として異常な人間が選ばれ、

しかもその“狂気”が、社会的に持ち上げられていく。

それが、構造的な解決策になってしまう。

「……狂わされている」


その言葉に、ひやりと、身に覚えが走った。

……私の動画。


なぜ、あんなにも再生数が伸びるのか。

本当に、それは“面白いから”だけだったのか?


もしかして、そこに――

何らかの介入があったとしたら?


……そうだ。


私もまた、

自分の意思で“選んでいる”ように見せかけられながら――

静かに、ゆっくりと、

狂わされていたのかもしれない。


そして――もしそれを認識しているという私の解釈が正しかったとしたら?

あの小さな体に、どれほどの重荷を背負ってきたのだろう――


エンジンが低く唸り、ボートがゆっくりと滑り出した。

アリアはふと隣を見る。ケイはすやすやと寝息を立てていた。

風が静かに、川面をなでていた。


フィールドでの移動中にケイが寝てるって、見たことない気がする。


プラティソムス類に恨みがあるわけではないのだ、その命名と分類に恨みがあるのだ――


プラティソムス類は混沌のグループです。種と属が乱立し、その関係性すら科レベルではっきりしない。Platysomusがいったいどこからどこまでなのかすらよくわからない。

種も多すぎるし、標本も現存しないものがあるし、再検討への道は極めて遠いです。


本作では普段全く光が当たらないこの魚を、考えうる限り最悪な描き方で描きました。

しかし、その古生態学的文脈にはいくらか特筆すべきものがあるのでみていきましょう。


プラティソムス類は、硬骨魚類のなかでは、背の高い魚として最初期に進化したグループです。

デボン紀末の大量絶滅で、それまで支配的であった肉鰭類や板皮類といった魚類が大打撃を受けました。その後、現在につながるような条鰭類が繁栄することとなります。そして石炭紀前期には、プラティソムス類をはじめとしていくつかの「背が高い条鰭類」が出現することとなりました。


魚において背の高さは旋回性能に大きく関連するようです。この旋回性能は貝などをついばむ際に重要であり、ただ餌を追いかけるのではなく、細かい固定的な餌に対してありつく行動と関連があるかもしれません。チョウチョウウオなどはそうした好例といえるでしょう。そしてこういう魚は釣るとかならずクルクル回転しながら上がってきます。魚の形状から引きは逆算できるはずであり、現代の魚を参考に古代の魚の釣り味を検討することもまた可能と私は信じます。


プラティソムス類はまた、丸く摩耗痕の強く残る歯を持っており、その歯は硬質の餌をかみ砕いて食べていたことを意味します。そして、そのことは先ほど述べた高い旋回性能と関連するでしょう。今回は二枚貝を食べている、というように描きました。石炭紀の淡水~汽水域は二枚貝が豊富であるからです。障害物の間をこまめに旋回しながらとりついた貝やMicroconchidsを食べ、時折現れる節足動物に喰いつく・・・そうした日和見的生活者と考えるのがやりやすいと思いました。


背が高く丸みを帯びたよく摩耗した歯をもつ、というと、現在のパクー(メチニス)やコロソマに似ています。そしてこの二者は植物の種もよく食べ、偶々丸のみしてしまった種子がその移動とともに運ばれます。

メデュロサ類は水面に浮かぶ種子を持っていたようで、しかもマングローブ的な(汽水依存とはどこにも行っていない!淡水が主です)水の上に立って育つスタイルもありました。ネウロプテリスやマクロネウロプテリスは川沿いの冠水した軟泥に根を下ろし、ニッパヤシに比較されます。そしてその種子は数センチもあるのです!魚に分散されたのではないかという話は文献ですでに見かけています。


つまり、「数センチもある種子が餌として降ってくるのが当たり前であり」「それを食べるだけの顎の強さをもった雑食性の魚がいた」ということです。

つまり、「メデュロサ類のタネの中身で釣る」というのは個人的な考証を重ねたうえでの帰結です。

まあ、貝でもいいんですが、周囲が貝だらけのところで貝で釣れるのかはすこし疑問です。口が下を向いているじゃない、というのはそうなんですが、割と前を向いている種もあります。


さて、問題のOverhung latrine…

Overhung latrineに関してはほかに排泄物の処理法がないので描かざるを得ないものなのですが、そこに何も生き物が集まらないという方が描写として不自然です。というわけで何かしらが集まるとせざるを得ません。現実のOverhung latrineにはやはり魚が集まるようで、コイやフナ、一部のカラシン、ティラピアなどの観察例があるようですが、驚くほど詳細な記録がありません。ただ、雑食性の、比較的強靭な咀嚼能力を持つ魚が多いようです。となると候補は相当絞られます。

さて、現在の魚で強靭な顎をもつ魚で、背が高くというとコロソマやクロダイですが、これらは極めて食に関して適当です――コロソマは男性の睾丸を間違って食うという話があるくらいにはてきとうですし、クロダイは消しゴムやコーンといった、普通の魚は食わないものでも釣れることが釣りのポイントになります。

しかも、「落ちてきたメデュロサ類の実を食う」という設定を思いついてしまっていたのでそこからはシンプルでした。落ちてきた木の実を食う魚が、落ちてきた糞を見逃すとは思えない。


というわけで、極めて不名誉な役回りがしょうじたわけです――

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