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―01― 庭にダンジョンがあった

『国民的アイドル華山ハナが婚約発表!?』


 そのニュースを見て、俺は絶望していた。

 大学になって初めての夏休み。バカンスをめいいっぱい楽しもうと思っていた矢先にこれである。

 昔から応援していた推しが突然の婚約発表。

 しかも、アイドルも引退するらしい。


 なんだ、この絶望は。

 ニュース記事の続きを見る。


「婚約した相手がわかっているのか。国内ランキング一位の探索者、武藤健吾だと?」


 世界にダンジョンが現れるようになったのは、五十年ほど前のこと。今ではダンジョンは日常に溶け込み、人々はこの異常な状況を受け入れている。

 そして、人々はスキルというのもを手に入れた。

 そのスキルを活かしてダンジョンに潜むモンスターと戦う者を探索者と呼ぶ。


 この武藤健吾という男はダンジョンに詳しくない俺でも聞いたことがあるぐらい有名な人だ。

 曰く、国内最強の探索者で、数々の偉業を達成してきたらしい。

 しかも、まだ二十代と若く、顔もイケメン。

 あーっ、なんか腹が立ってきた。


「ふざけんな! こんなん納得できるか!」


 この世界の理不尽さに腹が立つ。

 気になって、ネット上の意見を見る。きっと俺みたいに怒ってる人が多いに違いない。

 しかし、この予想は大きく外れていた。


『国民的アイドルと最強の探索者とか、これ以上ないお似合いのカップルだ』とか『ハナちゃん好きだったから結婚するのは残念だったけど、相手が武藤健吾ならに安心して任せることができる』みたいな肯定的な意見ばかりだ。


 死ね! 死ね死ね死ね死ね!

 くそっ、腹立つ!

 思いっきりスマホを壁に投げつけてしまった。


 なんというかこの世界のすべてに失望してしまった。

 アイドルの華山ハナのことももう嫌いだ。

 武藤健吾、ランキング一位の探索者ということはめちゃくちゃ強いに違いない。そして、お金だってめちゃくちゃ稼いでいるんだろう。

 つまり、力と金を併せ持つわけだ。

 ただの大学生の俺に勝てる要素が一つもない。

 華山ハナはもっと庶民的な人が好きだと思っていたのによ!


「なぁ、鑑定スキル。俺の適正ランクを鑑定してくれ!」


 俺はそう叫ぶ。

 すると、答えが帰ってきた。


『鑑定結果、雨奏(うそう)カナタの適正ランクは最下位のFランクです』


 機械的な女性の声が頭の中に流れる。

 ちなみに、雨奏カナタというのは俺の名前だ。


「俺がなんのスキル持っているか鑑定してくれ」


『鑑定スキルのみです』


「くそぉおおおおおお!!」


 俺はその場で地団駄を踏んだ。

 適正ランクがFしかなくてスキルが一つだけなのも以前鑑定してわかってはいたことだが、つい勢いで鑑定してしまったのだ。


「俺だって適正ランクがAとかあれば、今頃最強の探索者になってアイドルと結婚してたのによぉ!!」


 ホントこの世界は理不尽だ。

 適正ランクという名の才能ですべてが決まるのだから。


 それから俺は推し活のグッズをすべて処分した。

 墓まで持っていこうと思っていた直筆サインも処分した。


 そして、ゴミ出しに行こうと外に出て、あることに気がついた。


 庭にダンジョンができていたのである。

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