桃太郎
むかしむかし、あるところに
おばあさんとおじいさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに
おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると
川の向こうからドンブラコドンブラコと
大きな桃が流れてきました。
驚いたおばあさんは早速その桃を拾い上げ
小屋へと持ち帰りました。
しばらくして山から戻ってきたおじいさんに
桃の事を話すと二人で食べることになり、おじいさんはナタを持って桃を二つに分けようとしました。
その時です。
「パカっ」と大きな桃がひとりでに割れ
中から元気な男の赤ん坊が出てきました。
子供のいないおばあさんとおじいさんは
神のご縁に違いないと大層喜び、早速名前をつける事にしました。
「桃から産まれたから桃太郎〜」
「気安く呼ぶんじゃねぇ!!」
すると赤子は突然、怒り出し、ナタでおじいさんを真っ二つにしてしまいました。
「ひぃ〜」
「我が名は桃太郎、この世界を闇で支配する者だ」
桃太郎はそう言い残すとナタを放り投げ
どこかへと立ち去ってしまいました。
残されたおばあさんは
シクシクと悲しみに暮れ、おじいさんの亡骸に静かに寄り添いました。
しばらくして、おばあさんはおじいさんの墓を建てたあと、ナタを握りしめて深く決心しました。
「待っていろおじいさんや、必ずあんたの仇は私が取るよ…」
おばあさんは何度もナタを振り下ろし
打倒、桃太郎を目指して修行に励みました。
それから月日は流れ、鬼ヶ島にて
おばあさんは鬼と対峙していました。
「ハァハァ…」
辺り一面血の海で最後に残った鬼が
ギロリと鋭い目を光らせおばあさんに襲い掛かります。
「グルァァァアアアッッ」
「ふんっ!!」
おばあさんは鬼の圧力に屈せず、地面を強く蹴って鬼の首元へナタを振り下ろします。
「ズバッ」
鬼の首は胴から分断されて、地上へと転がります。
おばあさんは着地して鬼の体が倒れるのを静かに見届けたあと、「ふぅっ」と一息つき、空を見上げました。
「おじいさんや、見ておるか、私は強うなったぞ」
ボロボロの体で額からは血が垂れて片目が開けられないおばあさんは静かに笑みを浮かべ鬼ヶ島を後にしました。
おしまい。
桃太郎(完)