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―13― ボスの部屋に入るべきか否か

 目の前にはダンジョンのボスへと続く扉があった。

 いつかはここにたどり着くとは思っていたが、まさか今この瞬間にたどり着くとは微塵も考えていなかったので、なんだか唐突な感じがした。


「これって、部屋に入ったら倒すまで外にでられない感じかな?」


 石造りの扉をペタペタ触りながらそう尋ねる。


『ボスの部屋の前に扉がある場合はその可能性が高いです』


 なるほど。

 そうなると入るべきかどうか悩むな。

 早くダンジョンの外に出たいが、かといって死んだら元も子もないわけで。


「なぁ、鑑定スキル。今のオレってボスに勝てるかな?」


 迷ったら鑑定スキル。きっと良い答えを出してくれるはず。


『なんでもワタクシに聞かないでください。たまには自分で判断してください』


「……えっ!? なんで急に冷たくなるの!? 無理だよ! オレ、お前の鑑定がなければ、自分じゃなんにも決められないよ!! オレにはお前が必要なんだ!」


 涙ながら訴える。

 もうオレは鑑定スキルなしでは生きられないよ。


『……鑑定結果』


 おっ、どうやら鑑定してくれるようだ!

 やっは鑑定スキル、お前は最高だよ!


『鑑定できませんでした。扉の奥にいるモンスターは鑑定できません。いかがでしたか?』


「いかがでしたか? じゃねーよ!! なんだよ、鑑定できないって! がんばって鑑定してくれよー! ねー、どうにかなんないの? ねー?」


『………………』


 鑑定スキルがなにも答えてくれない。

 これ、無視されているやつだ。


 結局、自分で判断するしかないか。どうしよう……。


「よしっ、もう少し特訓してから挑もう!」


 焦っても意味ないしな。

 なんせオレはFランク探索者なんだし!



「ようやっと見つけたぜ、オーガ」


 中層のボスを務めるオーガが下層でもでてくるなんて、最初出会ったときは驚いた。とはいえ、すでに数十体以上倒してはいるので、今更驚きはしないが。


 そんなわけでオーガを倒す。

 戦いはあまりにもあっけなく終わったので、特に語ることはない。


「それじゃあ、調理といこう!」


 オーガを食べやすいサイズに解体して、発火スキルで焼く。

 今日はウェルダンにしよう。

 それから持ち歩いている白霊石もとい塩で味付けする。


「うまっ!!! 今まで食べたどのステーキよりもうまいな!!」


 これは箸がとまらない!

 あっという間に平らげてしまった。


「たくさん食べたし、そろそろ新しいスキルが開花しそうなんだよな」


 だけど、オーガを食べて手に入れるスキルってどんなのかまったく想像つかないな。

 オーガってとにかく身体能力が高いイメージだし、オレの体がムキムキになるとか?


「おっ」


 とか思ってたら、本当に右腕が膨張してムキムキになった。

 めちゃくちゃキモい!


『鑑定結果、スキル名〈ドーピング〉。ランクF』


 相変わらずランクはFかい!!

 ともかくこれで新しいスキルを一つ手に入れた。



 もうこのダンジョンに出会っていないモンスターはいないかと思っていたが、そんなことはなかった。

 目の前に、黒い影のようなぼんやりとした見た目のモンスターがいた。


「鑑定結果、モンスター名〈シェイド〉。ランクF」


 どうやらシェイドというモンスターのようだ。


「どんな味がするか気になるな」


 見た目からは味が想像できない。というか可食部があるかどうかすら心配だ。どっちにしろ倒すことに変わりはないが。


「おい、このモンスター召喚魔術を使うのか!?」


 思わず大声を出してしまう。

 というのもシェイドは魔術を発動させるような動作をして、地面に複数の魔法陣を展開した。

 その魔法陣からは影をまとった大小様々な異形のモンスターが召喚された。

 まさかモンスターが魔術を使うなんて驚きだ。

 とはいえ、オレはいつも通り戦うだけだ。

 そう思って、近くにいた影のモンスターをナイフで切り裂く。


「ん?」


 違和感があった。

 というのも手応えが一切なかったのだ。


「分裂しただと!?」


 切り裂かれたシェイドが2つに存在に別れたのだ。


「マジか。おい、鑑定スキルこれどうやって倒せばいいんだ!?」


 鑑定スキルはモンスターの弱点も鑑定できたはずだ。


『少しは自分で考えてください。なんでもワタクシに頼ると将来自分で考えられない大人になりますよ』


「おいぃいい!? なんで鑑定スキルにそんなことを心配されなきゃいけないんだよ!?」


 思わず絶叫する。

 確かに、なんでも鑑定スキルに頼るのはよくないかもしれないけど、別に戦っている今気にしなくてもよくね!?

 くそっ、こうなったら自分で考えるしかねぇ。

 物理攻撃が効かないなら、属性攻撃で倒せばいい。


「おらぁあああああ!! 燃やし尽くせぇええええええッッ!!」


 発火スキルを使って、シェイドをただひたすら燃やし続けた。

 どうやらオレの目論見は当たったようで、無事シェイドを倒すことができた。


「あっ、なんか残っている」


 シェイドのもといた場所に小さくなった黒い物体があった。

 他のモンスターと同様、魔石も中に入っている。


「食べれるのか、これ?」


 黒い物体を手に取りつつ眺める。黒い物体はパラパラと小さい粒のようになっており、優しくすくい上げる必要があった。

 これ食べたら絶対まずいやつだ。

 とはいえ、スキルを手に入れるためだ。不安だけど口に入れてみる。

 パクリ。


「…………ッッ!! イカスミの味がする!?」


 思った以上にうまいかも!?

 この食感はなにに近いだろ……。このパラパラした感じ、お米だ!

 ってことはこれ、イカスミのパエリアだ!

 これならいくらでも食べられるな。

 気がつけば暗黒物質のように黒い物質を平らげていた。



 それからオレはひたすらシェイドを狩る日々を過ごした。

 シェイドは珍しいモンスターのようで、まず見つけるのが困難だった。

 それでもイカスミパエリアじゃなかった……新しいスキルを手に入れるべく探し続けた。


「よしっ、これで十体以上食べたし、そろそろスキルを発現してもいいような気がする!!」

 

 そんなわけで色々と試してみる。

 シェイドを食べたわけだし、オレも召喚魔術を使えるようになったりしないかな?


「って、本当に使えそうなんだが!?」


 目の前に魔法陣が展開されたのだ。

 その魔法陣は光り輝き今にもなにかが現れようする。

 心臓がバクバクに鳴っていた。

 いったいなにが召喚されるのか、楽しみで仕方がない。

 そして、ついに光が消え、なかにいる存在を見ることができた――。


「ピヨピヨ」


 魔法陣の上に立っていたのは一匹のヒヨコだった。

 なんで――っ!?







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